巻頭企画 天馬空を行く

試行錯誤を繰り返すなかで生まれた独自のビジネスモデル

20160501_tenma_ex02

そうして1993年、東京・狛江市内のアパートの一室で貿易業を始めた小方社長。当時は中国の健康食品がメインの商材だったというが、それから年商100億円の“ネット問屋”という地位を確立するまで、どのように発展を遂げてきたのだろう。

「創業当時、僕は次のように考えていました。『自分は何年か後に、あるビジネスを立ち上げているだろう。話題性があって若い人も投資家も気になって、社会公共性も高く、みんながそこにアイデアを出したくなるであろうビジネスだ』と。もちろんそれが簡単に見つかるはずもなく、僕は何かをしながら悩んでいかなければならないんだろうなという覚悟は大前提としてあったので、最初に始める“何か”というのは正直、何でも良かったんですよ。
 世の中の成功しているビジネスってたいてい、ある日突然にアイデアが湧いてきたというよりも、紆余曲折や試行錯誤が無数にあった結果として生まれてきたものだと思います。そして成功者はたいてい、何かの専門家であるということも知りました。じゃあ、僕は何の専門家になればいいのだろう──その決断は、本来ならば早ければ早いほどいいのだけど、自分の興味が持てる分野でなかったり、自分の得意なことが活かせる分野でなければ多分うまくいかないので、焦ってはいけないとも思っていたんですね。それが何かを探り当てるため、『?まずは何でもいいから事業を始める。?その分野を一生懸命に学んで仮説を立てる。?人に会って理論をぶつけてみる。?返ってきた意見を素直に取り入れる』。このサイクルをひたすらに繰り返すべきだと考えていました。それで中国で得たヒントをもとに、まずは貿易業を始めてみたというわけです。
 最初は中国から健康食品や雑貨を輸入し、それを通販会社などに卸すということをやっていました。するとそのうち、私が提案する企画書の内容がユニークだったためか通販会社の部長や課長の知り合いがどんどんできて、飲みに誘われるようになったんです。そのなかで通販会社やメーカーの方々が在庫処分に悩んでいることを知り、これを解決することは立派なビジネスになると考えたことから、貿易業と並行して在庫転売ビジネスを始めたんですね。それで店舗を借りて催事をしたり、他の業者に転売したり、コンテナに積み込み中国に輸出したり、商品リストをたくさんの企業にFAXしてみたり・・・最終的にこれをインターネットで展開したのが、過剰在庫を処分できるオンラインマーケット「オンライン激安問屋」です。1998年のことですね。
 ただ、過剰在庫というのは各企業の年商の数%に過ぎず、それだけを扱っていても思うように利益があがらない。それなら残り90%以上のほうも扱おうと考えて2002年に始めたのが、BtoBに特化した仕入サイト『スーパーデリバリー』で、そこから業績も急激に伸び出しました。現在はこの事業に付随する形で売掛金の課題解決『トラスト&グロース』、後払い決済『Paid』、クラウド受注・発注システム『COREC』など、BtoBに特化したeコマースのサービスとして様々な事業を展開しています」

これまで企業間取引において様々なビジネスモデルを生み出してきた小方社長だが、その全てに共通するこだわりは「それまでに存在しなかったサービスを提供すること」にあるという。

「“先駆者だからカッコいい”というわけでは一切なく、これはやりがいと生きがいの問題ですね。僕は、仕事や会社は社会に対して役割を持つべきだと考えているんですよ。ミミズが土を耕すように、蜘蛛が害虫を食べるように、自然界に存在する全ての生物は意味があって存在しています。だから個人や会社も、これと同じようであるべきだと思うのです。
 そう考えると、すでに世の中にあるサービスなら、何も我々がわざわざそれをやる必要はないですよね?そうではなく、自分たちだから生み出せる新しい価値を提供するからこそお客様は喜んでくださるし、お金も頂けるし、我々が存在する理由も生まれます。これがすなわち、生きがいと呼べるもの。だから私は初めてのことしかやらないんですよ」

スタッフ個々の能力を引き出すために

顧客の困りごとから潜在ニーズを引き出し、その解決策を具現化するなかで創業以来21年連続で増収増益を続けてきた(株)ラクーン。スタッフも徐々に増えて111名(2015年10月末現在)が在籍しているとのことだが、小方社長は組織づくりにおいて、どのようなことを心がけてきたのだろうか。

「スタッフの当事者意識を引き出す『アメーバ経営』も、新世代のリーダーの指針となる『サーバントリーダーシップ』も、人を戦略的資源と考える『ヒューマン・リソース・マネジメント』も、全て正しいと思います。ただし我々は、最近になって注目を集め始めたこれらの組織づくりを、22年前からやっています。1人のリーダーの夢を叶えるための組織ではなく、主体はあくまで現場であって主人公は社員たち。各部門のリーダーは、主役の人間がいかに活躍できるかをよく考え、そのための環境を創出することが大切だと思います。つまり1人の人間が持って生まれた個性を最大限、業務に活かそうという考え方ですね。
 それを見出すため積極的に取り組んでいるのが社内イベントです。日々の業務だけでは、個々の得手不得手は見えづらいものですからね。そこで弊社ではいくつかのグループに分かれ、字の上手さを競う書道大会や会社に対してのアドバイスを小論文にして出すという文章力のコンテスト、ビジネスモデル勉強会など、業務時間の一部を割いて定期的に色々なイベントを開催しているんですよ。そうしたなかから本人さえ気付いていない個々の適性を見いだし、最適な職務を割り振ることが、有機的な繋がりを持ったよりよい組織づくりに繋がっていくのだと思いますね」
 

20160501_tenma_ex0101

1 2 3


amazonからのご注文
2019年11月号
COMPANYTANK 2019年11月号

巻頭企画「天馬空を行く」には、第25代WBCスーパーバンタム級チャンピオンの西岡利晃さんがご登場!世界王者の栄冠を掴むまでの足跡を辿ります。

定期購読のご案内
 
LINE@無料会員登録はこちらから

LINE@無料会員登録はこちらから

interviewer's eye

カンパニータンクのインタビュアとして活躍されている各界の著名人たちに本誌編集局が逆インタビュー。

杉田 かおる 名高達男 時東ぁみ 矢部 みほ 鶴久 政治 宮地 真緒 水野 裕子 畑山隆則