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コラム

海外ビジネスの指南役! 小田切社長の連載コラム.11

「海外展開を進めていくうえで、特に現地の人の気質やものの考え方が知りたい」。そんな声にお応えして、海外ビジネスの経験を豊富に持つ(株)サザンクロスの小田切社長が、世界各国の国民性を解説!より良い人間関係を構築することは、ビジネスの大きな成果へとつながるはずです。第11回は、前回に引き続きインド人についてお話しします。

はじめに

皆様、こんにちは。(株)サザンクロスの小田切武弘です。本誌の2020年9月号から、海外でビジネスを進める際の現地ローカルスタッフへの接し方や、スムーズなコミニュケーションの取り方などにフォーカスしたコラムを連載しております。さて前回に続き、今回もインドでビジネスを行うポイントについて、後半部分のお話を進めていきます。

まずは前回のおさらいから。外務省ホームページ「海外在留邦人数調査統計」2020年調査統計によると10月1日現在でインドに在留している邦人は永住者を含め約9200人。インドに進出している日経企業の拠点数は4948。インドでは多くの企業が商都ムンバイ、首都ニューデリー、IT関連企業が多く集まるデカン高原のベンガルール、インド東部西ベンガル州の州都コルカタ、インド東部沿岸最大都市のチェンナイにほぼ集約されています。筆者は20代よりムンバイを拠点に長期駐在し、その後も今日に至るまで断続的にインドとの行き来を行ってきました。30年以上インドビジネスに携わる中で、日本人とは大きく異なる考え方や、ビジネスの進め方に触れてきた経験から、インド人ビジネスマンの共通した気質を5つ前号でピックアップしました。今回はそれらのポイントについて掘り下げていきます。

①時間にルーズ

日本企業がインドの現地法人で日々業務を行っていく際に、インド人ビジネスマンにも時間に対する観念を持ち、時間を守って仕事を進めてもらうようにするにはどうしたら良いのでしょうか。今までアドバイスさせていただいた中で改善された実例としては、朝の始業時刻に合わせて短時間の全体朝礼を行う(昨今の事情ではZOOMなどを使ったテレビ会議)、始業時刻までに自身のPCにログインして画面を起動する、会社や事務所に入る際に各人のIDカードをスキャンしてもらうなどがあります。新型コロナウイルスがここ数年全世界でまん延しているため、現業を除き可能な限り在宅勤務が増加しているので、PCにログインすることで出勤したことにするやり方が最も手っ取り早い方法の1つだと思います。社内会議や顧客との会議もテレビ会議が多くなされるようになってきたので、会議開始前にアラームで確認する方法を採用している企業もあります。さらにもっと根本の変化を促すために、自分の仕事の棚卸しを頻繁に行い、個々の納期や重要度を考えさせ、仕事の優先順位を常に顧みる癖をつけてもらうように指導することが重要です。インドでも退勤前に日報と合わせ個々の業務のリストアップや優先順位を毎日確認、報告させることをルーティン化させている企業もあります。どこまで徹底するかはそれぞれの企業で温度差はあるものの、勤務中は時間に対する意識を常に持ってもらうことはインド人だけに限ったことではなく、仕事に対する基本的な部分だと思います。

②泰然自若としている

日系企業や欧米系の一流企業内においても時間管理に限らず、報連相が励行できない、仕事の納期を守れない人も多く散見されます。また上司から注意や指摘を受けてもインド人スタッフは大体の場合、泰然自若としていると前号でお話をしました。それは逆に自身のプライドを保ちたいからそのようにしている部分もあります。またインド人は自分の非を認めない傾向がありますが、それは評価や査定、今後のプロモーションや昇給に直接影響が出てくるためです。仕事を進めていく過程で問題が起きても絶えず沈着冷静で泰然自若として前向きに解決していくのであれば理解できますが、黙って反省の色が見えない時の泰然自若な態度については改めてもらう必要があるでしょう。

