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巻頭企画天馬空を行く

書家 / アーティスト 岡西 佑奈

岡西 佑奈 YUUNA OKANISHI
幼い頃から、白い紙に滲み広がる墨の黒さ、“モノクローム”の世界に惹かれ、7歳から本格的に書に目覚める。書家・栃木春光に師事し、高校在学中に師範の免許を取得。水墨画においては関澤玉誠に師事する。書家として文字に命を吹き込み、アーティストとして独自のリズム感や心象を表現している。国内外受賞歴も多数。また、「子どもに命の大切さを伝えたい」という思いから、小学校での書道教室をボランティア活動として開催している。

【公式サイト http://okanishi-yuuna.com/

幼い頃から書道に親しみ、現在は書家として国内外で活躍する岡西佑奈さん。柔らかく美しい、そして力強い一筆には、どのような思いが込められているのだろうか。また、水墨画や墨象画という創作活動で伝えたいものとは──。書に向き合う独自のこだわりから、働く全ての人に通ずる心の持ち方までを存分に語って頂いた。

白黒の世界に魅了されて

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元女優という異色の経歴を持つ書家、岡西佑奈さん。どういった経緯で、これまでの道のりを歩んできたのだろうか。その人物像を紐解くべく、まずは書道との出会いを伺うと、そもそものきっかけは偶然に導かれたものだったという。

「書道を始めたのは小学2年生、7歳のときでした。幼稚園の友達と小学校が離ればなれになってしまって、それを見かねた両親が、習い事の書道教室だけでもと、これまでの友達と同じところに通わせてくれたんです。だから、最初は友達に会いたくて教室に通っていました。書道の先生もとても優しい方で、いつも私の字を褒めてくれたので、それが嬉しくて続けることができたのだと思います。
 でも、書道そのものを好きになるのに、それほど時間は掛からなかったんですよ。真っ白な紙が光を反射して、真っ黒な墨がそれを吸収する。その正反対の色でハッキリと引かれる線や、白黒の世界がすごく魅力的で。いつの間にか、書道に夢中になっていました」

舞台への憧れから女優の道へ

小学生で書道を始め、そのまま高校生になっても習い続けていたという岡西さん。そして高校在学中に、ある転機が訪れた。

「高校2年生の夏に、蜷川幸雄さんが演出した舞台、シェイクスピアの『マクベス』を観たんです。そのとき、涙が出るくらい感動して──。当時、演劇の経験は全くなかったのですが、女優として舞台に立ちたいと強く思うようになりました。私は小さな頃から、人とコミュニケーションを取るのがそれほど得意ではなかったんです。だからこそ、舞台の上で言葉を巧みに扱う俳優さんや女優さんがすごく輝いて見えて、憧れを抱いたのだと思います」

とはいえ、当時は書道を続けたいという思いもあり、進路を考えあぐねていたという。

「書道は高校3年生のときに師範の免許まで取りましたが、もっと学びたいという思いもあって。それで、書道の専門学校への進学も考えていました。私の中では、書道か、女優か、はたまた大好きなサメの研究をするか(笑)・・・なんて道も含め、3択ですごく迷っていたんですね。でも、考え抜いた末に、結局は女優を目指すことにしました」

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