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コラム

~障害者雇用コンサルカウンセラーが贈る~ 職場で使えるやさしい心理学 Part5
社会に出たものの周囲とのギャップから生きづらさを感じたり、仕事でトラブルに巻き込まれてしまったりする軽度知的障害者や発達障害者が年々増えている。その中で、「障害者雇用カウンセラー」として障害者の就労サポートや、家族や周囲の人を含めたメンタルヘルスケア・カウンセリングの経験を持ち、「ボイスマルシェ」の公式心理カウンセラーとして活躍する宮田満代氏。連載最終回となる今回のコラムでは、軽度知的障害児の育児やそううつ病を経験した同氏が、障害者雇用と外国人雇用のつながりについて紹介する。

ダブルタスク・シングルタスクについて

皆様こんにちは。今回はダブルタスク、シングルタスクのお話です。皆さんはシングルタスク、ダブルタスク、マルチタスクをご存じでしょうか。「聞いたことはある」「なんとなくわかる」と思われるかもしれませんね。障害者を雇用し、指示を出すときには「シングルタスクから始めよう」と言われることが多いのですが、このシングルタスク・ダブルタスク・マルチタスクというのは何なのでしょうか。

これから一つずつご説明させていただきます。

【シングルタスク】
シングルタスクとは、“1つの作業”という意味です。例えば「書類の右上を斜めにホッチキスで留める」など、とても詳細に砕いた作業が当てはまります。

実際の就労時に利用する場合は、必ず最初は目の前で作業をしてみてもらうことが重要になるでしょう。口頭だけで指示をされても、指示を受けた側は後で疑問が浮かんでも言い出すことができず「自分の感覚で作業」してしまい、トラブルに発展する場合があります。

また、精神障害がある方の場合、「わからなかったら聞いてください」と言われても、ためらってしまったり、わからないことがわからなかったりして尋ねることができない場合があります。そのため、作業中も少し意識して気に掛け、声掛けを適時することが大切です。

例えば、「斜めに右上をホッチキスで留める」という指示だけでは、どのような方向でどのような角度で留めるかわからない場合もありますし、手紙の封入作業のような場合、「手紙を一枚ずつ取って、折ってから封筒に入れる」と指示を出すだけだと、次のようなトラブルが発生するかもしれません。

・手紙の順番がバラバラ
・手紙がバラバラに封筒に入っている
・手紙の折り方が間違っている

こうしたトラブルを防ぐための対策として、封入する手紙を順番に並べて、その順番に沿って手紙を取り、取った手紙を折って封筒に入れるところまでの一連の動作を目の前でやってみてもらうと良いでしょう。もしくは、わかりやすく写真や図解を入れたマニュアルを用意することが必要になってきます。

【ダブルタスク】
ダブルタスクはその名の通り、2つの作業のこと。シングルタスクに慣れてきたらダブルタスクに進みます。

例えば、ダブルタスクの例としては次のようなものがあります。

・書類を封入した封筒を箱にまとめて倉庫にしまってもらう

・ホッチキス留めした書類を会議室の机に並べてもらう

このように今までのシングルタスクを組み合わせた作業がダブルタスクと言えます。そして、シングルタスクを積み重ねて、慣れてきたらダブルタスクで作業をお願いすると、ミスが少なくなるでしょう。

【マルチタスク】
マルチタスクは例えばですが「会議の準備をしておいて」など、その言葉の中にたくさんの作業が含まれるタスクになります。マルチタスクの場合は行き違いや思い違いが増えることが多く、とても危険な指示方法となります。一般的な会議の準備を例にとると…

1.会議室の確保
2.会議の時間設定
3.会議の資料の作成
 3-1資料作成
 3-2資料印刷
 3-3資料ホッチキス留め
4.関係者に周知
5.資料を配る

以上が全体の流れになると思います。

「会議の準備をしておいて」という指示だけでは多々あるタスクの中の【どこからどこまでが自分の仕事か】がわかりにくいですし、誰と分担すればいいのか、誰に指示を仰げばいいのかもわかりにくくなってしまいます。そのため、マルチタスクで作業をお願いするのは控えるか、シングルタスクとダブルタスクを徹底することが社内でのトラブルをなくすのに効果的な方法となります。

