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特殊な業界とはいえ13歳での独立経験を持つ杉田さん。当誌での“経営者インタビュー”という仕事をどのように感じているのだろうか。

杉田 実は私、旅番組のリポーターの仕事が大好きで。ご当地の美味しいものを食べられるのはもちろん、旅先の地に住む人々が、どのように環境に順応しながら生活されているのか。仕事を通じて地元の方の考えや人柄に触れられることがとても楽しくて、そのなかから学び得たことは私の財産になっています。
その経験もインタビュアとしての仕事をするうえで役立つかもしれませんが、ビジネスを通じた聞き手役というのは初めて。ビジネスというくくりで言うと以前、NHKの経済番組に出させて頂いたことがあります。ただし内容は経済学がメインで、専門家の方が新たに制定された法律のことなどを話すのですが、難しくていまいち分かりづらいところもありました(笑)。
今回のインタビュアとしての仕事を通じて強く感じたのは、各経営者の方々が人生を懸けてビジネスと対峙されていて、仕事を成功させるために色々なタイミングや角度から努力されているんだな、ということ。事業を通じて生きていることを実感されているのだな、ということでした。人生ドラマというか、皆さんの生き様が伝わってきて、机上ではない生の経済という、いい意味での凄みを肌で感じます。
私は今、48歳。50代から還暦まで、人生の最終章を飾るためのラストスパートの時期と捉えています。そのなかでいかに自分を高められるか、いかに恥ずかしくない自分でいられるか、新しく取り組めることはないか。そう考えている時期でもあるので、様々な人生経験や価値観を持つ経営者の方々との対談はとても有意義ですね。芸能界という特殊な世界に生きてきた私にとって勉強になることがたくさんあるし、逆にアドバイスを頂いたりして本当にありがたく思っています。

― ご自身が社会で苦労されてこられただけに、共感できる部分も多いでしょうね。ちなみにもし杉田さんが社長だとしたら、どんなタイプでしょう?

杉田 私は長女だし、そもそも社長に向いていないと思います(笑)。たぶん社員を動かすこともできないし、とりわけ社長になりたいという欲求はないですね。それよりも自分自身、タレントとしての肖像権や著作権といった知的財産をどのように管理していくかは一生の課題なので、こちらの分野についても勉強を続けていますよ。

― その意味では個人事業主でもありますよね。ところでこの記事の掲載は3月号。これから社会に出る新社会人に向けて、アドバイスを頂けたらと思います。

杉田 今の時代、すぐに転職されてしまう方も多いみたいですが、あえて「石の上にも三年」という言葉を伝えたいです。私自身13歳で起業に失敗して負債を抱えたあと、芸能事務所に所属したのですが、仕事が多いうえに給料が安くて「これはきつい」と思ったんです。でもそれから3年間、どんなにつらいことがあっても頑張ろうと決めてやりきった。そのときの出会いや経験が今に繋がっているので、逃げ出さずによかったと心から思います。
初めて社会に出て、大変なことや不安なことも当然あると思いますけど、自分が選んで決めた道なわけですから、納得できるまで、せめて3年間はその環境で頑張ってみてほしいですね。お会いした経営者の方々も皆さん口を揃えて「苦しいときほどチャンスがある」とおっしゃいます。とても共感できますね。もし現状がつらかったとしても、「今頑張れば次に繋がる」という思いでやり遂げれば、きっと成長できるはずです。

近年ではダイエットやオーガニックライフについての出版など、美や健康についての取り組みにも積極的。今後の展望も含めて語って頂いた。

― 美や健康への取り組みに目覚めたそもそものきっかけは何でしたか?

