コラム

編集部が薦める今月の一冊
このページでは毎回、数多く刊行される書籍の中から、『COMPANYTANK』読者に向けて編集部がお薦めする一冊をご紹介します。第5回は、岩手の老舗酒蔵がグローバルブランドへ成長するまでをつづる『日本酒で“KANPAI” 岩手から海外進出を果たした南部美人革新の軌跡』を取り上げます。

品質一筋の信念が世界を虜にした――

世界最高峰のワインコンテスト「インターナショナルワインチャレンジ(IWC)2017」で「世界一の日本酒」の称号を獲得。老舗酒蔵の五代目蔵元は、いかにして日本酒文化を世界に普及させられたのか。

本書は創業120年、岩手の老舗酒蔵「南部美人」がグローバルブランドへと成長するまでの苦悩の軌跡をつづった記録である。

岩手・二戸の「南部美人」は、創業120年の歴史を誇る老舗酒蔵。五代目として蔵元を引き継いだ久慈浩介氏は「世界の南部美人」にしたいという強い思いを抱き、1990年代後半から他の酒蔵に先駆けて海外市場へ進出。当時、海外では中国で製造された酒が日本酒として出回っていたり、日本で造られた酒があったとしても適切な温度管理がされず劣化した状態で売られていたりしたことで、日本酒はおいしくないというイメージを持たれていた。そのような中で、海外の文化に合わせて料理との組み合わせ方や飲み方、管理のポイントなどをプレゼンテーションし、海外の販路開拓を推し進めていく。

創業120年の老舗酒造がいかにして世界で勝負できるブランドに成長したのかをつづった本書は、グローバルに自社ブランドの確立を目指す人や、伝統産業の変革を求める人にとって参考となる一冊である。

《著者Q&A》

■日本酒の一番の魅力とは何でしょうか?

日本酒は日本でしか造れず(GI認定により)、他の国で生産されるものは「SAKE」としか呼べません。千数百年の歴史を誇り、日本人のアイデンティティでもある米を原料に造られ、商品名に「日本」の名前が付く世界でも稀有なアルコールだと思います。日本を代表する文化・商品という価値がある点が最大の魅力です。さらに、ワイン以上に食事との相性も良く、いま世界を席巻している和食と併せて飲む日本で最高のお酒だと思います。

■この本を通して読者に伝えたいことを教えてください

地方でもどこでも、オンリーワンの商品や、強い気持ちがあれば何でもできます。代々続いてきた伝統を自分の代で止めるのではなく、次の世代につなぐことで父や祖父や祖先の皆さんに顔向けできるのです。この本は過去・現在・未来を融合させて書いていますので、ぜひそういった視点でも読んでほしいと思います。

■この本のポイント・読みどころを教えてください

伝統産業と、家族経営という日本ではとてもスタンダードな形態の会社が、どのように挑戦を重ねてきたか。五代にわたる蔵元がどのような思いでその時代を生きてきたかなど、読者の方々に共感していただけるポイントがたくさんあると思います。

■伝統を守りながら改革を行うのは苦労を伴うものですか?

伝統を守るだけなら誰でもできます。重要なのは大事なところを守りながら、変えなければいけないところを変えて進化させる「勇気」があるかどうか。それがあればこそ伝統は長く続くんです。守っているだけなら、とっくに廃れて終わりになっています。

■経営するうえで現場を経験することは大事だと考えますか?

とても大事です。特に海外輸出は、現地を知らないと間違いが起きます。酒造りの現場も同じで、微生物が醸す日本酒を理解するのは、現場を経験していない蔵元にはなかなか難しいのではないでしょうか。何よりも、私たちが造るのは、人々がコミュニケーションを円滑にするために飲む「アルコール」です。人と人とのつながりを知らずに、そういった商品を造ることはできません。

著者プロフィール
久慈 浩介(くじ こうすけ)
 
(株)南部美人代表取締役社長。1972年生まれ。東京農業大学を卒業後、1995年12月に久慈酒造(現・南部美人)へ入社し、2013年12月に代表取締役社長就任。業界の中でいち早く、90年代から日本酒の海外輸出に取り組んできた。また、甘味原料を一切使わない「糖類無添加梅酒」で特許を取得するなど、さまざまな糖類無添加リキュールも開発。「品質一筋」を経営理念に掲げ、日本国内の鑑評会や国内外の酒類コンクールで多数の金賞受賞歴を持つ。ヴィーガン国際認証を世界で初めて日本酒とリキュールで取得。
 
発行:幻冬舎メディアコンサルティング URL https://www.gentosha-mc.com/
発売:幻冬舎 URL https://www.gentosha.co.jp/

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