シングルタスクでつくったマニュアルは新人・外国人教育にもピッタリ

社会の多様化により、これからの時代には外国人を雇用することも考えられます。そんな時に便利なのは図解したシングルタスクの指示マニュアルです。障害がある方向けにわかりやすいマニュアルは、誰にでもわかりやすいものになっています。簡素な言葉で表記、図解されているマニュアルは外国人教育や新人教育にも力を発揮するでしょう。

ちなみに、とある市町村がマニュアルについて外国人の方にお聞きしたところ、「母国語より簡素な日本語で指示をしてくれているほうがわかりやすい」という声が多かったそうです。また、日本語のため、日本人にもわかりやすいので非常に汎用性があります。

【わかりやすい日本語とは】
わかりやすい日本語とはどんなものなのでしょうか。例を少し挙げてみたいと思います。

・横二つ折り→右上と右下の角・左上と左下の角を合わせて折る
・チェックする→よく見て確認をする

これらのように、言葉を砕いてわかりやすく図解を入れます。感覚的には“小学生が見て作業ができるくらい”の感覚でマニュアルをつくっていくのがおすすめです。なぜかというと、軽度知的障害の人(IQ50~)の理解度が、小学校4年生(10才)くらいだからです。精神障害の方でも調子が悪い時と良い時の理解とが違っていたりもしますので、小学生がわかるくらいのマニュアルにしていると安心です。また、「作業時に作業がわからない時に尋ねるべき担当者を明確にしておくこと」も大切です。

声掛けについては、本人が集中して作業をしていて、作業を間違っていない場合は声掛けはしないようにします。というのも、集中が切れてしまうと、再び集中するまで時間がかかってしまうからです。一方、本人がきょろきょろしていたり、手が止まって考え込んでいるようであれば声を掛けるようにしましょう。

ということで、障害者雇用は新人教育・外国人雇用にも十分応用が利きますので、ぜひ積極的に取り入れていただければと思います。

さて、突然ですが、皆様にご報告があります。この度、一身上の都合で、このコラムは今回で最終回とさせていただきます。突然のことで、楽しみにしてくださっていた読者様には心苦しいのですが、ご理解いただければと思います。

また、私自身は女性向けとはなりますが、「ボイスマルシェ」の公式心理カウンセラーとして心理カウンセリングをさせていただいております。

ご拝読ありがとうございました。これからも躍進企業応援マガジン・COMPANYTANKをよろしくお願い致します。末筆となりましたが皆様のご活躍を心よりお祈りしています。

■プロフィール
宮田 満代(みやた かずよ)
minoritas Lucet 代表
 
発達障害児・軽度知的障害児の育児の中で、心理学に興味を持ち心理学について学びを深くする。2019年都立特別支援学校でPTA会長を経験し、障害児教育と保護者の関わり、社会との関わりを経験する。2020年日野市planTビジネスプランコンテスト ファイナリストとして、障害者雇用について発表。軽度知的障害者と発達障害者の可能性の開花には、保護者の健やかなメンタルヘルスと障害者雇用現場のメンタルヘルスマネジメントが必要だと実感し現在活動をしている。
 
※保有資格
【アイディア・ヒューマンサポート】
カウンセラー基礎 / メールカウンセラー / 心理テスト制作
JADP認定 メンタル心理カウンセラー / 上級カウンセラー
・日本メディカルセラピー協会
心理カウンセラー / カウンセリングアドバイザー /
アロマセラピーカウンセラー
・大阪府吹田市内精神科主催 広汎性発達障害児ペアレンツ講座
・東京都日野市 第11期創業スクール受講
(≪特定創業支援等事業≫認定)
・メンタルヘルス・マネジメントIII種
 
URL https://minoritas-lucet.tokyo/
保護者向けカウンセリングWebサイト https://lucet.link/
Facebook https://www.facebook.com/minoritas.lucet
Instagram @minoritslucet
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