膨大な質問書への回答作業から解放
今岡 不勉強ながら、私は今日に至るまでESGのことを知りませんでした。事業としてどのようにESGを推進しようとされているのかぜひ教えてください。
伊藤 社名のestomaは、当社で開発したESG開示支援・管理サービスの名前でもあります。ESGは企業への投資判断に使われていて、日本でも海外投資家が注目する東証プライム市場の企業には、気候変動リスクなどESGに関連する情報の開示が求められるようになりました。しかし、外部の評価機関から企業に送られてくる質問書が膨大で、それに回答する作業に追われて肝心の環境対策を練れなくなっているのが現状で――そこで、ESG開示の煩わしい部分を自動化するツールを企業に提供することで、カーボンニュートラルや水危機といった差し迫った課題への取り組みに本腰を入れられるようにサポートするのが、当社の一番の役割なのです。
今岡 社会への影響力を持つ会社が社会的な課題に取り組めるよう支えるサービスなのですね。手応えはいかがですか?
伊藤 2022年7月にサービスを開始して、説明にうかがった企業様からは良い反応をいただけています。最近、ESGは盛んに目にするワードになりつつあるものの、投資判断の材料であるということもあり、証券会社や機関投資家のような「お金」に注目している人たちだけが関心を示している雰囲気もあって。1、2年経てばESGの流行は終わるでしょうが、気候変動は待ってくれませんから、私たちのように本当にやる気がある人間が根気強く続けることが重要なのです。
みんなが笑って暮らせる社会を
今岡 自らの目標をしっかり定められ、そこに向かって突き進んでいらっしゃる伊藤社長。あらためて、社長を突き動かしている原動力が何なのかについてお話ししていただけますか?
伊藤 以前、インターンでベトナムへ行く機会があり、スラムで暮らす貧しい子どもたちの姿を見た時、「自分たちの持っている技術を、目の前にいる困っている人たちのために使いたい」という思いが湧いてきたのを覚えています。それ以来、哲学や社会学などの本を読みつつ、どうすればこのような問題を乗り越えられるのかを考え続けてきました。まだ明確な答えは見つかっていませんが、まずは環境から始めてみようと、試行錯誤しながら前へ進んでいるところです。
今岡 当時の体験が、伊藤社長にとってよほど衝撃的だったのでしょうね。そうした強い思いを秘めながら、これから先どんな挑戦をしていきたいですか?
伊藤 1つは、当社のサービスを通じてESGの考え方が実りある方向へ広がっていくようにすること。そしてもう1つ、新しい株式会社の形をつくりたいという気持ちがあります。株主の利益だけを優先する組織ではなく、社員がただ安定を求めて居続ける場所でもなく、同志と呼べる仲間とひた向きに目標を目指し、余剰資金が生まれたら真っすぐ社会に還元できるような、非営利型の株式会社を根付かせることができたらおもしろいと思うんです。非営利といえばNPOがありますが、しっかりお金を稼ぎつつ、社会貢献もする株式会社がいつか当たり前になるように、(株)estomaがモデルとなって今までにない会社の姿を見せていきたいです。
今岡 今ある会社の形を変えていくことも、ESGの目標と合致するのでしょうね。では最後に、読者の方に向けてメッセージをお願いします。
伊藤 当社の事業・取り組みが、人類の希望になればと思っています。私たちと一緒に地球環境やカーボンニュートラルなどについて考え、1つずつ解決していくことで、みんなが笑って暮らせる社会を共につくっていきましょう!

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GUEST COMMENT
今岡 真訪
今、地球が直面している気候変動や水不足などの危機について熱心に教えてくださり、学校の授業を受けているような感覚で思わず聞き入ってしまいました。本当に勉強になりましたし、伊藤社長のような若い方が地球規模の問題に真剣に取り組んでいらっしゃることを知って、私自身もっと関心を持たなければと気が引き締まりましたね。「ESG」、しっかり覚えておきます!