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株式会社 エコ配 代表取締役社長 片地 格人

片地 格人? KATAJI TADATO
1969年3月生まれ。同志社大学を卒業後、野村證券(株)に入社。トップセールスを記録する傍ら、IT企業の創業者との太い人脈を築く。30歳でHTC(光通信キャピタル)にてベンチャーキャピタルの最高執行責任者を務め、15社をIPOに導くなど金融マン・経営者としてのキャリアを積む。その後も弱体化していた12店舗の美容グループを買収して事業再生をしたり、物流不動産の仲介会社(株)日本レップ(現:グッドマンジャパン)をマザーズ上場に導くなど、類い希な経営手腕をいかんなく発揮。物流不動産を手がけるアール・アイ・シー・マネジメント(株)を経て、2010年に(株)エコ配の代表取締役社長に就任した。他方、5社の社外取締役も務めている。

徹底的に無駄を省いた超効率的なサービスを追求し、主にB to Bの宅配事業において大手運送会社のほぼ半額という驚きの送料を実現している(株)エコ配。その「エコノミー」さと、ほぼ自転車での配送という「エコロジー」をキーワードとして東名阪でのインフラ構築を目指す片地社長に、(株)エコ配のビジョンや成功へのヒントを聞いた。

寡占マーケットに参入

自転車をメインとした格安宅配サービスで“宅配業界のLCC”を目指している、2007年創業の(株)エコ配。ネット通販の隆盛などを追い風に、拡大を続ける宅配業界において飛躍を見据えるベンチャー企業である。成長の原動力となっているのが、2010年に同社の代表の座に就いた片地格人氏。まずは片地氏が、経営に携わるようになった経緯を聞いた。

「私は当初、資本参加という形でエコ配を側面支援していたのですが、エコ配が傘下に
入っていた日本振興銀行が経営破綻してしまいましてね。そのときに当時、社外役員であった谷田大輔氏(現:取締役会長)と私に再建依頼の話があったことが直接のきっかけでした。実際に事業再生の経験やノウハウを持っていた私に、白羽の矢が立ったというわけです」

そうしてエコ配の社長になった片地氏は債務回収機構などと交渉しながら財務を整理しつつ、実務面では評価体制やインセンティブ制度などを整えてクルーの意識改革に着手、就任から5年で顧客企業を10万社超へと急成長させた。ではエコ配の事業の特徴とは、どんなところにあるのだろう。

「エコ配のコンセプト自体は、創業当初から変わっていないんですよ。“エコロジー”であり“エコノミー”。つまり『より環境に優しくローコスト』というのがエコ配の考えているところです。電子商取引(EC)の活発化などもありモノの流れが多品種少量化するなかで、これからは今まで以上にきめ細かな宅配ネットワークやそのインフラが必要になっていきますので、その部分をエコ配が構築できたらと。
 なお、宅配業界はヤマト運輸さん、佐川急便さん、JP(日本郵便)さんで約92%のシェアを占めている寡占のマーケット。なかでもヤマトさんや佐川さんはもともとトラック運送会社から始まり、そのネットワークを宅配業に変えていった背景があるので、事業インフラが非常に大きいというのが特徴です。
 そこで逆に弊社では、インフラ自体をできるだけ軽くすることで、よりローコストでの運営ができると考えました。確かにその日に出してその日に届くのは素晴らしいサービスではあるけれど、運送業に求められるのはそれだけではないはず。翌日に自転車で届くけどとても安い──そういうニーズも確実にあると思っています」

エコノミー & エコロジー

事実、エコ配の送料は“大手のほぼ半額”とずば抜けて安い。集荷エリアや荷物の大きさの限定、要冷蔵や割れ物は扱わないなど様々な制約はあるものの、可能なかぎりインフラを軽量化したことで驚きの低価格を実現しているのだ。

「荷物は縦・横・高さの三辺80cm以内の小さなものに特化しています。だからこそ自転車で運ぶことができ、それがエコロジーにも繋がるというわけですね。最近では他社さんも自転車でのサービスを始めましたが、大きな荷物だとリヤカーに個数を積めないので、エコではある反面、効率がいいとは言えない。一方で我々は小さい荷物のみを扱っているぶん、自転車でも多くのモノが運べるというのがメリットと言えます。具体的な数字を言えばリヤカーに100?150の荷物が載り、1人で一日にそれだけの個数を運べれば、ローコストだとしても充分に採算が合うんですね。そして荷物が小さければ当然、営業所も小さくて済む。大型トラックでなく自転車を使うので路地裏の立地でも問題なく、とても安価に拠点をつくれるというのも低料金に繋がっています。
 エリアでいうと、集荷を“東名阪”に限定しているというのがポイントです。東京〜大阪までは600km弱ありますが、その距離というのはその日の夕方までに集めたモノを、明日の朝一番で該当地域に届けることのできるギリギリの距離。そして東京・大阪・名古屋からの荷物を午前中に配達し、午後からはまた集荷するというルーティンを1人のスタッフが一エリアごとに担うことで、非常に効率的なサイクルを生み出しているのです」

エコ配がなぜインフラの軽量化、ローコストにこだわるか。答えは単純明快、そこに顧客ニーズがあるからだ。

「要するに小さい荷物でエリアを限定することでエコノミー・エコロジーに繋がっていくという流れ。窮屈さはあるかもしれませんが、弊社のサービスをうまく使って頂くことでコスト削減に繋げるというのも、選択肢の1つだと思いますね。
 規模的に言えば、日本における年間の宅配物およそ36億個のうち弊社が扱うのは約1000万個、全体で0.3%くらいのもの。事業所数だと5%、100社あったら95社が新規の顧客になるというのが現状です。昨今の通販業界の隆盛を受け、例えばマーケットが1.5倍になったとしたらその増加分をどの企業が担うのか─そう考えたときB to BはもちろんB to C、C to Cにおいてもローコストというのは1つの強みになると思いますし、弊社としてもシェアの割合を増やしていけたらと考えています」
 
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