③超階級格差社会で生きている

良し悪しは別として、インドではいまだにカースト制度の思想が根強く残っており、この考え方が薄まることはあっても無くなることはおそらく半永久的に無いと筆者は感じています。心の中で常に意識的・無意識的に相手と自分の身分や階級を認識し区別する。それに加えて、宗教的あるいは意識的な理由から個々人の食べられる食品制限の違いがあるのです。ですから際立った差別や区別感を持たず、ほとんど中間所得層で構成されている日本人ビジネスマンがインドで日本にいた時と同じような行動様式を取っても、うまくいくわけがありません。それではどのようにしたらお互い友好的に協力的にビジネスを回していくことができるでしょうか。いくつか方法があります。まず大切なのは日本人ビジネスマンは仕事中でもそれ以外の時間であっても、努めて明るく胸襟を開き、インド人ビジネスマン以上に泰然自若としていることです。素直で誠意を持って、良いことは良い、悪いことは悪いとクリアにすること。次に、誰とでも平等に対峙していく姿勢です。特に勤務中は当然のことですが、純粋に自身の業務を粛々とこなしていきましょう。このように日々を過ごしていくことの積み重ねが大切です。最後に、日本人ビジネスマンには英語を準公用語として話す、インド人ビジネスマンと対等に話せるだけの英語力が求められます。これは昔も今も変わらない筆者の体験からくる考え方です。英語ができなくても現地に行けばなんとか通じるものだから、それよりも自分の業務回りのことに注力することが重要だと思われる方もいらっしゃると思います。しかし、インド人ビジネスマンと関係を持つには、自身の業務のパフォーマンスに加え、それなりのレベルに達したビジネス英語力が当初より問われます。それによって円滑なコミュニケーションが可能となることは言うまでもありません。

④外国語習得意識が高い

インドでは厳しい格差社会の中にあって、より良い仕事に就き、高い報酬を得るために、物おじせず自己アピールを強くしていくことで自分の存在感を示すことが、生き抜くためのやり方の1つです。特に外国語については習得していくことで、より良い仕事獲得の可能性を広げることにもなります。インド人ビジネスマンは外国語の習得意識が総じて高いです。この点については、日本人ビジネスマンは、学ぶ姿勢を見習う必要があると思います。

⑤プライドがものすごく高い

インド人ビジネスマンは皆、非常に高いプライドを持っています。特に大手や日系を含む外資系の企業で働くビジネスマンは高学歴に伴って、高いプライドが付いてまわります。したがって良い仕事をした場合には、そのことへの称賛と礼を、場合によっては他のスタッフのいる前で行い、逆に注意をする時には他のスタッフの目や耳が届かないところで論理的に冷静に対応し、今後の対応策を一緒に考えてあげる寄り添う姿勢が重要になってきます。このあたりの細やかなマネージメントを日々積み重ねていくことで、インド人スタッフが気持ちよく仕事をしていくことができる実例をいくつも目の当たりにしてきました。

まとめ

いかがでしたでしょうか。インド人ビジネスマンは国柄や宗教が日本とは大きく異なるため、彼らと友好的で実益を伴う関係を維持していくことは容易ではありません。ただ私たちも、同時に彼らから仕事に対する実力や性格まで非常に深く見られています。一番顕著に判断されやすいポイントはコミニュケーション能力、すなわち英語力です。実力があっても、それらをきちんと英語でやり取りすることができなければそれなりの見方をされてしまいます。自分たちをまず律していくことも重要ですね。次号では昨今ウクライナ関連でロシアのニュースが連日報道されていますが、ロシア人ビジネスマンの気質とロシアでビジネスを行うポイントについて話を進めていきたいと思います。どうぞお楽しみに。

■プロフィール
株式会社 サザンクロス 代表取締役社長
小田切 武弘

海外志向が強く、学生時代に海外留学を経験。学業修了後は、大手電気機器メーカーや飲料・食品メーカー、総合商社など数社にわたって、米国、インド、韓国、東南アジアといった諸外国に駐在。その中で、海外でのビジネスに苦戦する日本企業の存在を知り、自らのノウハウを提供したいという思いが芽生える。2017年7月7日、企業の海外展開をサポートする(株)サザンクロスを設立した。
 
http://sc-southerncross.jp/

 
 

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