杉田 何年か前にTV番組の企画でダイエットして、短期間で痩せるには痩せたんです。だけどリバウンドもあるし、急激に痩せたり表面上だけが変わるというのはすごく危険なことだなと。であれば「生活習慣を見直してみよう」と考えたのが始まりでした。体が資本の仕事をするうえで、それまでの食生活に危機を感じたということもありましたね。それで実際に勉強していくうちにオーガニック野菜に辿り着いて。オーガニックを意識した食生活に変えたことで、心身ともに若返れたような気がします。今は農業に興味を持つようになりました。

― それと幸福王国、ブータンでの生活も影響を受けたとか。

杉田 はい。東日本大震災のあとに1週間ほど滞在したブータン王国でも刺激を受けました。ブータンは米が主食だったり民族衣装が“きもの”にそっくりだったり、日本に似ているところがあるんですね。ただ決定的に違うのは、日本は経済的な豊かさを求め、ブータンは精神的な豊かさを求めてきたという点です。自然が豊かなブータンは食糧自給率が90%、農業従事者が約7割。衣類は自然のものを手織りしていますから、食や衣は最終的に土に還ります。とてもエコロジーですよね。一方で消費社会の日本はものに溢れ、ゴミばかりが増えていく。だから今後、日本がよりよくなっていくためには、ブータン的な発想が必要なんじゃないかと思うんです。

― 確かに今の日本人には「心の豊かさ」が足りないとよく言われます。

杉田 私の好きな言葉は「真・善・美」。“真に善いものは美しい”という意味です。おそらくブータンの方々も皆さん、本質的にそう感じているのではないでしょうか。自然のものは美しく、やがてゴミになるような素材で安価につくられたものは偽物、という感覚です。経済と精神の発展、どちらを重視するかにもよりますが、国民総幸福量がどの国よりも高いブータン人の意識は、やはり尊いし美しいと思いますよね。
「幸福」という意味では、経営者の方々とお会いするなかで、皆さんがそれを無意識に追求されているような印象を受けました。自らの理想を求めて独立されて、それがビジネスとして成り立っていること自体、素晴らしいことなのだなと。結果的に「ビジネスの成功」=「幸福」という図式があるので、希望が持てるというか、皆さんからパワーを頂いているという印象を、インタビュアとしての仕事を通じて感じています。

― 「真・善・美」というのは、本物が評価される昨今の日本社会にも通じるいい言葉ですね。

杉田 そういう価値観は子役時代から、本当にいいものを追求するスタッフの方々に恵まれたことで養われたのだと、今になって思いますね。昔のものだろうと、本当にいい作品には色あせない感動がある。「真・善・美」。これが、子役時代から現在に至るなかで得た結論かもしれません。この言葉を大切に、これからも女優業をはじめとする色々な仕事にチャレンジしたいと思います。

― では最後の質問をさせてください。もし、子役時代の自分に声をかけるとしたら?

杉田 私は今でも子どものころと変わってないというか、その延長上にあると思うので・・・「疲れるから頑張りすぎないで」って言うくらいですかね(笑)。もちろん頑張るのも必要ですが、それ以上に大切なのは、現状を楽しむことではないでしょうか。私はどちらかというと、人生のそれぞれの場面において、楽しみを見いだすのが得意なんですよ。

対談中は一貫して自然体、自分の言葉とタイミングで真剣に語ってくださり、最後に「人生を楽しむのが得意」と語られた杉田さん。そうした裏表のない人間性や大らかな姿勢が、40年にわたり第一線で活躍してこられた秘訣だと感じた。心の美しさに比例して、歳を重ねるごとに見た目も美しくなっていく杉田かおるさんの活躍に、これからも注目したい。

(取材 : 2013年1月)

杉田 かおる

すぎた・かおる/1964年生まれ、東京都新宿区出身。7歳でドラマ「パパと呼ばないで」に出演し子役デビュー。中学時代には「3年B組金八先生」で妊娠する中学生を演じて話題に。女優として活動を続ける傍らバラエティ番組に出演、2004年には24時間テレビ内の企画で100kmを完走した。近年は美容や健康、農業などに興味を深め、自然農にも挑戦。著書に「杉田かおるのオーガニックライフ」、写真集「REBORN」などがある。
杉田かおるオフィシャルサイト
http://www.sugitakaoru.net
杉田かおるオフィシャルブログ
http://ameblo.jp/sugitakaoru

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