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巻頭企画天馬空を行く

人に「伝える」ことで生まれた
サブウェイ・ブランド

 日本サブウェイ株式会社 代表取締役社長 伊藤 彰氏 「1つ、確信を得たのがソーシャルネットワークにおける存在感です。Facebookのコミュニティページ『サブウェイ野菜ラボ』で9万人強の方が『いいね!』を押してチェックしてくれていますが、あの中にはアルバイトの方々や、アルバイトを卒業されて社会人として活躍されている方々も多くいます。サブウェイを好きになっていなければ、フォロワーにはなってくれないはずです。お客様との架け橋をしながら、自分はサブウェイで働いていることを誇りに思う・・・そうした兆しが目に見えるようになって、実感しますね。私たちがやっているインナーブランディングがようやく外向けにも効果を発揮し始めたのだと」。

Twitter、Facebookと、非常に多くの人々がサブウェイに意見を寄せる。ソーシャルネットワークは相互コミュニケーションツールであるため、辛口の意見も応援も、たわいもないことも全て伝えてくれる。そうした意見を商品に反映する。すると自分の意見が取り入れられたことによって、さらに親近感が増す。そして口コミが生まれ、サブウェイに興味を持ってくれる人がまた加速度的に増えていく。

この現象は、単なるよいルーティンという見解で終わらせることはできない。広告と同等に戦略的PRが見直されている中、口コミによるブランディングの成功事例として、広告に頼らないPR手法で結果を導いているからだ。つまり、一時的に興味関心や購買モチベーションをあおる広告ではなく、半永続的にファン化を維持するPR手法をとっていることによって、長くサブウェイのサンドイッチを愛してくれる母集団が着実に増えているということなのだ。

冒頭に掲げたケビン・レーン・ケラーによるブランディング論を思い出す。

「消費者の内部に、該当企業の情報が常に組み込まれており、比較や検討というフィルターを通さずして、購買決定を単純化するというフローを作り上げること」。

これをサブウェイに置き換えると、サブウェイを身近に感じる人々が周囲におり、ファーストフードとしてハンドメイドのサンドイッチを楽しめるという情報が消費者に確実にインプットされた。そして、そのサンドイッチは健康にもよく、『そういえば友だちの誰それがアルバイトをしていたよね』と、自身のライフサイクルの中にも組み込まれている。そうした信頼感・安心感が、店舗へ向かう足取りを軽くし、また来店回数が増えることでより肌になじんだ「自分の文化」となる・・・。

野菜にこだわった点、人材育成にこだわった点など、その改善ポイントはサブウェイにとって大きな分岐点になってきたであろうが、そのことごとくがこうした結果につながっている事実は、まさに驚きをもって迎えられるべきだろう。

「ブランドブックを作ったときも、もちろん口コミが多く生まれてきている今でも、『伝える』ということの難しさは変わりませんね。20数年前までは意識調査をすると、皆の帰属意識がかなりある時代だった。しかし、今は1つの会社、1つの店舗に帰属意識を持っている人は4割を切っていると聞きます。直接、言葉を投げかけてくれるかわりに、コミュニティの中で相談を重ねていく。そして互いに共鳴したところに、自分のベクトルを向けていく。だから、やっぱり伝え方は難しいんですよね(笑)」。

 日本サブウェイ株式会社 代表取締役社長 伊藤 彰氏 強引な言い方をすると、理念の伝え方を1つ間違うだけで、こうしたサブウェイ・ブランドは生まれてきていなかったかもしれない。野菜主軸という言い方を変えていたら、消費者は別のファーストフードチェーンに目を向けていたかもしれない。しかし、サブウェイは成功しているし、これからもしていくであろうことが、次の伊藤の言葉から読み取れる。

「これからは、参加してもらうサブウェイを目指していくつもりです。野菜が摂れたら、社員もアルバイトもお客様も、参加したい人皆が集まって収穫祭をやってみたり。そうしたイベントを増やしていく考えです。自分がサービスしているものはどんなものか、どこから生まれてくるのかをより深く知ってもらえますし、それはお客様にも同じことが言えますからね」。

人がつながっていくためには、根本的な考え方が共通・共鳴していなければならない。そこに、内部も外部もない。進歩していく企業と進歩のない企業の間には、広告戦略だけでくくれない、無味透明のネットワーク概論が、まるで見えない壁のように入り込み隔てている。サブウェイのブランディングには、企業の発展に不可欠な理想のブランディングサンプルが詰まっていると言っても、決して言い過ぎではないだろう。

(取材/2011年8月22日)

日本サブウェイ株式会社 SUBWAY JAPAN,INC.

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