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女優 宮地 真緒
兵庫県・淡路島で生まれ育ち、15歳で芸能界に入った女優・宮地真緒さん。17歳で務めたNHK連続テレビ小説「まんてん」の主演をはじめ、映画やドラマ、舞台で幅広く活躍を続けている。また、大のマンガ・アニメ好きである他、2014年には防災士の資格を取得するなど、多分野へ高い関心を抱く。そんな宮地さんの女優としての哲学を伺うとともに、「COMPANYTANK」のインタビュアとしての心構えに迫る。

インタビュー・文・編集:カンパニータンク編集部

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朝ドラヒロインとして女優デビュー

──まず、宮地さんはどのような子ども時代を過ごしてこられたのかを教えてください。

 幼い頃から、常にテレビを見ているようなテレビっ子でした。ドラマも歌番組もバラエティも、もちろんアニメも。今は子ども向けのアニメと大人向けのアニメが二極化してしまっていますが、当時は家族みんなで楽しめるアニメが盛んな時期でした。物心付いたときには「ドラえもん」や「ドラゴンボール」がありましたし、小学生の頃に「セーラームーン」や「ちびまる子ちゃん」の放送がスタートして。アニメを見て曜日感覚を掴むほど夢中になっていましたね。そういう時代を過ごしていなかったら、今もこんなにアニメ好きにはなっていなかったかもしれません。

──それでは、芸能界に入ったきっかけというのは?

 漠然と芸能界に対する憧れは抱いていましたが、夢物語だと思って誰にも相談していませんでした。高校1年生のときにたまたま目にしたオーディションも、周りに内緒で応募したんです。でも、地区予選まで通過してしまって。最終選考までは通らなかったのですが、それがきっかけで現在の芸能事務所にスカウトして頂き、芸能界デビューすることができました。それからグラビアやエキストラの仕事を始めて、その一環としてNHK連続テレビ小説「まんてん」のオーディションを受けました。すると思いがけず主演に抜擢されて、演技の経験もほとんどないまま“朝ドラヒロイン”になることに。

──初めての本格的な演技、しかも長期のドラマでの主演に挑戦してみて、いかがでした?

 周りは熟練の役者さんばかりですから、迷惑をかけてはいけないというプレッシャーが大きかったですね。セリフを飛ばさないように、NGを出さないようにと思って毎日必死で、素の自分に戻る余裕もありませんでした。役に入ったまま1年弱を過ごしたのですが、朝ドラが終わるとともに、台本があって「次」が常に見えていた生活も終わってしまい──台本なしにどうやって生活するのか分からなくなったんです。私は昔から「ああいう人だったらいいな、こういう人だったらいいな」と想像しながら生きてきたというのもあって、役に没入しやすいタイプだったんでしょうね。でもその1ヶ月後にまたドラマに出演させてもらうと、改めて「演じることが好きだ」と実感したんです。
 
舞台を機に演技を客観視

──朝ドラでは苦労されたものの、その経験は大きかったのですね。

 そうですね。朝ドラをやっていなかったら今は女優をやっていないでしょうし。今思うととても大変な仕事ですけど、当時はそう思う暇はなく、ただただ必死でした。また、それ以上にミュージカル「ピーターパン」に出演しているときのほうが大変でしたね。歌もダンスもやったことがありませんでしたし、生なので失敗は許されません。「舞台には魔物が棲んでいる」なんて言いますが、ただならない緊張感が漂う現場です。それに、私は周りから飄々としているように見えるみたいで、自分は一生懸命やっているのに「もっと必死にならないと」と言われることもあって。そうした客観的な見え方と自分の気持ちとのギャップを感じたのがつらかったですね。

──映像作品とはまた違った難しさがあったのだと思います。その苦境をどうやって乗り越えられたのでしょう。

 なんとか稽古する中で、自分の演技を俯瞰で見られるようになりました。例えば、映像作品では自分の感覚で動いて立ち位置が多少ずれてしまってもカメラさんが追ってくれますが、舞台では立ち位置を守らなければ照明は当たらずお客さんから顔が見えませんし、客席に背を向けて話すと声はお客さんに聞こえません。そうした舞台上での物理的立ち位置はもちろん、自分の演じる役は作品の中でどんな立ち位置にあるのかという見え方──今まではあまり意識してこなかった部分を、お客さんの目線に立って考えられるようになったんです。私は実力のないままドラマに出て、名前だけが一人歩きしている感覚がありましたが、この舞台を経験し、演技の基礎を身に付けたという自信を得ることができました。

 
演じる役の一番のファンになる

──役者さんによって役をどこまでつくり込むかは異なると思いますが、宮地さんはどんなタイプですか?

 ガチガチに役をつくるのではなくて8割程度完成させた状態で現場に臨むようにしています。その2割程度の余白を残すことで、相手とやり取りする中で湧き上がった感情や、「試しにこういうことをしようか」といった監督の指示を役に反映させることができるんです。
 そして今は、映像作品の場合でも舞台作品の場合でも、役の状態に入りっぱなしにはしないようにしています。こまめにスイッチを切り替えて、空気を入れ替えるようなイメージですね。そうすることで、演じている自分を少し客観的に見つめて、立ち位置が確認できると思っていて。ですから、例えば舞台では、一度袖にはけたら素の自分に戻って、再度舞台に上がる3秒前くらいにスイッチを入れています。難しいシーンの場合はその少し前に自分のタイミングでスイッチを入れて、エンジンを温めているんです。

──すると、その役に入るために、どのように役づくりをしているのでしょう。

 私の中で決まった役づくりの方法というのはありませんが、今まで読んできたマンガや小説、見てきたアニメの登場人物を自分の頭の中にストックしてきた「キャラクター図鑑」からぴったりの役を探すようにしています。もちろん原作がある作品の場合はそれを読み込んでイメージしますが、オリジナル作品の場合は「このマンガのこのキャラクターみたいな人かな」と想像してイメージをつくりあげるという感じです。その際、どんな役も、みんな色んな理由があって色んな生き方をしているのですから、きちんとその役を好きになった上でつくり込むようにしています。そうして、好きになった役を演じることで、理解をさらに深められますから。言わば、友達をつくるような感覚で役づくりをしているんです。

──マンガ・アニメ好きの宮地さんだからこその役づくりの仕方ですね。ちなみにマンガはどのくらいお持ちですか?

 数えたことがないので具体的には分かりませんが、自宅の物置部屋がマンガで埋め尽くされていて・・・3ヶ月に1回は整理するようにしているんですけど、処分すると空いたスペースに新しいマンガを入れてしまって(笑)。アニメは新しい作品の放送が開始すると全てチェックしていて、1日に2、3本は見ています。家に帰るとテレビを付けてアニメを流しているという感じです。

──「キャラクター図鑑」のストックもどんどん充実しますね。昨今、マンガ・アニメの原作が多く実写化されていますが、それについてはいかがですか?

 役者が作品を読み込んでいなくて、キャラクターへの愛が足りないと、お客さんはそれを感じ取って冷めてしまいます。その一方で、作品やキャラが本当に好きだと伝わってくる演技は、それほどうまくなくても受け入れられるもの。それを原作ファンとしても実感していますから、私が原作のある作品を演じるときは、「私がこのキャラの一番のファン」と言えるほど好きになることを心がけています。私よりもそのキャラが好きな人がいるのであれば、その人が演じたほうが良いでしょうし、原作にも見ている人にも失礼になりますから。

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