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Challenge+(チャレンジプラス)

巻頭企画天馬空を行く

高品質・ローコストを実現

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ビジネスモデルの改革を試みてから3年間の売上高は、毎年20億円前後と横ばいだった。しかしこのモデルが定着して以降、年商は45億円(2011年)、101億円(2012年)、138億円(2013年)146億円(2014年)と飛躍的な急成長を遂げることになる。まさに潜在需要を掘り起こした形とも言えるが、そのサービス内容とはどのようなものだろう。

「土地をお持ちでない方がアパート経営を始めようと考えた場合、従来であれば業者が保有する完成物件を購入するしか方法がありませんでした。しかしオーナー様自身が土地の場所や物件のデザインなどを選ぶことができ、なおかつローコストであれば、それに越したことはありませんよね。そこで弊社ではこれを実現するため、全国主要都市の1万2000件を超える不動産会社さんと直に取引できる体制を整え、オーナー様と非公開の優良な土地をマッチングすることを可能にしました。
 また、建てるアパートについては高入居率を維持すべく、優れたデザイン性と快適な生活空間にこだわりました。ちなみに価格帯は土地・建物を合わせ5000万〜1億円、その金額で住宅ローンが組めるのはだいたい年収700万円以上の方。購入後の不動産管理は弊社で行いますので、オーナー様は家賃収入を受け取るだけでいいのです。家賃収入でローンを返済し終えたあとは、実質的な定期収入になるという仕組みですね」

顧客自身が投資用アパート物件の立地やコンセプトを決められる。しかも“ローコスト”というのが支持されている理由だが、低価格の追求も今のモデルを確立するには必要不可欠なことだった。

「そもそもアパート経営は、もともと土地を持っていた方が、その土地を利用し建物費用のみを投資して始めることが多いです。このケースだと建物に充分なコストがかけられるため、必然的に良いアパートが完成しますよね。一方で弊社のアパート経営モデルの場合、土地と建物をセットで買って頂くことになるので、利回りを維持するには、やはりローコストというのは必須でした。そこで土地については、オーナー様と不動産会社を直につなぎ中間マージンを省くことで実現。建物は従来、規格品のものを用いることでローコスト化していたのですが、その部分に疑問を感じた私は試行錯誤の末、低予算でありながらデザイン性と利便性に優れた競争力の高いアパートが建てられる仕組みを整えました。こうした諸々のサービスをお客様に受け入れて頂けるようになり、ありがたく感じています」

IoTと不動産物件との融合

また同社ではアパート経営のみならず、区分中古マンションの定額リノベーションサービス「スマリノ」を開始するなど、新たな広がりをみせている。

「このサービスも弊社のアパート経営と同様、買って頂いた後にワンストップでリノベーションサービスを提供するという、在庫なしの不動産ビジネスモデルです。特に最近では、外国人観光客の増加や空き家再生という流れを受け、住宅の空き室に旅行客を有料で泊める“民泊”に注目が集まっていますので、これらも踏まえた提案ができればと思いますね。マンションだけでなく、一戸建て住宅を古民家風にリノベーションして民泊に活かすといった取り組みも、今後やってみたいモデルの一つです」

さらに物件の価値を高めるべく、管理物件にIoT(モノのインターネット)の概念を採り入れた「スマートアパート」のテスト運用を開始。これは次世代を感じさせる、非常に便利なサービスだ。

「ハードウェアビジネスを手がける(株)FORMULA社と弊社が協同開発したスマートドアホン『TATERU kit』は、室内側のモニタ画面がタブレットになっており、スマートフォンと連動させることができるため、外出先からでも来訪者との応答が可能です。来訪者の履歴も残りますし、例えば運送会社とのやりとりもスムーズになりますよね。これ以外にもあらゆるIoT機器と連動させることで、遠方からでも鍵の開閉操作や照明の明るさ調整、エアコンの設定や操作など様々なことが可能になります。今後はテスト期間を経て、弊社の物件に標準装備する予定です」

こうしてネットとリアルを融合させ、不動産業界の常識を次々と打ち破ることで満足度の高いサービスを生み出してきた古木社長。創業から10年で200名を超えるスタッフが在籍する規模にまで成長させてきたが、新しいビジネスモデルを確立する傍ら、独自視点のユニークな組織づくりも展開していた。

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