巻頭企画 天馬空を行く

20160901_tenma_text01

 

上質・安価に提供できる理由

20160901_tenma_d01

震災直後は直販店12店舗を運営していたものの、卸先に遠慮してどの店舗も目立たない場所にあった。しかし佐田社長は再び戻るやいなや直販に注力することを公言、新宿での出店を皮切りに既存の12店舗のほとんどを人通りの多い場所に移転し、さらに24店舗を新設して36店舗まで増やしてきた。その結果、現在の業績の半分以上は直販での数字になっているという。では次に、オーダースーツ1万9800円〜という革命的な価格が実現できた要因を探っていく。

「オーダースーツなのに既製品とさほど変わらない価格が実現できるのは、中国工場での大量生産によるスケールメリット、CAD(自動設計システム)・CAM(自動裁断機)を用いての自動化を究極まで進めた製造工程、生地企画から縫製・小売までの自社一貫体制を敷いているということなどが挙げられます。
 それと経費も極力抑えており、例えば店舗は一等地でありながらビルの上の階に構え、内装も極力シンプルにすることで、低コストでの運営を可能にしています。立地さえよければビルの上の階でも来て頂けるというのは、過去にネットでうまく集客できたという経験が大きいですね。それでいて大手量販店さんの10分の1ほどのスペースにもかかわらず、大手量販店さんと同じかそれ以上の選択肢を提供できているというのも強みです。販促費にしても大手さんが人気タレントを起用してテレビCMを放映している一方、弊社では安価に展開できるWebに特化してPRしています。つまり、オーダースーツは既製品よりも原価が高いのは当然ですが、スーツのクオリティを保持する以外の費用を極限まで絞ることで、既製品と遜色ない価格を実現することができているのです」

企業努力と長年にわたり蓄積されてきた優れた製造ノウハウによって非常に高いコストパフォーマンスを実現しているSADAのオーダースーツであるが、この優れたビジネスモデルの肝は、流行りの飲食店にみることができるという。

「今の直販のビジネスモデルは、原価率こそ高いが販売効率が良いのでリーズナブルに提供できるという仕組みです。分かりやすい例を挙げると回転寿司店。寿司の原価は高めですが、客の回転率の高さで利益が出ています。いわば回転寿司店は、寿司と一緒に顧客もしっかり回っているわけです。最近だと、立ち食いで高級フレンチを提供する『俺のフレンチ』なども同様の発想ですよね。余計なサービスをそぎ落として極限まで原価率を高めているからこそ、顧客満足度が高いのです。
 もちろん飲食店と単純な比較はできないですが、スーツ業界のくくりで言うとどの店舗も決して販売効率がいいとは言えないので、相対的には弊社にそのアドバンテージはあると思います。また処分損が一切出ないというのも、多くの商品を廃棄せざるを得ない既製品量販店と比べて広い意味で販売効率に優れ、このこともお値頃感に繋がっていると自負しています」

職人の技を究極まで自動化

オーダースーツと既成スーツの歴史、それは市場の奪い合いの歴史でもあった。

「今の時代、“ビジネススーツをどこで買いますか?”との問いに対し、若い世代からオーダースーツの店が上がるのは3%以下です。ということは高齢のテーラーさんが次々に店を畳んでいる今、若い方々にオーダースーツという概念を浸透させていかないと業界自体が潰れてしまう。ですからライバルはオーダースーツ店でなく、既成量販店だと私は考えています。小さい市場で奪い合うのではなく、大手量販店のシェアを奪回していかねばならないのです。実は大手さんもオーダースーツに着手し始めたそうですが、根本的にビジネスモデルが違うということもあり、当分は弊社の優位性は保てるのではないかと思っています。
 そもそも終戦直後は、全てのスーツがオーダーメイドでした。その後、高度成長を追い風に安価な大手量販店さんのシェアが急激に伸びていき、オーダースーツの業界はバブル期という時代も相まって“高く売ろう”という癖がついてしまったんですね。そして気付けば大手量販店さんに市場をほぼ制圧されていたというのが、ビジネススーツの歴史です。しかし既製品に比べ、オーダースーツの着心地やフィット感は本当にいいものです。だからこそ既製品しか知らない若い人たちに、オーダースーツの素晴らしさを知ってもらいたいのです」

では実際にどんな工程を経て、1着のオーダースーツができあがるのだろう。

「弊社がつくるオーダースーツの特長は、体の20ヶ所前後を採寸したうえ、CAD(自動設計システム)を用いて個人のオリジナルパターンを起こし、そのパターン通りにCAM(自動裁断機)が生地を1枚ずつ裁断し、高度に合理化されたラインで縫い上げるという縫製技法にあります。パターン起こしや裁断は職人の技が最も必要とされる工程なのですが、ここを非常に高いレベルで全自動化しているのが、弊社のイージーオーダーシステムというわけです。
 『職人が手作業でやっていないのならオーダースーツとは言えない』と思っていたとしたら、それはとんでもない勘違いです。率直に思うのですが、世の人はこの仕組みの凄さを知らなすぎます」

日本のビジネスシーンを明るく元気に

仕立て職人を遙かに凌駕するほどのシステムが整っているからこそ、上質・安価なスーツづくりが実現できる。プロ野球2チーム、Jリーグ8チーム、日本代表バスケットボールチーム(男女共)のスーツサプライヤーであるという事実も、そのクオリティの高さを証明していると言えよう。佐田社長自身はオーダースーツの魅力を、次のように語る。

「やはり着心地のよさと、スーツ姿のシルエットが美しいというところでしょうか。それに加えて生地や裏地、ボタン、ポケットの形などの素材やデザインを自分で決められるという、“選ぶ楽しさ”も魅力の一つと言えると思います。ちなみに既製品は身長とウエストの2軸で構成され、それを元にいくつかのサイズに分かれているのですが、人は身長とウエストが同じだからといって同じ体型だとは限りません。肩幅やバスト、ヒップ、太もも回り、膝幅、手足の長さ、股下など体のつくりはそれぞれの人で違うわけですから、既製品は体に合っていない部分が出てきて当然です。一方でオーダースーツはそれらの部位全ての寸法を図ったうえでピッタリにつくりますから、着心地がいいのもまた当然なのです。
 嬉しいことに、弊社のスーツを着るようになってから営業成績が上がった方や、奥さんや彼女から初めてスーツ姿を褒められた方って、結構おられるそうです。弊社のポリシーは「オーダースーツの着心地と楽しさで、日本のビジネスシーンを明るく元気にします!」。自分の体に合ったスーツを着ることで気分が上がれば、やはりいい仕事にもつながるもの。それが自信になることで、さらに仕事に身が入る──こうした好循環を生み出していけたらと思いますね」

1 2 3


amazonからのご注文
2019年11月号
COMPANYTANK 2019年11月号

巻頭企画「天馬空を行く」には、第25代WBCスーパーバンタム級チャンピオンの西岡利晃さんがご登場!世界王者の栄冠を掴むまでの足跡を辿ります。

定期購読のご案内
 
LINE@無料会員登録はこちらから

LINE@無料会員登録はこちらから

interviewer's eye

カンパニータンクのインタビュアとして活躍されている各界の著名人たちに本誌編集局が逆インタビュー。

宮地 真緒 鶴久 政治 杉田 かおる 名高達男 時東ぁみ 矢部 みほ 水野 裕子 畑山隆則