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巻頭企画天馬空を行く

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未来工業、そして中小企業の未来

20150301_tenma_ex04創業者の息子として生まれた山田社長は、長野県で営業所長、山形県で工場長、そして子会社の社長を経て、50歳で未来工業の社長に就任した。半世紀以上続いた会社のかじ取り役として、会社の未来をどのように見据えているのだろうか。

「自分が次期社長と決まった時から、私は50歳で社長に就任し、65歳で引退することを想定しています。そのために考えているのは、バトンタッチする次の社長をどのようにして育てていくか、ということですね。経営に関して言えば、これまで大切にしてきた未来工業のスタイルを貫きながら、売上、利益を伸ばすことを追求するのみです。『朱に交われば白くなる』─これは創業者である父の言葉ですが、私という小さな『朱』を会社の『白』に混ぜても、結局は白いまま。ですから私の個性を出すのではなく、半世紀にわたって培ってきた、未来工業の色をさらに深化させることが私の使命ととらえています。他の会社のやっていないことをするのが未来工業なのであって、同じことをした瞬間、会社の価値はなくなると思うのです。自社の存在意義を守るために、私自身がどんな雑音にも惑わされずに突き進む、“天上天下唯我独尊”のスタンスを持っていなくてはいけないと感じていますね。正直、私の父や祖父もそんな人たちでしたしね(笑)」

独自の色を持ち続けてきた未来工業は、地元の人にも非常に愛されている。実際に会社への送迎を頼んだタクシーの運転手は、「地元の人で未来工業を悪く言う人はいないよ」とどこか誇らしげに語っていた。そこで社長に、「愛される会社になるためには何が必要か」という質問を投げかけてみた。

「どういう人間が好かれるのかと言われれば、私は単純に、威張っていない人だと思います。自分も、子どもの頃はたいそう生意気だったと思うけど、それは今振り返ってみると、とてもカッコ悪い。1対1で接している時に威張っていない人間は、とてもカッコいいと思うんです。だから答えとしては“威張らないこと”というふうになるのでしょうか」

最後に、これから経営者になろうとしている人々へのメッセージを頂いた。

「『感謝の言葉を忘れない』『人と違うことをする』というのも、確かに大事だと思います。しかし一番大事なのは、『自分を信じること』ではないでしょうか。私が未来工業の社長になったのは50歳の時ですが、もし10年早く社長になっていたならば、今頃つぶれていたかもしれません。なぜなら、そこまでの自信が当時の私にはまだなかったからです。起業を目指すならば、ぜひ自分を磨き、自信を持ってほしい。そうすれば、じきに起業のタイミングが来ると思いますよ。
 そして未来工業と同じことができれば、未来工業のような会社をつくることも可能だと思います。ただ、それにはこれまでの価値観を全てかなぐり捨てる覚悟が必要かもしれませんけどね(笑)」

冒頭でも挙げた通り、未来工業はホワイト企業を目指してきた会社ではない。会社にとってのベストな形を考えに考え抜き、時には常識外れの施策も実行してきた結果によって、ホワイトと称される現在の会社が生まれた。
 フランスの哲学者、ブレーズ・パスカルは「人間は考える葦(あし)である」と説いた。この言葉は、人間も考えることで宇宙を凌駕できるという、無限の可能性を示唆しているものだ。その姿を1つの形として体現している未来工業には、新興企業が見習うべきヒントがたくさん詰まっている。だからこそ、会社経営のみならず何かに行き詰まりを感じているならば、未来工業を真似てみてはいかがだろうか。常に考え、他を真似ない、というスタンスを。

 

(取材:2014年10月)

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未来工業 株式会社
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本社所在地 〒503-0295岐阜県安八郡輪之内町楡俣1695-1
URL http://www.mirai.co.jp/
設立 1965年8月17日
資本金 70億6786万円
従業員数 単独 782名 連結 1108名(2013年3月20日現在)

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