巻頭企画 天馬空を行く

競輪選手 佐藤 慎太郎

佐藤 慎太郎
SHINTARO SATO

福島県出身。(学)石川高等学校を経て、日本競輪学校第78 期卒業。競輪選手としてデビュー戦となる1996 年8 月14 日のいわき平競輪場で初勝利を飾る。2003 年には、読売新聞社杯全日本選抜競輪の優勝でG1 初制覇を遂げるなど、順調にキャリアを積む。「KEIRINグランプリ」には、初出場となった2003 年から2006 年まで4 年連続で出場。2008 年に大ケガに見舞われるも、2019 年には13 年ぶりに「KEIRIN グランプリ」に出場し、悲願の初優勝を成し遂げた。同年の最優秀選手賞にも選出。2020 年、通算400 勝を達成した。

2019 年、競輪界の頂点を争う「KEIRIN グランプリ」で初優勝を飾り、競輪界の頂点に君臨した佐藤慎太郎選手。43 歳になってもなお、強靭な肉体と決して折れない精神力を武器に、トップレベルで戦い続けている。また、ストイックな一面がある一方、抜群のユーモアセンスと、誰からも愛されるキャラクターで多くのファンを魅了しており、競輪界のレジェンドとしての呼び声も高い。そんな佐藤選手に、「何のために戦い続けるのか」「どうして続けられるのか」という疑問を、真正面からぶつけていった。

 

速ければ勝てるわけではない

日本の公営ギャンブルの一つ、競輪。バンクと呼ばれる競走路のうえを自転車で走り、誰が一番最初にゴールするかを競うスポーツだ。選手の実力だけでなく、さまざまな要素が勝敗を左右する点が特徴で、多くのファンに親しまれている。また、競輪のルールを基につくられた「ケイリン」は、2000年シドニーオリンピックから自転車競技の正式種目に採用されている。まずは競輪の魅力について、佐藤選手にうかがった。

「競輪はとても奥が深いスポーツです。例えば100m走は、早く走った人が勝つシンプルなものですよね。先にゴールした人が勝ちという点は、競輪も同じです。しかし、単に速ければ必ず勝てるわけではありません。勝敗の行方には、選手同士の複雑な駆け引きが重要になってきます。あの選手があの位置にいるから、こういう動きをしようとか、相手を出し抜くため選手は考えを巡らせ、一人ひとりが己の思惑どおりにレースを運ぼうと頭脳戦を仕かける。そのあたりが競輪の奥深さにつながっているわけです。車券を買うお客さんにしてみれば、過去のデータだけでなく、そうした選手の心理まで読まなくてはいけない難しさがある。また、より公正なレースを実現するため、競輪には実にさまざまなルールが存在します。そのおかげで、初めての人には非常にわかりにくくなっているんでしょうけど(笑)。
 競輪は、全国各地40ヶ所ほどある競輪場のどこかしらで毎日開催されています。だいたい2ヶ月前になると、選手は出場するレーススケジュールがわかるので、本番に向けてトレーニングを重ねて自分を仕上げていく。言ってみれば、日々のトレーニングが本番のようなものです。朝から晩まで、晴れの日も雨の日も練習のことだけを考えています。並大抵の気持ちで取り組んでも、いざレースとなったときに結果を残すことはできませんからね」

父の影響で競輪を知る

1996年にプロデビューを果たし、初出走となった同年8月14日のいわき平競輪場では、見事に初勝利を飾った佐藤選手。その後も着実にキャリアを積んでいき、現在に至るまでトップ選手として活躍している。佐藤選手が競輪選手を志したのには、どのような経緯があったのだろうか。その半生を振り返っていただいた。

「僕が競輪を知ったのは、父の影響からです。日本電信電話公社(現:NTT)に勤めていた父は、公営ギャンブルが好きでしてね。子どもの頃から競輪場に連れられ一緒に行っていました。よく、『俺はどんなに頑張っても決まった給料しかもらえない。だけど、競輪選手は頑張れば頑張った分だけ稼ぐことができる』と言っていたのを覚えています。当時は子どもながらに、そういう仕事があるのかくらいに思っていました。
 職業として競輪選手を意識し始めたのは、中学生のときです。中学の3年間は、野球をやっていました。だけどチームで戦っていく以上、4番打者がいくらホームランを打とうが、投手の調子が悪ければ試合に負けてしまうこともある。自分の努力だけではカバーできない部分が出てくるわけです。それであれば、競輪選手のように自分の努力次第で上を目指せる世界のほうが、僕には合っていると思いまして。自転車部がある高校に進むことにしました」

 

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