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巻頭企画天馬空を行く

社内に「本気」を浸透させる

アリババ株式会社 代表取締役社長 CEO 香山 誠氏では、リテラシーをどう高めたらいいのだろうか。その秘訣は、一にも二にも「経営者の本気度」だと香山氏は言う。

アリババジャパンでは、最初に「導入研修」を実施している。アリババの使い方やネットにおける最低限のマナーのほか、ターゲットとすべきバイヤーの特徴や、バイヤー目線とはどういったものか、商材を載せるときに何に気をつけるべきかなどを学ぶ。そして3カ月後には「ステップアップ研修」によって、世界のベストプラクティスと自分たちの見せ方を比較する。ここでは3カ月分のデータを分析し、クリック数に対する問い合わせ件数や、キーワードが正しいかどうか、バイヤーニーズに適しているかどうかなどを検証する。

「経営者には、エグゼクティブレポートとしてクリック数、表示数、問い合わせ件数などの分析データを渡しています。ここで問題になるのが経営者の“本気”。経営者が本気なら、何をすべきかは自ずと見えてくるはずです」

会社が存続し、成長していくためには国外に出るしかない。その事実を社内で共有し、どれだけ浸透させているか。将来のビジョンを、全員が明確に描けるかどうか。それは、アリババサービスを実際に使う担当者の士気にも大いに影響する。中小企業であれば、国内での通常業務を手掛けつつ海外市場開拓を担当しているというケースも多い。その中で、その担当者がどれだけ本腰を入れて創意工夫ができるかは、ひとえに経営者が将来のビジョンを本気で描き、危機感と熱意を持っているかにかかっている。

「今、新聞などで営業利益が好調な会社の背景に、新興国需要や新興国市場という言葉が出てこないところはほとんどないでしょう」

そう言う香山氏は、その一例として、建設機械メーカーのコマツを挙げる。

「コマツは、今年1月3日、日経新聞が毎年行う“上場企業の経営者40人が選ぶ最も有望な銘柄”に選ばれました。建設業界は日本では不況産業の最たるものなのに、なぜか。理由は明白、新興国で圧倒的なシェアを持つからです。コマツの国内の売上高は15%。これに比べ、海外売上は85%です。新興国の建設ラッシュを自社の成長力に完全に取り込んでいるのです。コマツは、基幹部品の製造は日本で、組み立てのみを海外で行っている。日本のものづくりの基盤は日本に残したままでいい。“海外で売る”という機能をつくることが必要なんです」

世界の中で戦うために

今後、日本企業の海外進出はますます加速していくだろう。日本だけではない。イタリア、フランス、イギリスなど、先進国による新興諸国を巡る争いは、現在も加速を続けている。

競争の手段として、インターネットは強力なキーファクターだ。新興国において、インターネットの拡大と発達は特筆すべきものがある。新興諸国では特に3Gのアンドロイド端末が飛ぶように売れており、BRICsにおける携帯電話の販売台数は月平均で約2800万台にのぼる。2010年合計では3億3800万台もの販売実績が計上されている。

こうした社会情勢に伴い、アリババジャパンの役割も重要度を増している。

「ワールドパスポートで世界のB2B市場を、タオバオパスポートで中国のB2C市場を、これからも日本企業のために徹底的に取り入れていきます」と香山氏は言う。

「業務を通し、日本経済の活性化に貢献していきたい。『日本企業の海外市場開拓を成功させる』というのが、アリババジャパンのミッションです」

(取材/2011年3月9日)

中小企業経営者の皆さまへ

世界市場開拓に、まず必要なのは勇気です。
海外市場への進出―この言葉を聞いて、貿易実務や決算についてまず頭を悩ませる方が多いと思いますが、それらはまったく壁にはなりません。貿易実務などの問題は、製品のPRを成功させ、バイヤーとのコミュニケーションを成功させ、最後に製品の取引までたどり着いて初めて出てくるもの。そこまでにすべきことは非常にたくさんありますし、逆にそこまで行けば決算代行業や物流代行業などの協力者がいくらでもいます。
海外市場開拓に二の足を踏んでいる方々、貿易決済などを壁にするのはやめましょう。インターネットでのビジネスは、企業規模によって左右されることのない、知恵の勝負です。勇気を持って一歩踏み出せば、アリババのプラットフォームは世界市場開拓への確かな足がかりになるはずです。

アリババ株式会社 代表取締役社長 CEO 香山 誠あさ出版)など多数。2009年12月に、「人はみんな心の中に“夢のスイッチ”を持っている」というメッセージを込めた『夢のスイッチ あなたの夢の見つけ方』(あさ出版)を上梓。

アリババ株式会社 Alibaba.com Japan Co., Ltd.

代表者 代表取締役社長 香山 誠
所在地 〒103-0007 東京都中央区日本橋浜町
設立 2008年5月30日
資本金 12億2,184万円
主要株主 ソフトバンク株式会社アリババドットコム リミテッド

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