巻頭企画 天馬空を行く

はるやま商事 株式会社


1964年岡山県生まれ。幼少より父の商売を傍らで見続けながら、立教大学経済学部で学び、1989年に伊藤忠商事(株)に入社。繊維部門の担当者として活躍後、1994年、退社と共に、はるやま商事(株)へ入社する。社長室長、常務取締役、関連会社である(株)ミック代表取締役を経て、2003年にはるやま商事(株)の代表取締役へと昇格した。その後、2008年には北京オリンピック日本代表選手団のオフィシャルパートナーとなり公式服装を発表。対外的なスーツメーカーブランドを確立しながらも、ハイクオリティブランドであるP.S.FAの全国展開や、レディスファッション業態「ミリオンカラッツ」、スーツの新業態「HALSUIT」を岡山、赤坂にオープンさせるなど衣料の多チャンネル化を推進している。

社会の変化が市場にもたらす影響は大きいが、昨今の紳士服業界はまさに、市場との関係性がナイーブになっていると言えるだろう。団塊世代の退職、少子化の影響による就業数の減少、そして業界によってはスーツではなく、比較的ラフなスタイルでの就業が見られるようになってきている。東日本大震災直後から控え気味だった購買傾向が少しは上向きになってきたとはいえ、業界全体の見通しは決して明るいとは言えない。 そうした中で問われるのが、紳士服業界各企業のフレキシブルな対応力だ。その企業のカラーをどのような色にし、市場との距離をいかに正確に図り、消費者の生活意識をどれだけキャッチするか。その対応力を発展向上させるだけでなく、維持するための社内意識をどのようにコントロールしていくのか。売上高回復という目的に向けて、社員の意識改革も急務となっている。そんな中、紳士服業界の中で若獅子と目される、ある男が気を吐いた。はるやま商事(株)・代表取締役社長である治山正史氏だ。今や全国に名が知られる「紳士服のはるやま」ブランドを先代から引き継ぎ、旗頭となって間もなく10年目。その軌跡から、混迷の続く市場が活路を見い出すヒントを探す。

インタビュー・文:新田哲嗣 写真:佐治純一

被災の混乱から
気付いたこと

「はるやまはね、インフラ商品を作ろうという夢に、社員全員が燃えているんです。インフラ商品というのは、つまり100年後に残っていくような、未来の定番と言えるでしょうか。リーバイスが100年以上前に作ったジーンズが、今や生活ファッションの定番となっている。ブルックスブラザーズが世に送り出したボタンダウンシャツも然りです。人々の暮らしに欠かせない商品として存在するもの、存在する店を、はるやまも作りたい。そう考えていたところ、東北が1つのヒントをくれた気がしました」

岡山県は玉野市。治山氏の父であり、はるやま商事(株)の先代社長である正次氏が洋服専門店を開業したのが1955年のこと。当時、まだ幼かった治山氏は、そこで「人々の暮らしに欠かせない企業でありたい」という現在のスタンスに繋がる幼児体験をした。

「ウチは、1階が店舗、2階より上が自宅という生活環境でしてね、両親が店で商いを手がけている姿を見るのは、日常的な光景でした。そんなある日の深夜、店のシャッターを叩く音が聞こえてくるんです。『なんだ?』と思いましたが、父が店の表に出ると、目を真っ赤にして泣きはらした夫婦が立っていた。聞くと、ご夫婦のお母様がお亡くなりになられて、通夜をしないといけないのだが、礼服がないと言うんです。親父は『分かりました』と一言。真夜中にもかかわらず店を開け、すぐに採寸に取り掛かりました。そしてできあがった礼服を見て、その夫婦は、少しではありますが晴れやかな顔になったように見えた。その時に思ったんです」

── お父さんがやっている仕事は、みんなにとってなくてはいけないものなんだ。

「余談ではありますが、ある時母が私に言ってくれたんです。『あなたの名前は、正しい歴史と書くでしょう?歴史に名を残すようなことをしなさい』。それからかなり考えましてね、歴史に名を残すのならば総理大臣を目指さなくちゃいけないと思って政治の勉強をしてみたり、いやいや、やはりノーベル賞を獲るとかそっちを目指すべきではないかとか、ちょっと待てよ、文学作家として名を残すことだって考えられるなとか、子どもらしい紆余曲折をしましてね(笑)。道を決めたきっかけの1つが、大学時代のある経験でした」

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巻頭企画には株式会社ワンダーテーブルの秋元社長が登場。飲食業界で数々の改革を行う経営哲学について伺いました。

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