巻頭企画 天馬空を行く

富士ゼロックス株式会社


山本 忠人 Yamamoto Tadahito
富士ゼロックス株式会社
代表取締役社長
1945年生まれ。68年に山梨大学工学部を卒業後、富士ゼロックスに入社。94年取締役、96年常務、2002年専務執行役員と要職を経て、07年6月に代表取締役社長に就任。「お客様の満足」をビジネスの起点に据え、コミュニケーションを全方位的に捉える視点で製品・サービスの提供に努める。

2007年6月、総勢4万5000名の社員を抱える富士ゼロックスのトップに就任した山本忠人氏。同社創業以来、7代目にして初の技術系出身社長として耳目を集めた。国内需要の収縮と景気減速、そして新規参入企業による競争の激化――厳しさを増すオフィス機器業界を生き残るために氏が取り組んだのは、ビジネスを捉える視点の転換だった。“モノ売り”から“コト売り”へ、大胆な改革を推し進めるなかで折に触れて発信するメッセージは「言行一致であれ」。自己変革への強い意志が為す革新に迫る。

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海外への憧れからゼロックスへ

富士ゼロックスの創業は1962年。米国ゼロックスの日本における販売会社としてビジネスがスタートした。山梨大学工学部を卒業した山本氏が入社した1968年当時、会社は米国製品の特許期限を間近に控え、メーカーとしての事業展開を目指して技術力を強化している最中だった。

60年代後半と言えば、日本全体がいざなぎ景気に沸き、経済大国として国際舞台へ躍り出ようとしていた頃。貿易や資本自由化に向けて巨大企業の大型合併が相次ぎ、経済力の増大とともに産業規模が拡大。自動車や繊維、鉄鋼などの大手企業が就職先として人気を博すなか、氏が創業間もない富士ゼロックスを選んだのは、海外に強い興味を持っていたためだった。

「“ゼロックス”という響きに、当時の日本にはない先進性を感じたのを覚えています。また規模が小さいからこそ、若い自分にも活躍のチャンスがあると考えました。頑張り次第で海外に行けるかもしれない、と」

学生時代に見聞きしていたゼロックスの製品群が、技術者としての感性に響いたというのも理由だった。

入社後に配属されたのは、保守業務に携わるテクニカルサービス部。機器のメンテナンスやサービスマン教育、マニュアル作りのほか、新製品導入において工場サイドとのインターフェース業務に従事した。

生産部門が体を成してきたのは1971年頃のことだ。この年、富士ゼロックスは富士写真フイルム(当時)から竹松工場を、岩槻光機(当時)から岩槻工場を譲り受け、実質的に製販一貫体制を確立。また海老名工場も操業を開始し、生産の基盤が固まってくる。とは言え、すぐに

「技術のゼロックス」という評判が立つわけもない。

「『販売のゼロックス』と言われるのが悔しくてね。メーカーとしての地歩を築き、技術力で名を上げてみせる、そんな気持ちがいつも胸にありました」

入社6年目、その本流に携わるチャンスが訪れる。米国ゼロックス本社において、カラー複写機を開発するメンバーに選ばれたのだ。各国の技術者が集まる中、日本から派遣されたのは山本氏ただ1人だった。当時、氏は若干27歳。英語力も充分でないなか、初めて訪れる海外においてプレッシャーや不安を感じつつ、常に自分に言い聞かせていたのは「自ら考えて行動を起こす人になれ」という言葉だった。

「各国の技術者と議論し合い、合意を得て次の段階に進む。開発はその繰り返しです。日本のニーズや法規にのっとった仕様を実現するために、さまざまな場面で決断力が必要とされますが、分からないことがあっても指示を仰ぐ上司はいません。常に自ら考え、調べ、その場その場で最適と思われる結論を出していかなければならない。そうした状況においては、主体性が非常に大切です」

自ら考えて、行動を起こす人になれ──この言葉は現在、社員にも折に触れて話すという。

「自分が置かれている立場や部署において最高のレベルを自ら求め、行動すること。ただ指示を待つだけでは、成長はありません」

米国に滞在したのは2年半。コミュニケーションを円滑に図るため、仕事の合間をぬって語学学校にも通った。プロジェクト終了後、今度は英国に赴き同じく2年半滞在した。プレッシャー、責任感、そしてゼロックスの製品づくりを担っているという自負。手応えのある仕事を重ねる中で培われた総合的な仕事力は、現在のベースにもなっているという。

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