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注目企業インタビュー

16歳から水道設備工事一本の叩き上げ。1996年、弱冠20歳にして原岡設備工業を創業する。順調に事業を拡張し、2003年には法人化を果たす。3年後には一勝負と、今はその基盤作りに全力を傾けている。その男気溢れる仕事振りには、業界からの人望も厚い。

有限会社 原岡設備工業
住所 〒245-0018 神奈川県横浜市泉区上飯田町250-4
TEL 045-804-7686
FAX 045-804-7681
神奈川県知事許可(般-16)第69484号

「株価の上昇」・「輸出の増加」今日、日本経済は回復期へと向かっている。しかし現場では「コストの上昇」・「就労時間の長大」と、まだ不景気による閉塞感も拭い難い。そのような現状の中、力強く社員を牽引し、自らの仕事へとただ一途に取り組む漢がいる。現場の人望を一身に集めるその魅力に、女優の岡安由美子さんが迫った。


親方のおかげで

岡安 原岡社長は16歳からこの業界に入り、20歳での独立とお聞きしましたが、若くしての独立に不安はありませんでしたか。

原岡 実は最初に入った会社で1年目ぐらいの時には、もうこれは自分1人でできるなという手応えがありましたので、20歳で独立しようとすでに決めていました。もちろん、不安が全く無いわけではありませんでしたが、20歳で全てを完璧にこなすことができなくても、他人に聞くのは恥ずかしいことではないですよね。利口な振りをしていたら、誰も教えてはくれませんけど、知らないと正直に言えば、皆が手取り足取り教えてくれます。周りの方にもかわいがって頂いて、知らないことは、どんどん教えてもらいました。

岡安 そこからスタートされて、原岡社長はまさに現場一筋からの叩き上げですよね。修行時代はどのように取り組んでいたのですか。

原岡 最初の会社に入社して半年ぐらいのとき、親方に「自分1人で家を一軒やらせてくれ」と頼み込んだんですよ。まだ運転免許も無いのに(笑)。そこで朝、親方に作業車と自分を現場まで運んでもらって、1人で一軒の水道設備を全てやらせてもらいました。

岡安 入社してたった半年なのに、それは原岡社長がそれだけ見込まれていたということでしょうか。

0388t01原岡 その親方は理解がありましたからね。そこは本当に感謝しています。でも、お客さんは土地も含めて何千万円も出してその家を買うわけですから、これは失敗できないなとすごく緊張しましたね。ミスが決して無いように、少し完成するたびにテストの繰り返しで、作業が終わってもずっと自分で作成した仕事のハウツーをまとめたノートとにらめっこです。家に帰る暇もありませんでした。最後に水を張ってテストする際には、一旦家に帰ってもまた夜中に不安になって見に行って、次の日の早朝にもまた見に行ってと、当時のことは今でもよく憶えていますね。

岡安 それではたった一回の施工でも、原岡社長にとってはものすごく大きな経験になったでしょうね。その親方も、それを分かって一人でさせてくれたのかしら。

原岡 そうでしょうね。すごく立派な親方でした。おかげで次に入社した会社でも実力を認めてもらい、高い給料を貰ったときには、そこで稼いだ給料でその親方に届け物を買って持っていきましたよ。「親方のおかげで、こんなに金稼げたよ」ってね。

お金では直らないもの

岡安 従業員も徐々に増えて、3年前には法人登記。順調に会社も進行していますね。

原岡 以前勤めていた会社の社長が高齢で会社を畳むことになりまして、困っていた従業員を当社で受け入れるため数名雇用して、徐々に今の形になりました。最初に働いていた従業員はもう独立していますよ。他の社員にもどんどん独立するように言っています。

岡安 でも、独立するということは、商売敵になるわけですよね。

原岡 もちろんそうですけど、自分の若い衆だった人間を敵にしてもしょうがないじゃないですか。従業員でいるよりも、独立した方が視野も広がるし、稼ぎもいい。自分がそういう考え方だったから、従業員にもそう伝えています。

