巻頭企画 天馬空を行く

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言行一致で課題発見能力を磨く

キヤノン、リコー、コニカミノルタ等の競合他社によって熾烈なシェア争いが繰り広げられるオフィス機器業界。質やスピード、また価格といった従来からの観点で差別化を図るのは難しい。そうしたなか、ソリューション・サービスの提供において大切なのは、新しい価値を提案することだと山本氏は言う。

例えば、複写機という言葉から連想されるのはコピー(複製機能)や紙だが、限定されたそのイメージから抜け出せなければ、経営課題の解決に資する真に革新的なソリューション・サービスが生まれることはない。
「複写機がない時代、人々は本によって情報を得て、それを手書きで写して情報を広めていました。複写機が誕生してからは、大量のコピーが簡単に作れるようになった。その後スピードが上がり、カラーでの複写が可能になった。では、グローバル化が著しく進み、物流において国境という概念がほとんどなくなった現在、複写機に求められるのは果たして“同じものを多量に作り出す”という機能だけでしょうか」

1つの例を挙げると、海外でビジネスを展開するなかで、社内に言語に長けた人材がいない場合。手元にある外国語の文書を読み解くのに必要なのは、コピー機能ではなく翻訳機能だ。
「英語や中国語で書かれた書類が、日本語になって出てくる。そんなコピー機があってもいいのではないでしょうか」

このアイデアは、クラウドを活用したスキャン翻訳サービスとして実用化され、差別化を可能にする新機軸のサービスとして注目された。多くの企業から「コピーをとるように手軽に翻訳できる」「文書の主旨や概要を、受け取ったその場で即座に把握できる」と好評だという。

顧客の声から経営課題を読み取り、想像力を働かせる─その立脚点にあるのは、コミュニケーションを捉える俯瞰的な視線だ。「コミュニケーション」という言葉を口にするとき、山本氏の声は俄然、熱を帯びる。
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「富士ゼロックスの事業の起点はコミュニケーションにあり、コミュニケーションから広がる全方位的なフィールドが当社の舞台です」
そう語る氏は、次のように言葉を続ける。
「世の中にある全ての仕事が、コミュニケーションによって成り立っています。例えば新しいプロジェクトが始まる時には、まず社内でミーティングが開催されます。そこに参加している人々をつなげる手段として必要なものは何か。音声、メール、ネット、紙媒体・・・無限に広がるコミュニケーション手段において、我々がスポットを当てるのは複写機だけに限りません。企業がそれぞれの価値創造を進めるなかで必要とされるコミュニケーション手段やシステムを、あらゆる角度から検討する。職域や業務を問わず、我々の仕事は無限に広がっているのです」

こうした展望を、氏は2008年に“複写機からの卒業”と表現した。卒業という大胆な言葉に込めたのは、全社を挙げて「変革」を進めていき、新しいフェーズへ踏み出していくという覚悟だ。

「小学生が中学生へ、また高校生が大学生へとステップアップしていくように、卒業とは、自らが活動する場を広げ、成長していくための区切りとなります。ここ数年の改革で少しずつ地盤が固まってきたソリューション・サービスで、さらなる進化を遂げていきたい」

進化を促進する基礎力を磨くために、現在、富士ゼロックスでは全社をあげて“言行一致活動”を展開している。

「ソリューション提案は、お客様のお話に耳を傾け、問題点やニーズを発見することから始まります。課題発見能力、つまり気づきがなければ、ソリューションは生まれない。そのためのスキルは、日々繰り返される自らの仕事において課題を発見し、改善するという繰り返しのなかで培われます」
日々、改善の意思なく漫然と仕事に向かっている人が、ある日突然顧客に向かって改善手段を提案できるわけもない。例えば製造なら生産から納品、在庫管理まで、一連のプロセスのなかで品質を高めていこうと努力を続ける。その流れを通じて味わう成功体験、失敗体験は顧客の業務を測る1つの軸となる。そして、その対比から課題は浮かび上がってくる。
「言行一致活動は、部署や立場、役職の上下に関係なく実施されます。モノを作る人、売る人、管理する人。誰もが自分の仕事を課題発見型にすることが、最終的にはお客様満足を高めることにつながっていくのです」

海外展開の軸はグローカルに

コミュニケーションを立脚点とし、課題発見への視点を以てビジネスに取り組む姿勢は海外事業においても変わらない。現在、富士ゼロックスがカバーする海外エリアは、中国、東南アジア、オセアニア。シンガポールやオーストラリアといったITの先進国には、欧米仕様と変わらないグローバルスタンダードの製品群を提供。一方でフィリピンやマレーシアなどの新興国においては、モノクロ複写機など低価格で単機能の製品を中心に置く。事業活動の場をグローバルに広げながら、対象とする国の文化や商習慣、法規など、地域固有の状況とニーズを考慮し、地域特性にあわせた製品・サービスを提供する。同社の海外事業の方針は、グローバリゼーションとローカリゼーションとを融合させた「グローカル」にある。

世界において、日本のオフィス機器メーカーはトップクラスのブランド力を誇る。だが、近年は韓国メーカーなどの参入によって低価格競争の加速が進む。そうしたなか、富士ゼロックスの強みは「直接販売、直接保守サービスができる体制と、代理販売店というパートナーを介する販売網の両方を持っていること」と山本氏は言う。

「地域特性、業種特性などそれぞれの細かなニーズを反映し、製品自体の魅力を上げるとともに、ほかにはない価値を提供していく。そこに直販の強みがあります。価格競争は避けられませんが、価値創造によって値崩れさせない製品づくりを目指したい」

現時点での売上高における海外市場の割合は、国内57%に対して海外43%。今後1〜2年のうちに、半々にするのが目標だ。

2012年、富士ゼロックスは創業50周年を迎えた。

「入社式で、技術志願の新入社員に当社が以前は販売会社だったと話すと、皆びっくりしますよ。想像がつかないんだろうね」と笑う山本氏。その胸には、創業から半世紀の間に成し遂げられた変革の一翼を、自らが担ってきたという自負がある。

「世界全体が加速度的に変化している今、正確でスピーディに情報を共有する必要性はますます大きくなっている。コミュニケーションは、ビジネスを支えるのみならず、変革をも左右するのです。そして変革がもたらす世の中の進化は、常に技術の発展とともにある」
技術者としての矜持は、経営者となった氏のなかに、今も生きている。

(取材 / 2013年6月)

富士ゼロックス株式会社 (Fuji Xerox Co., Ltd.)

本社所在地 〒107-0052 東京都港区赤坂9-7-3
URL http://www.fujixerox.co.jp
設立 1962年2月20日
資本 200億円
社員数 連結:45040名 単独:8862名(2013年3月31日現在)

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