巻頭企画 天馬空を行く

Made in Japanの価値を活かす

アリババ株式会社 代表取締役社長 CEO 香山 誠氏同時に香山氏は、日本企業にはもともと世界で戦うための優位性を持っているという。それが「Made in Japan」という価値だ。

「ジャパンクオリティやクールジャパンと呼ばれる商品を提供するサプライヤーは、世界のバイヤーから非常に信頼を得ています。例えば、東南アジアの新興国で目に入ってくるバイクは、ほとんどがヤマハとホンダ。もちろん日本の製品は他に比べて高く、もっと安く買えるものはたくさんあります。しかし値段の安いものは壊れやすく、メンテナンスが多々必要になる。ならば、多少高くても信頼できるジャパンクオリティを買おうという新興国のバイヤーは多いです」

商品への信頼という利点を生かすには、何よりも「商品をきちんと説明してPRし、バイヤー目線で正しくコミュニケーションすること」が必要だという。それができれば、例え現地に一度も足を運ばなくても世界数十カ国に代理網を構築することができ、さらに地道に3?5年かけて販売チャネルを築けば、売上の半分を海外からの収入とすることも夢ではない。

しかしその実現には課題がある。
「ただ、問題は日本の中小企業がその伝え方を知らないというところにあります」と香山氏。

現在、ワールドパスポートを利用している日本企業(サプライヤー)はおよそ1000社。その9割が、最初「自分たちの商品をどう伝えるか」でつまずくのだという。

「多くの経営者が、日本人に対するのと同じ姿勢でスタートしてしまう。取引相手(バイヤー)が商品の基本知識を持っていることを前提として、日本のホームページやカタログの10分の1くらいの情報量しか出さない。何も知らない新興国相手にそれでは通用しません。サイトでは、製造工程や使い方、材料など商品についてのあらゆる情報を伝えなければなりません」

必要なのは想像力

インターネットでの商売を“自動販売機”のように捉えてしまう経営者が、日本には非常に多いと言う香山氏。その要因は、これまでの日本の商習慣にある。日本の製造業やメーカーの多くは、セールス&マーケティング活動のほとんどを卸や商社に任せていた。つくる、開発するといったノウハウは持っていても、「売る」ための具体的な手法がない。そのため、自らがそのまま世界に出た瞬間、「どう売ったらいいのか分からなくなる」のだという。

「解決方法は簡単です」と香山氏。

「世界で販売してくれる、卸や商社といったパートナーを海外で見つければいいだけの話。ワールドパスポートのバイヤー1800万社は、ほとんどがそういった業種です。製造卸、商社、小売りが9割。ビジネスを継続させるためのパートナーを見つけることができるのです。要は、そのためにネットをきちんと活用し、商品についてしっかり伝えることが必要なんです」

そこで重要になってくるのが想像力だ。実際に展示会に出展することを考えてみれば、それがよく分かると香山氏は言う。

「展示会におけるブース空間の設計やデザインは、会社のブランディングそのものとなり、商品の特性を伝える大きな力になります。展示会に出た企業は、ブースの出展料よりもディスプレイの方により多くの資金を投入し、集客のために様々な工夫を凝らします。にもかかわらず、インターネットになった瞬間にその感覚を失ってしまう。インターネットでは、実際の展示会のように隣のブースが見えません。だからこそ、想像力を働かせることが必要なんです。バイヤーが何を求めているのか、どういった情報が一番必要なのか。写真や動画を使い、初めて見た人でも直感的に理解できるくらいの分かりやすさが求められます。そういった、リテラシーとでも言うべきものが、日本の多くの中小企業には足りない」

「ネットリテラシー」とは、ネットを通じて情報の発信・受信が正しく効果的に行えるノウハウや、おびただしい情報から誤情報や中傷をきちんと識別し、自分の身を守る技術など、ネット上でのコミュニケーション能力全般を指す。

「情報をどれだけきちんと伝えられるか。成功と失敗を分ける分水嶺はまずそこです。伝えた後に反応がかえってきて初めて、コミュニケーションというフェーズに移ることができる。貿易決済などの問題はその次の次、まだまだ先に出てくる問題です」

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