岡安 そう言ってもらえたら、従業員にとっても、独立のための発奮材料になるでしょう。では、他には普段、原岡社長からスタッフに言っていることはありますか。

原岡 私は従業員が間違えたり、ミスをするのは構わないと思っています。ミスをするなと言ったところでミスはしますし、間違えるなと言っても間違える。もちろんなるべくミスを直そうという気構えは必要ですが、今日の明日で直らないからといって、すぐクビにするということは決してありません。でも、現場で会った時の挨拶や、最低限の礼儀、そこだけは必ずしっかりするようにと言っています。人間同士が仕事をしている訳ですから、人間関係と会話だけはしっかりできないと。作ったものは壊れても、お金を掛ければ直すことができます。でも、人間に関わるものが壊れたら、お金を掛けても直らない所があるじゃないですか。お金を掛ければ直るものなんてどうにでもなるものなんですよ。

岡安 何よりも人間関係を重視すると。技術が全ての職人さんの世界で、なんだか意外な気もします。

原岡 確かに、私もこんな色の付いた眼鏡を365日掛けて、ガラも悪いし、口も悪い。そんな私たちが仕事を貰うためにどうすれば良いかとなると、これはもう仕事の質で売るしかないんです。ですから技術力には自信があります。でも、それでも当社の従業員は皆が営業マンですから、それぞれが評価されてこそ仕事も信頼して任せてもらえるんです。
仕事の技術に関しては車の運転と同じで、毎日やっていれば勝手にできるようになるんです。そして仕事だけできるようになると、「俺はもう一人前だ」と自分で思い出すんですよ、挨拶もできないのに。だから私は挨拶がしっかり出来るようになるまで仕事は一切教えません。その代わりに、元請けへの対応や、仕事への取り組み方などは何十時間も話し合いますけどね。

岡安 確かに、私たちの業界でも挨拶はとても大切で、それが上手くいかないだけで大きなミスを犯すより、よっぽど大変な結果を引き起こすこともありますね。

原岡 もちろん何度もミスを繰り返されるのも困りますけどね(笑)。従業員も「ダンプをぶつけた」とか、「門を壊した」とか、大失敗した時は震えながら報告に来るんですよ。でも、私はそういう時は怒りません。もちろん本当は怒りたいんです。でも、「これは絶対に怒られる、言い訳できない」と、向こうが思っている時は怒らない。これは自分にもそういう経験があって、怒られなかった時はありがたかった。色々な人と知り合う中で、いいなと思うところは自分でも出来るようになりたいんですよ。

必ず言いに行くから

岡安 原岡社長と話をしていると、男気に溢れて、さぞ従業員の方からも慕われているのだろうなと感じます。

原岡 いえ、結構こき使いますし、怖がられているかもしれませんよ(笑)。でも、今は小さい会社だからこそアットホームにやっています。会社で食事をするときは、材料屋さんから従業員の奥さんや子供まで連れていきます。やっぱり従業員や業者さんなど、助けてくれる人はとても大切ですからね。若い衆が他社の職人さんとトラブルを起こすことも、時にはあるじゃないですか。その時には「自分で始末が付けられないことについては絶対に手を出すな。でも、お前が文句を言いたいことがあるなら、俺が代わりに現場まで行ってきてやるから。必ず言いに行くから。」と伝えています。本当に自分の従業員は大切なんですよ。

岡安 原岡社長はまさに「男のハート」を持っていますね…。厳しいことを言っても、本当に従業員想いだということをすごく感じます。社長の下で働ける従業員は幸せですね。では、今後はどの様な会社を作っていかれるのですか。

原岡 実は、独立した20歳の頃から、33歳までは今後より一層成長するための準備期間だと考えていました。3年後、33歳になった時に勝負を掛けるために、今は会社を少しずつ大きくしながら基盤を固めていかなければいけません。私もスタッフと共に少しずつ成長を重ねて、3年後は新たなスタートラインに立って頑張っていきたい。水道設備だけじゃなくても構わない。高齢化社会を向かえ、リフォームは需要が増えてきますから、水周りの技術を活かして手掛けていきたいと考えていますし、新しい仕事にもどんどん飛び込んで、勢いを持って進んでいければと思っています。

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GUEST COMMENT

岡安 由美子

気風の良さ、一本筋の通ったその態度、原岡社長はこの上なく男気に溢れた方です。厳しい表情の影には、従業員やお取引先など、周囲に対する愛情が色濃く浮かんでいました。そのことに対しても「べつに返してもらおうと思ってやるわけじゃない。」と語っていましたが、その一見ぶっきらぼうな、町の頑固親父のような側面も(笑)社長らしくてとてもステキですよ。その魅力が今の信頼に繋がってきているのでしょう。ご苦労も多いかと思いますが、3年後の更なる飛躍のために、これからもその熱い志を持ってがんばってください。私も応援しています。

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