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企業経営の黄色信号が灯った時―その際の注意点

どんなに順風満帆な企業であっても、将来事業の業績を悪化させていく可能性のある要因は必ず存在するもの。それらは経済、マーケット、地政学的なことなど外部の事象に起因するものと、各企業の内部に原因があるものとに大別できる。この連載では、内部的な要因で企業業績を将来悪化させていく可能性のある事象を、「企業経営の黄色信号」と呼んでいく。それを踏まえて、「CONCERTO」の代表で経営アドバイザーの荻野好正氏が、定性的な面と財務的な面からのアプローチで、経営者として気を付けるべきことや、いかに企業の「黄色信号」を認識していくべきかについて解説する。第2回は、戦略面に関する企業経営の黄色信号を中心に論を展開していく。

今回はコラム連載の2回目になります。どんな企業であっても将来大きな経営課題になる(あるいは、なりうる)課題がどこかに潜んでいるものです。前回は、それらを「黄色信号」と呼び、できるだけ早く問題認識して早期解決を図ることが重要だとお話しし、そうした課題を戦略上、財務上、コミュニケーション・人事・組織上の3つの観点に分けて例示しました。今回は、このうちの戦略上の問題について、少し詳しくお話ししようと思います。

新製品・新規分野など
成長のドライバー

企業の成長のためには、現状の製品に頼ることなく、新たな製品、新たな市場、新たな顧客の開拓などを加えていくことが必須になってきます。従来からある1つの製品に長年にわたって売り上げのかなりの部分を依存していたり、単一のお客様あるいはマーケットへの売り上げに頼っていたりと、いわゆる一本足打法の経営になっていないでしょうか?新規商品の開発、投入をしようという議論は何度もされるものの実際には売り上げに結び付かない――いわゆるダイバーシフィケーション(多様化)ができていないというケースが1つの黄色信号です。一度振り返ってみてください。あなたの会社では、ここ数年のうちに何か新しく売り上げに貢献できたものがあるでしょうか?

選択と集中

「選択と集中」。この言葉が日本の企業経営で使われるようになってから、もう20年以上が経ちます。日本の企業が限られた経営資源(人・物・金・情報)を効率よく使うために、多様化しすぎているプレーグラウンド(商品、市場、顧客)などの中から儲けの効率の良いものを選択し、そこに集中しようというものです。当時はどの会社の経営計画にもこの言葉が使われていました。もちろん、この戦略で成功している企業は多くありますが、ここで注意しなくてはならないのは、選択されなかった商品・市場などを、どう取り扱ったかということです。どの会社にも、商品・市場ごとに利益をたくさん上げている分野と、低採算あるいは赤字に苦しんでいる分野とがあります。「選択と集中」ということで、利益率の高い分野に集中しようと決めたのはいいのですが、選択されなかった低採算、赤字のビジネスからきっちりと撤退ができているでしょうか?もしできていないなら、その理由はいろいろあると思います。例えば、長年の顧客から頼まれて断り切れないとか、会長の始めたビジネスだからやめたら文句を言われそうだとか。それらの理由で中途半端な撤退となっていたら、これは黄色信号と考えるべきです。

新規分野への参入

ダイバーシフィケーションを進めていくにあたり、会社にとって未経験の分野に参入をするということはよくあります。その際に、十分な事前調査(市場調査、顧客の調査、法的な問題チェック等々)を行っていますか?素人の人間だけで判断せず、きちんとした戦略ができていますか?類似の分野でうまくいっているからといって新規分野でも同じようにやれば問題ないと思い込んで取り組み、失敗に至るケースも多々あります。新規分野に参入する時にはきちんと石橋をたたくことが必要です。それができていないと感じたら黄色信号だと考えてください。

成長にあった社内体制

会社の成長に合った会社の体制ができていますか?例えば、1億円の売り上げだった会社が20億円の売り上げの会社に成長していけば、当然ながら会社の営業体制、管理体制、品質保証体制、生産体制などを成長に合わせたものに変えていく必要があります。慌てて海外に進出したものの、それをサポートする体制がまったくできていない、というのはよくあることです。「この体制ではやっていけないのではないか」という疑問が湧いてきたら、それは黄色信号と認識しましょう。

M&A

昔はM&Aといえば大きな会社のやることで、小規模の会社には縁がないと思っておられたかもしれませんが、最近は事業承継なども絡み、小型のM&Aが多くなってきています。企業買収を実行した際に一番大事なことはPIM(Post Merger Integration=買収後の事業統合)です。企業買収を行った時の目算通りに統合が進んでいるでしょうか?最初からきちんとした統合計画がなかったというのは論外です。統合のスケジュールがあるのにそれがまったく守られていないなど、皆が計画無視をしているということはありませんか?これらも大きな黄色信号です。

事業計画の策定

多くの企業では3~5年先までカバーする中期経営計画と、単年度の事業計画をつくっていると思います。この計画がアグレッシブすぎる夢物語になっていたり、逆に極端に保守的なものになっていたりすることはありませんか?あまりにアグレッシブな計画になりすぎており、最初からできるわけがないといって社員のやる気が出なかったり、毎年目標が達成できなくて皆が惨めな気持ちになっていたりしていませんか?他方、コンサーバティブすぎる計画をつくり、毎年の実績が計画値を軽く上回るようなことでは、会社の成長が見込めなくなります。よく言われるように経営計画は「Challenging but Achievable(挑戦的だが達成可能)」なものにすべきです。計画の立て方がおかしいのではないかと感じた時、それもまた黄色信号になります。

業界の商習慣

どこの国にも業界ごとに商習慣というものがあります。会社によっては、それが成長の足かせになることがあるのです。

例えば、ある業界の商習慣では支払いが90日後だとか、手形が120日だとか、今の世の中では考えられないような条件が付けられるケースがあります。そのために、会社が資金調達に翻弄されて成長どころではなくなるようなことが起こりえるのです。商習慣を一社のみで変えていくのは難しいでしょうが、それにいかに対応するのか、長い目でいろいろと工夫をしていく必要があります。商習慣が足かせになっていないか?こちらに関しても自問自答していただきたいと思います。

以上、今回お話しした内容の中には、皆様の会社でも思い当たる部分があるのではないでしょうか。次回は財務上の課題についてお話ししていきたいと思います。

■著者プロフィール
荻野 好正

おぎの よしまさ / 大阪府出身。伊藤忠商事(株)にて30年間勤務、曙ブレーキ工業(株)で15年間の役員勤務を経験。その後、海外を含む企業勤務・経営を通じて得られた企業経営のノウハウを中小企業、スタートアップの企業経営者に伝授することを目的に、企業経営者へのアドバイザリー業務を「CONCERTO」(個人事業)として立ち上げた。中小企業、ベンチャー企業の強化こそが日本経済を立て直す原動力になると信じる。静岡大学工学修士、米国シカゴ大学MBA。
 
CONCERTO
〒100-0005
東京都千代田区丸の内2-2-1岸本ビルヂング6F
https://c-concerto.com/

 
 

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