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役者は作品の一部分

──それが、その後の役者人生に大きな影響を与える出来事だったと。そうした経験を積まれる中で、役者としてのターニングポイントはあったのでしょうか。

 役者として10年以上活動した後、30歳の頃に出演した舞台の仕事も大きかったですね。それを通して、セット1つとってもスタッフが転換してくれなければ次のシーンに移れないですし、照明を当ててくれる人、音声を拾ってくれる人、何よりそれを観に来てくださるお客様がいて初めて舞台が成り立つということに、改めて気付かされたのです。つまり、役者はその中の一部、“a part of them”なんですよ。
 それまでは、「頑張っているのは自分だ」と、どこか傲慢に考えていました。しかし、1人では何もできないという意識に切り替わり、「演技について指摘されて悔しい。もう言われないように頑張ろう」という17歳の時からのやり方に、「楽しみにしてくれるお客様と、一生懸命サポートしてくれるスタッフのために頑張ろう」という気持ちが加わりました。

──舞台を中心に考えることで、ご自身を俯瞰されるようになったのですね。

 そうですね。演じることの目的が、台本に沿って監督の望むように演じることから、周りの人の瞳や心を動かすことに変わったんだと思います。1人の人間が、多くの人々を喜ばせたり、楽しませたりすることができる─それが役者としてのやりがいであり、僕自身の生きがいにもなっています。何より、こうやって頑張れるのは、日頃から支えてくれるファンやスタッフ、そして事務所の社長の思いがあるからなんです。いつか、社長の夢であるオリジナルの音楽と台本の作品を上演することで、恩返しができたらと密かに思っていますよ。
 
自分を見つめ直す「書」との出会い

──さて、松村さんは書道、剣舞、詩吟など特技が幅広く、中でも書道は東京新聞社主催の第17回東京書作展で内閣総理大臣賞を受賞するほどの一流の腕前だと伺っています。書道はどういったきっかけで始められたのですか?

 子どもの頃から祖母に字を丁寧に書くように教えられていて。年賀状を書いても字が汚いと書き直しになりますし、上手に書けるととても褒めてもらえたんです。その「字を上手に書けば褒めてもらえる」というのが、僕が書道に興味を持ったきっかけでした。高校生の頃は書道部で活動していたこともありましたが、その後、本格的に学び出したのは30歳の頃。書道家としても人間としても尊敬する師匠の元で、2年間学びました。

──お祖母様や師匠の存在など、松村さんは人との出会いに恵まれていらっしゃるのですね。書の師匠からはどういった指導を受けられたのでしょうか。

 師匠は技術的なことよりも、書に向かう気持ちを重要視する方で、「書は自己顕示欲の表れであり、失ったものから得られるエネルギーが書になる」ということを教えてくれました。そこで、僕も自分の内面と向き合って、溢れ出てくる何かを見つけるように努めたのです。具体的には、書に向かうときは電話を止めて、家族とも一切会話をせずに、とことん自分を追い込んで書くようにしています。

──そこまでして書に熱中される松村さん。書というのは、ご自身にとってどんな存在なのでしょう。

 書は、素の自分を出して表現をするという点で、役者に通じるところがあると思うんです。極端に言えば、自分の根底に潜むエネルギーを包み隠さずにさらけ出し、「お前はこうなんだ、勝負してみろ」と言われているようなもの。それと同時に、役者として学んだことを書にフィードバックできることも僕にとって魅力的で、何事もつながっていき、無駄なことなんてないと感じているんです。
 
インタビュアとしての思い

──松村さんは、長年にわたってカンパニータンクのインタビュアを務めてくださっています。これまでに、多くの中小企業経営者の方々からお話を聞かれてきた中で、どういったことを感じられましたか?

 インタビューをさせて頂いた経営者の方々は、縁を重んじて相手を思いやることを大切にされている方ばかりで、いつも感心させられています。若手経営者の方々も、日本の未来のことをよく考えていらっしゃるんですよ。
 最近、僕も後輩に指導をする立場になってきたと感じることが多くて。後輩に求められたことに対して、自然に応えるのが理想だと思っているのですが、インタビューでお会いする経営者の方々のように、自分が受け継いできたものは確実に伝えていきたいとも思っています。自分が一生懸命やっている姿を後輩が見て、何かしら響いて原動力になったら嬉しいですね。

──経営者の方々へのインタビューの際に、一番聞きたいと思っていることは何でしょう。

 心を動かされたことの源を聞いてみたいですし、仕事のやりがいの話などを伺うことで、生きる目的を知りたいですね。ストレートに聞いても答えづらいと思うので(笑)、インタビューの中でうまく引き出していけたらと思っています。

──中でも、印象に残っている経営者の方はいらっしゃいますか?

 逆境から事業を立ち上げられて、なかなか軌道に乗せられない中でも諦めずに、「負けていられない」と、社員と家族のために頑張り続けている方がいらっしゃったんです。周りの方への愛情を原動力に、不屈の精神で立ち向かい続けるその姿勢に心を打たれました。

──最後に、これからビジネスに挑戦される方々に向けて、メッセージをお願いします。

 仕事は自分と社会の双方のためになるべきだと思うんです。経営者の方々の一挙手一投足やチャレンジ精神は、社員をはじめ周りの人々を勇気付けているはずですから、大いなる夢を持って、明るい未来のために前進して頂きたいです!

(取材:2018年5月)

松村 雄基

まつむら・ゆうき / 1963年生まれ、東京都出身。高校在学中にテレビドラマ「生徒諸君!」の沖田成利役でデビュー。1980年代からは大映ドラマの常連俳優として、TBS「スクール☆ウォーズ」など数多くの作品に出演する。30歳の時に五月女玉環に弟子入りして書を始め、第17回東京書作展(東京新聞社主催)にて内閣総理大臣賞を受賞。俳優業と並行して、書家・剣舞家としても活躍中。
■ 公式ホームページ
https://www.matsumura-yu-ki.net/

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