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コラム

EVENT NEWS Inter BEE 2017

「新たなメディアの可能性を世界に伝えよう。」
最先端の放送技術に迫る

 

出展者数・登録来場者数共に過去最多を記録した、「Inter BEE 2017(第53回 2017年国際放送機器展)」。「新たなメディアの可能性を世界に伝えよう。」をテーマに開催され、メディアコミュニケーションとエンターテインメントの最新テクノロジーが一堂に会した。放送・メディア技術の変革の様子をお届けしよう。
 

放送機器業界における技術革新は、目や耳で顕著に感じられるもの。その最新の様子を国内外に強く示したのが、2017年11月15日(水)~17日(金)の3日間にわたって幕張メッセで開催された、音と映像と通信のプロフェッショナル展「Inter BEE 2017」である。出展者数1139社・団体、登録来場者数3万8083名という数字は過去最多を記録し、盛況のうちに閉幕した。
 
同展示会の中で、最も広いブースに出展し、高精細の映像技術を誇っていたのは、ソニー(株)である。映画のセットのような空間で、数々の最新カメラ機材がモデルたちの動きを捉えてモニターに映し出しており、その高画質に感嘆の声が上がった。その他、伝送システムや収録・編集・アーカイブシステムを提案。いずれも、高解像度な次世代のテレビ放送として2018年に実用化予定の4K・8K放送に向け、映像制作環境を充実させるソリューションとなるだろう。
 
いくつかの企業がドローンを出展する中、撮影機材の販売などを手掛ける(株)システムファイブは、水中ドローン「PowerRay」を紹介していた。水深30mまで潜り、4K・フルハイビジョンでの撮影が可能。セットの魚群探知機がアプリに映し出す情報で居場所を確認しながら、ゲーム機のようなコントローラーの操作によって、魚の姿を捉えられるのだ。
 
撮影では、映像だけでなく音響も大きな役割を果たす。(株)ズームが紹介していたのは、1台であらゆるオーディオ編集をサポートする「Live Trak L-12」である。12チャンネルの入力を備えて直感的にライブ演奏のミックスができ、5系統のモニターアウト、各トラックの音を個別に記録するレコーディング機能までも搭載。コンパクトながらライブ放送も録音も自在に行えるのだ。
 
生放送に欠かせない中継機器について、三信電気(株)は小型中継装置、さらにはスマホを使った中継システム「LU-Smart」を展示していた。専用アプリをスマホにインストールすれば、インターネットでLU2000サーバーが直接受信可能。SDI出力やネットストリーミングとして中継することができる。
 
非常にコンパクトな放送スタジオを実現したのが、(株)JVCケンウッド。複数のカメラ操作がスムーズなリモートカメラコントローラー「RM-LP100」と、試合の得点表示がスムーズなカメラレコーダー「GY-HM200BB」に、ローランド(株)のビデオスイッチャー「V-1SDI」を組み合わせた。簡易スタジオとして海外で高い評価を得ているシステムで、特にマイナースポーツの中継で活用できそうだ。
 
スポーツ観戦の分野では、会場の熱気を一段と高めるシステムを(株)アセントが紹介していた。アメリカのスポーツ施設で最も多く採用されている映像送出システム「Click Effects」を用いることで、場内のスクリーン映像や音声を、プレー内容や雰囲気に合わせた最適なものにワンクリックで切り替えられるのだ。
 
映像表現エリアで来場者の注目を集めたのは、WONDER VISION TECHNO LABORATORY(株)が出展したイベント向けコンテンツ「Sphere 5.2」だった。幅5.2mの半球型スクリーンに、既存のデバイスで撮影された4K・8Kの映像を、特殊な加工をすることなく映し出すことができる。会場ではレースゲームの体験や水中映像の鑑賞が行われていた。
 
その他、AI(人工知能)を活用した新しいコンテンツの可能性を提示していた企業も見受けられた。その1つ、日本テレビ放送網(株)は、自律型アンドロイド「ERICA」を紹介。同展示会の1日の出来事をニュース形式で紹介するレポートや、来場者との掛け合いなどのイベントが行われ、放送局におけるAIの最前線を体験することができた。また、(株)Specteeが紹介していたのは、AIで報道を加速させるシステムだ。SNS上の動画・画像・テキストといった投稿をAIが分析し、速報性の高いものを抽出。例えば、動画の炎が「火事」なのか「焚き火」なのかを見分けられるのだ。放送分野にもAIが介入する時代が到来している。
 
2020年に開催される東京五輪に向けて、高精細映像や中継技術への期待は高まるばかり。Inter BEEは2019年の3ヶ年で「コンテンツ」を中核に位置づけた最新テクノロジーを集約した総合イベントへの発展を目指しており、今後の動向から目が離せない。

1 (株)システムファイブが出展していた、中国のPowerVision社の水中ドローン「PowerRay」は4K・フルハイビジョン映像記録に対応
2 (株)JVCケンウッドによるローコストスタジオシステムの展示。同社のカメラコントローラ「RM-LP100」とスコアボード機能搭載カメラレコーダー「GY-HM200BB」、ローランド(株)の「V-1SDI」が組み合わされている
3 (株)アセントは、映像送出システム「Click Effects」を使ってスポーツ観戦を盛り上げる仕組みを紹介していた
4 日本テレビ放送網(株)が出展した自律型アンドロイド「ERICA」は、大阪大学の石黒浩教授をはじめとする大学や研究機関の共同研究で生まれた

 
 
 

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