巻頭企画 天馬空を行く

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メイドインジャパンを海外に

2002年3月、イギリス・ロンドンにて「Tabio」の海外1号店が開店したのを皮切りに、イギリス・ロンドンやフランス・パリなど、海外にも計6店舗を展開している。そもそも当初はニューヨークに展開するつもりだったが、店舗物件を管理する家主に「靴下専門店には貸せない」と言われて憤慨した経緯があったと会長は笑う。

「それくらい、外国の人は靴下に無頓着だったということなのでしょう。かつて、来日した外国の高官が茶室を訪れた際、靴を脱いだら靴下に穴が開いていて、それがテレビで放映されてしまったという珍事がありました。日本では靴や靴下の文化が根付いたのは昭和に入ってからですが、製造技術は世界トップです」

今までに世界一の品質を保っていた日本の家電や電子機器の分野は今や韓国や台湾にそのシェアを奪われつつあるが、靴下製造に関しては今もなお世界一を誇り、「メイドインジャパン」のブランドは世界各地で受け入れられる可能性が高い。既にヨーロッパの著名なファッションショーではタビオの靴下が評価され、用いられている。会長はこうした背景を踏まえ、日本製の靴下を世界に売り出そうと考えている。ニーズはあっても生産力がなくては世界規模での展開は難しい。前述したように、国内の生産拠点は空洞化し、腕の良い作り手が廃業してしまっているケースが少なくないという現状がある。
 また、生産者の高齢化も大きな問題だ。かつて会長と「世界一の靴下づくり」に燃えた共栄会の初期メンバーも高齢となった。幸いにも2代目、3代目に会社そのものは後継されつつあるが、技術やものづくりに対する心構えという点ではまだまだ成長段階だ。
 そんな状況下で会長は、社内に「ソックスカレッジ」なるものを立ち上げた。若手の職人が情報や知識を吸収したり、技術を研鑽したりする場を提供、次世代の作り手やマーチャンダイザーを育成している。ただ、ソックスカレッジに限らず、最近の若者の「理屈重視」を会長は嘆く。

「良い靴下と悪い靴下の違いを、データで分かる形にして説明してほしい、と若い職人は言います。でも、口で言って説明できるもんやない。流行っているケーキ屋とそうでないケーキ屋の違いを理屈で説明できまっか?」

確かに、砂糖の量が何グラム違うとか焼き時間が何分違うとか、データで示せる違いはあるだろう。しかし、食べ比べただけではそれが分からない。同様に、良い靴下と悪い靴下の違いを明確に説明するためには、データよりも経験が必要なのだ。靴下職人でさえそれだけの鍛錬を積まないといけないのならば、品質の良い靴下を消費者はどのように選ぶというのか。きっと履き心地がよい、丈夫だといった観点を重視する。ならば、すべきことはただ1つ。消費者が求める「丈夫で履き心地の良い靴下」を作ることしかないのだ。
 人に教わるのではなく、自ら改善すべき点を探し出し、改良を加えてきたからこそ「メイドインジャパン」は作られた。会長は、花見に行っても映画を観ていても四六時中、靴下のことを考えているという。それくらいの熱意がものづくりには不可欠だ。

創業者として生涯現役で責務を全う

現在、タビオは会長の息子である越智勝寛氏が代表取締役社長を務めている。会長とは打ち出す方針が異なることもあるが、経営に関して基本的には社長に一任しているのだという。

「うちは“代々初代”という観点でやってますねん。父親の真似をしても、逆に息子の真似をしても上手くいかないかもしれない。目指すべき方向性は同じでも、プロセスが異なるのはやむをえないことです。ただ、生涯現役で靴下作りに携わっていくことで、創業者としての責務は果たすつもりです。現在74歳。息子に『私はあと20〜30年しか頑張れないから、その間にしっかり頑張れ』と激励すると、『まだそんなにやるのか』と煙たがられます(笑)。騎虎の勢いという諺がありますが、私はまさに千里を走る虎に乗った楊堅。途中で降りることはできしまへん」

最後に問うてみた。

「そろそろ、靴下を履かれたらいかがですか。お身体に障りますよ」

屈託のない笑顔でこう返される。

「来年、儲かったら買いまっさ」

喜寿近し、然れども未だ向上心は衰えず。

(取材 / 2013年10月)
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タビオ 株式会社 Tabio Corporation
本社所在地 〒556-0011 大阪府大阪市浪速区難波中2-10-70
なんばパークス内 パークスタワー16・17F
創立 1968年3月
資本金 4億1478万9000円
事業内容 靴下の企画・製造・卸・小売
フランチャイズ チェーン・直営店の展開
URL http://www.tabio.com/jp/

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