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株式会社 新日本科学 代表取締役会長兼社長兼CEO 一般社団法人 メディポリス医学研究所 理事長 永田 良一

永田 良一
Ryoichi Nagata

1958年鹿児島県生まれ。幼少時から医者を目指して育ち、高校卒業後は聖マリアンナ医科大学に入学する。学業と並行して1981年から(株)新日本科学(SNBL)取締役に就任し、家業に携わりながら医師免許と鹿児島大学医学部で医学博士号も取得。1991年に2代目社長として代表取締役に就任した。以降、積極的に事業拡大に乗り出し、アメリカなど海外にも進出した。2006年には(財)メディポリス医学研究財団を設立し、陽子線治療施設を建設し、2011年からがん患者の治療をスタート。高野山大学の客員教授を務める密教学修士でもある。

医薬品開発受託事業における国内初の企業として知られる(株)新日本科学(SNBL)。2代目の永田良一氏が1991年に社長となって以降は、臨床試験受託や医療機関での臨床試験の支援を行うSMOなど、臨床試験分野にも事業を拡大。さらに、1997年にCEOに就任してからはアメリカや中国にも現地法人を立ち上げるなどグローバルに事業を展開してきた。並行して国内では2004年に東証マザーズ、2008年に東証一部上場を果たしたほか、2006年に鹿児島県指宿市に(財)メディポリス医学研究財団を設立。2011年から「メディポリス国際陽子線治療センター」の稼働を開始した。国内外で積極的に事業拡大を図ってきた同氏。その事業に懸ける思いの根底には、弘法大師・空海の教えが息づいている。

空手の指導者としての一面

永田氏は、父親の次雄氏が(株)新日本科学(SNBL)の前身となる「南日本ドッグセンター」を創業した翌年、1958年に鹿児島で生まれた。

「幼い頃から父に『医者になれ』と言われて育ちました。本当は祖父が私を医師にしたかったらしく、祖父が父に伝え、父がその通りに言ったそうです。本当に小さい頃から言われ続けていたので、特に抵抗もなく、そうなるのだろうなと思っていました。ただ、遊んでばかりで勉強はそんなにしていなかったですね(笑)。体を動かすのが好きだったし、武術家で俳優でもあったブルース・リーに憧れていたこともあって、中学生の頃からは空手もやっていました。父の友人が道場を運営していまして、そこに通っていました。大学に入ってからは自分で空手部を創設しました。母校の空手部は2019年で創部40年。今でも指導者として顔を出していて、合宿に参加したり、昇段試験の審査をしたりしています」

学業と並行して家業に

医師となるべく学業に励みながら空手道にまい進。文武両道で歩んできた永田氏がSNBLに入社したのは、大学生の頃だった。

「当社で働き始めたのは22歳になったときでした。父が私を非常勤取締役として雇いました。とは言っても、当社で働くのはそれが初めての経験ではありませんでした。小学生の頃から父を手伝っていたので、高校生になる頃には、会社の仕事についてはだいたい把握していましたね。大学時代は上京していたこともあって、父がクライアントと会食するときには同行して、おいしいものをいろいろ食べさせてもらいましたよ(笑)。
 仕事と並行して大学院にも通っていました。木曜日と金曜日は鹿児島大学で研究、月曜から水曜日までは仕事をするという感じに。土曜日と日曜日は、仕事をするか、研究するか、どちらかでした。あの頃と比べると、今は休んでいるほうですね。1970~80年代の日本社会は、会社員は休まずに働くという雰囲気があった。私も土日に仕事をすることに対して、特に抵抗はなかったです。仕事が夜遅くなると帰るのが面倒になって、会社に泊まっていたことも結構あったくらいで。働き方改革が進んでいる現在の状況からみると、当時のSNBLや多くの日本企業は、完全なブラック企業でしたね(笑)」

内閣総理大臣表彰を受ける

入社当時の会社をブラック企業だったと笑う永田氏だが、時代の流れに合わせて社内整備を進めてきたという。

「もちろん今は、働きやすい職場環境を整備しています。例えば、女性が活躍しやすい職場にするため、『働くなでしこ委員会』を組織し、現場から上がってきた声を基に、50個の改善項目に取り組みました。結果、女性職員数が安定的に増加し、女性比率が徐々に高まって現在は全体の5割を超えています。また、社員の健康管理にも力を入れており、婦人科のがん検診を定期健診に追加するなど、がんの早期発見と治療を実践しています。その成果もあって、これまでにがんと診断された全員が、職場復帰しています。そうした取り組みが評価されて、2018年の年末には、内閣府男女共同参画局が主催する平成30年度『女性が輝く先進企業表彰』において『内閣総理大臣表彰』を受賞させて頂きました」

 

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