インタビュー

スペシャリスト

原田 その技術を用いると、具体的にものづくりはどのように変わるのですか?

中谷 例えば、航空機などに使われるジェットエンジンは何千もの部品が組み合わさってつくられるため、大型で、かつ重量もありました。しかし、それが3次元プリンターであれば、コンピュータが膨大な量のデータを計算して立体をつくりあげ、従来よりもずっと小型で頑丈なものができあがるのです。この技術はあらゆる業界で注目されていて、身近なところであれば、車いすや自動車の部品などでも徐々に取り入れられています。
 中でも私が注力するのは、食品製造の3次元積層造形技術の開発です。

原田 ジェットエンジンや自動車をつくるのと同じように、食品がつくられるということでしょうか?

中谷 ええ。世の中のものはすべて元素や分子でできているわけですから、デジタルによる分子レベルのものづくりという点では、技術的にそれほどの違いはありません。現在はこの技術を用いた開発を、各研究所の協力を得ながら進めているところです。最終的には、水やビタミン、タンパク質がストックされていて、ボタン一つで寿司や肉が出てくる食品プリンタをつくろうと思っています。

原田 それは、味や食感などもコントロールできるものなのですか?

中谷 もちろんです。味や温度や食感は、舌が感じ取るもの。味を再現するために、甘みや塩味、酸味などを組み合わせていけばいいのです。この技術を生かし、舌に最初に触れる部分にだけ塩味を添加して、他は塩味を取り除けば、味を変えずに減塩食なども実現できるでしょう。

原田 そんな夢のような機械が普及するなんて、想像もつかないですね。

中谷 例えば、原田さんも20~30年前には、電子レンジがここまで当たり前のものになるとは想像されていなかったのではないでしょうか。同様に、冷蔵庫や炊飯器の代わりに、食品プリンターを置く日がきっと来ると思うんです。
 現在、日本では食品ロスの問題が深刻化し、世界でもいずれ人口爆発が起こり、食料供給が追い付かなくなると言われています。この食品プリンターが完成すれば、そうした問題も解決できるのです。すべての食べ物をこの食品プリンターで供給する必要はありません。それでも地球環境を踏まえ、少しずつシフトしていかなくてはならないと思っています。

原田 壮大ではあるものの、非常に理にかなっているお話ですね。同様の研究を進めている国は、他にあるのですか?

中谷 いえ、まだほとんどないでしょうね。私がこの技術研究に自信を抱く理由は、日本が食に強みを持っている国であること。日本食という素晴らしい食文化がある国こそ、食の研究の先端をいくべきだと思うのです。

中小企業の一歩が変革のカギ

原田 最後に、今後の展望についてもお聞かせください。

中谷 当社の理念は、“次世代ものづくりで未来を面白く”。これからも、日本の企業が技術を導入するサポートを続け、世界が変わる一助となりたいです。
 また、日本は99%以上を中小企業が占める、世界的にも珍しい国です。新しい技術開発を進めるとき、大きなメッセージを打ち出すには大手の力が必要であるものの、実際に育てていくのは中小企業で働く方々です。だから、ものづくりにおけるスクラップアンドビルドの発想を、もっと中小企業に広めていきたいですね。会社や事業を次の時代に継承していくためにも、従来のやり方を切り替える一歩を、一緒に踏み出しましょう。

GUEST COMMENT

原田 伸郎

「意見する前に、まず自ら手を汚す」ことを貫いてこられたという中谷代表。だからこそ、実際に会社で働く方々の立場に立った実践的な提案ができるのでしょうね。日本のものづくりの弱みも強みも冷静に分析され、そのうえで強い情熱をお持ちの代表であれば、日本の未来を明るいものにしてくださることでしょう。私も陰ながら応援しています!

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