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Challenge+(チャレンジプラス)

巻頭企画天馬空を行く

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女性スタッフも積極登用

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そんなエコ配のキーワードは“ほぼ人力”。小回りのきく自転車をフルに活用した宅配システムであるため、それを漕ぐ「人」を重んじた人材育成や就労支援システムが充実しているのも特徴の一つだ。2014年11月には女性スタッフのみで構成された店舗「エコ配なでしこ」が西新宿にオープンするなど、女性の登用を推し進めているという。

「弊社の荷物の特徴は、先に挙げたように小さいこと。ということは単純に『女性が運びやすい』とも言えるわけです。さらに自転車中心のサービスなので、運転免許を持っていない女性でも就労できるというのもポイントです。国内の労働力が減っていき、女性やシニアを有効に雇用することが企業の浮沈の鍵を握るとも言われるなかで、我々としても是非その手を借りたい。サービス業というくくりで見た場合でも女性は非常にホスピタリティが高いですし、女性スタッフを積極的に採用していくというのはおのずと出た答えでした。
 ちなみに現在は国内に400万人のシングルマザーがいると言われていますが、こういった方々を含めて新たな労働機会を提供していけたらと思いますね。女性だけで構成した西新宿営業所というのは、そうした思いの表れ。これを一つのモデルケースとして確立できれば、同様の店舗も増やしていけるはずです」

もちろん大事にしているのは女性スタッフだけではない。男性を含めた全配送員を「エコクルー」と呼び、アルバイトからの正社員登用にも意欲的だ。

「今はアルバイトにもしっかりとした社会保障が付く時代ですし、そうなると正社員とアルバイトの間にはどこに線引きがあるのか─それが私の率直な考えです。そうしたなかで我々としては、フルに働きたい人にはどんどん正社員になってほしい。責任を持ってエコ配のサービスを提供してもらって一緒にお客様を増やしながら、一つの流通ネットワークをつくっていきたいのです。ですから正社員比率も上げていきたいですね。若いスタッフが多いというのも特徴で、来年は新卒100名を採用しようと考えていますよ」

ラストワンメーターでできること

片地社長には、正社員を増やしたうえでやりたいことがあるという。それはラストワンメーター、いわゆる顧客と直に接する際のサービスの強化だ。

「顧客のもとに毎日足を運ぶサービスというのは、実は宅配便しかありません。だからこそ流通のインフラを整えることができたら、そのネットワークを活かして非常に面白いサービスや新たな価値が提供できると思っています。
 例えばお客様から頂くご連絡で最も多いのが『いつ着きますか?』という問い合わせ。それを受けてこの秋、配送員の“見える化”サービスを開始する予定です。簡単に説明すると、配送員にGPSを付けることで、スマホなどを通じて荷物が今どこにあるかがリアルタイムで分かるというサービス。従来の2時間単位の『時間指定』以上に、いつ届くのかが把握しやすくなるはずです。また配達するスタッフの居場所だけでなく、顔写真や簡単なプロフィールまで確認できるようにするつもりですよ。
 実は“顔が見える”というのは、安心感に繋がるという意味で非常に大きなポイントです。宅配業は、居留守なども含めて一つの荷物に付き2〜2.5回ほど訪問すると言われていますが、それって普通に考えれば非常に無駄の多い行為ですよね。そのなかで『いつ届くのか』『誰が届けてくれるのか』がはっきりと分かればその回数は確実に減り、時間的コストは大きく圧縮できるはずです。さらに言えば、そうしてお客様からの問い合わせが減ればコールセンターにかかる費用も削減でき、そこで浮いた費用をお客様に還元できることを考えても、非常に意味のあるサービスだと思っています」

そして将来的にはその延長線上に、さらなる独自のサービスを模索しているという。見据えるのは、“世界初の都市型ロジスティクス”の構築だ。

「配送車輌は今は都内に数百台というレベルですが、それを数千台規模にしたいですね。そうして1人当たりの担当地域が狭まり今以上にきめ細かなエリア対応ができるようになれば、モノを運ぶ以外にも何だってできるのではないかと考えています。
 例えばお客様に対して、企業から委託された商品サンプルを配ったり、アンケートを採ったり、お客様が求めている商品のパンフレットを持参したり─。つまり企業と企業の仲介役に、我々がなるというわけです。これからはスタッフ全員にスマホを持たせて人の動き、荷物の動きなども分かるようになりますし、そうしたことも含めてビッグデータが集まれば、さらに色々な可能性が見えてくるのではないでしょうか。
 そうやって宅配に広告・情報・金融などの新しいサービスや付加価値を付けて収益機会を増やしていければ、結果として同業界のなかでも平均以上の給料を払える仕組みを整えることができるはず。それに付加価値というのは、何もビジネスに限った話ではありません。例えば東京23区内にエコ配の自転車が2000台走っていたとしたら、同時に防犯や清掃といった社会活動ができるかもしれない。要するに我々は単純な“物流企業”になるつもりは全くありません。東名阪に密着した企業として地域の方々から『エコ配、頑張ってるな』と思って頂けるような活動がしたいですし、一方でITを駆使して今までにないアプローチをしていけたらと考えています。当面はネットワークづくりに専念しますが、アイデアだけは山ほどあるんですよ(笑)」
 
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▲ CtoCサービスの拡大に伴い、一般ユーザーの利用拡大と利便性をはかるために開発されたアプリ。リヤカーを「動く営業店」と捉え、集荷・配送のため地域を回っている担当エリアのエコ配リヤカーの位置情報を、スマートフォンなどの端末から確認できるのが特徴だ。
 例えばアプリから集荷を申し込むと、集荷先に最も近いリヤカーが自動的に選択されて担当者が現場に向かう。結果、ユーザーの待ち時間は少なくなるうえにあと何分で集荷に来るかも把握できるという、非常に利便性の高いシステムだ。
 将来的には荷物の引き渡しでの活用も視野に入れているとのこと。そうなればユーザーが荷物のありかを逐一把握できたり、不在宅への配送回避が可能になるなど、双方にとってメリットが大きいと言える。

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