巻頭企画 天馬空を行く

 

「真に平等な組織」とは

20151001_tenma_ex0101確かに、そのような仕組みを整えることができれば理想的だ。しかし、その仕組みを経営者自身が構築するのは非常に難しいと高橋社長は指摘する。

「社員の皆が納得できるような、真に平等な世界をつくるのは本当に難しい。やろうとしても非常に時間がかかるのでやらない、またはできない中小企業経営者も多いです。そもそも創業社長は人事面のスキルよりも、ダイレクトに売り上げをつくる営業マンとしての高い能力を持っていることが圧倒的に多く、プレイヤーとして優秀だからこそスタッフに対して『なんでこんなに簡単なこともできないのだ』と考えてしまう方も少なくありません。ただしあくまで“社長”という観点から考えた場合、トップ営業マンとして顧客を創造し、売り上げを創出し、豊かな発想力やアイデアで新しいサービスを構築することのほうが、人をマネジメントすることよりも優先順位が高いことであり、難易度が高いことであり、かつ本質的な社長業だと私は思います。しかし逆に言えば、人をマネジメントすることの大切さを本当の意味で理解している経営者は少ないのです。だからこそその部分は弊社などの外部のサービスに頼りながら、時間をかけてその本質を多くの経営者の方々に理解して頂けたら、日本社会はより好転していくのではないかと思いますね」

誰もが納得できる真に平等な組織。それはあるプロスポーツチームに見ることができるという。

「例えばイタリアのプロサッカーのトップリーグ・セリエAでは、選手の90分間の行動全てがレイティングされ、さらにファンサービスやマスコミ対応、私生活といったプレー以外の面も含めて全てを緻密に査定したうえで、適正な年俸が割り出されます。成果とプロセスの両面をしっかり精査するので、選手に納得感が生まれやすいのです。このように選手が気持ち良くプレーできるシステムが整っているからこそ、世界のトップリーグであり続けることができるとも言えるかもしれません。
 なお、スポーツでなくビジネスの世界においては、プロセス度外視で“成果のみで判断する”というのが欧米型。一方で日本では欧米型の真逆とも言える年功序列・終身雇用の時代が終わり、現在は年功給と成果主義の混合型組織が約半数で最も多いというのが現状です。つまり今の日本は、まだまだセリエAには到底およびませんが、少しずつ健全な労使の関係性が構築されつつある過程にあると言えるのではないでしょうか」

小さな改善を大きな発展に繋ぐ

人事評価において、個々に“目標”を定めることは非常に大事なことだ。ただ、ルーティンワークがほとんどの非営業部門などでは、そもそも目標を設定すること自体が難しい。では、正当な人事評価をするにあたり、どのような発想でそれを定めるのがいいのだろうか。

「例えば“元気に笑顔で挨拶をする”、これも1つの目標です。そうした『これができれば少しずつ会社が良くなるよね』っていう目の前の課題をクリアするために定めるものが弊社の言う目標で、何も難しく捉える必要は全くありません。部下や従業員に変わってもらいたいこと、彼らに対して日々抱いている不満─そうした思いが結局、改善すべき目標になるのだと思うのです。遅刻が多いとかメールの文章が雑だとか、そういう目の前にある改善点を目標にし、その一つひとつにコミットメントし、できたかできなかったを評価する。人事評価というのは、それを積み重ねていくことでしかありません」

そんな小さな改善を促し続けることができるのも、人事評価制度を導入することのメリットだと高橋社長は言う。

「私は常日頃から、人事評価は“査定するためのツールではない”と考えています。査定するためだけであれば、手間やコストを考えてもやらないほうがいい。少人数規模の企業ならば、社長が一人ひとりと面談して熱い思いを伝えていくことが、コストをかけず業績向上に繋げていく一つの効果的な方法でもあるわけですからね。私の考える人事評価の根幹は“設定した目標を各自が達成できるよう、日々の業務において管理者がそれに関与し続けていく”こと。その観点で言えば、従業員が1人でもいれば人事評価は必要です。目標を定め、評価をされることで給与が上がっていく仕組みが整えば、必ずスタッフはやる気を出し、日々成長でき、結果的に会社全体の業績も伸びてゆくでしょう。
 そのために大切なのは、後出しジャンケンにならぬよう、評価する前のスタート時点でゴールを設定しておくこと。マラソンではゴールを決めずに走り出すことは有り得ませんが、ビジネスの世界ではこの当たり前に思えることが非常に難しく、日本のホワイトカラーはこれができていないから生産性が低いとも言えます。そのなかでゴールや目標を明確に定め、従業員の今と向き合い、成長を支えていくためしっかりと評価に関与し続けていくということは、生産性を上げるうえで必要不可欠なことだと思いますね」

「長時間労働」が大きな社会問題となり、国がその是正に動き始めた昨今。その流れで槍玉に挙げられがちな“ブラック企業”と呼ばれる組織を改善するうえでも、人事評価制度は有効と言えるのだろうか。

「劣悪な職場環境だとしても、一つひとつのことに無駄がないか?と考えていくことが何より大切ではないかと思います。デフレビジネスによる苛烈な価格競争のしわ寄せが従業員にいってしまったことがブラック企業の生まれた背景にあり、それを解決する策として何の責任もないエコノミストや経済学者は外部から『ビジネスを磨いて付加価値のあるビジネスをすべきだ』などと言いますが、それはあくまで抽象的な話であって、非常に長期的視野に立った見解です。一方で今日からできること、明日からできることはなにかと考えたら、やはり目の前の仕事の効率化を追求していくよりほかありません。日々の業務プロセスにおいて無駄なことがないかを一つひとつ洗い出していくことから始めない限り、明るい未来はないと思いますね。そしてそれを行う際にも、人事評価制度の導入は有効です。目標を明確にするうえで、“現状の課題は何か”ということを現場が常に考え続けるからです」

 
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