地方公務員として26年あまり勤務するも、最後の8年間はうつ病のために休職を繰り返す。役所を退職してからうつ病を克服し、2021年4月に「やなぎ社会福祉士事務所」を開業。福祉に関わる人たちへのインタビューを行うWebカフェを構想するなど、斬新な取り組みで地域の絆を取り戻すため、「生きてるだけで丸もうけ、生きてるだけで毎日貯金が増える」を人生の教訓に走り続けている。

やなぎ社会福祉士事務所 | |
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住所 | 〒355-0335 埼玉県比企郡小川町木部400 |
URL | https://yanamaro-office.com/ |
埼玉県比企郡小川町に事務所を構える「やなぎ社会福祉士事務所」。長い間うつ病を患うも元気を取り戻し福祉の道に進んだ柳代表は、地域に貢献しようと人生のすべてを弱者のために捧げている。その人柄に接し、タレントの矢部美穂さんも「本当にありがたい存在!」と感激の面持ち。「幸福度の高い社会をつくる仕事がしたい」という理念を掲げる代表にじっくり話をうかがった。
ボランティアを行う社会福祉士事務所
矢部 まだ設立して間もない「やなぎ社会福祉士事務所」さん。まずは、柳代表が福祉の道を志すまでの経緯から教えていただけますか?
柳 私は以前、地方公務員として役所に勤務していました。異動で福祉関連の部署に在籍したこともあるので、多少なりとも知識や経験はありましたが、いずれ自分が福祉の専門職に携わることになるとは考えてもいなかったんです。ところが2018年、親の介護や私自身の病気で26年5ヶ月の公務員生活に別れを告げることになりました。しばらく将来進むべき道を模索していた中、2020年11月頃に「今後は福祉に関わる人材がいっそう求められるはず。私は福祉の仕事でやっていける、大丈夫、間違いない」と考えるようになり、以前取得していた社会福祉士の資格を生かして2021年4月に当事務所を立ち上げた次第です。
矢部 それは大きな方向転換ですよね。実際に事務所を立ち上げられてみていかがでしたか?
柳 最初の1ヶ月はほぼすべてあいさつ回りでした。近隣の市町村を訪ね、100人以上の方々と会いましたね。具体的には、市町村役場や社会福祉協議会、地域包括支援センター、介護事業所や施設などに赴き、自分でつくったパンフレットを配っていったんです。
矢部 なるほど。それでは「やなぎ社会福祉士事務所」さんの主な業務内容について教えてください。
柳 社会福祉士の仕事は多岐にわたり、介護・認知症・障害などさまざまな問題の解決にあたっています。しかし、当事務所の最大の特徴は無償のボランティア活動に全力を注いでいる点なんですよ。例えば、高齢者や障害がある方々の見守り、ゴミ出しや買い物の代行、外出時の送迎や電球交換など、地域の方々の困りごとを無償で解決しています。「無料でやってもらうのは悪いからお金を払う」とおっしゃる方も多いのですが、お金をいただくことはお断りしているんです。
矢部 これは驚きました。柳代表がボランティア活動にそこまで力を入れていらっしゃるのはなぜなのでしょうか?
柳 私は、これまでの人生で幾多の苦難を乗り越えてきました。そうした経験から得た知識や技術で地域に恩返しをしたいんですよ。とはいえ、もちろんボランティアだけで食べていくことはできません(笑)。現在、当事務所はボランティアスタッフを募っているのですが、地域貢献活動を彼らに任せられるようになったら、私は介護付き温泉旅行の業務に力を入れるつもりです。「介護付き旅行」は、高齢者や障がい者の介護と旅行のサポートを両立させる外出支援サービスですが、私は温泉に特化した介護付き温泉旅行業者として活動したいと思っているんですよ。というのも私は温泉ソムリエでもありまして、30年前から年間100ヶ所以上も通うほど温泉が大好きで、どの温泉がバリアフリーに対応しているか、設備はなくてもヘルパーが一緒にいれば利用できるかなど、さまざまな知識を蓄えてきたんです。そのような知識を福祉に生かし、大勢の方に喜んでいただけたら最高ですよね。車椅子でも行けるところや、受け入れ可能な温泉施設を探してそこに訪れるのではなくて、本人が本当に行きたいと思っている温泉に行くにはどうすればいいのかを一緒に考え、介護をしながらその温泉旅行に同行できればと考えています。
矢部 柳代表がおっしゃる通り、温泉を利用したくてもなかなか願いがかなわず残念に思っている方も多いはずですし、高齢者や障害がある方を笑顔にするようなとても魅力的なお仕事だと思います。
アイデアがどんどん膨らみますね!
柳 はい。その他にも、認知症などで判断力が十分でない方の財産管理などをしていきたいとも思っています。また、それに伴う見守りから、1人暮らしで身寄りのない方が亡くなる際の看取り、あるいは死後の事務や片付けまで取り組んでいくつもりです。さらには地域限定で、福祉関係のお仕事をされている方や介護のサービスを受けている方、病気を抱えて悩んでいる方、障害があって自宅から出られない方たちにインタビューをする形でお話を聞かせてもらい、それをベースに福祉コミュニティカフェ「虹のカタリ場」をつくるという構想もあります。