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企業経営の黄色信号が灯った時―その際の注意点

どんなに順風満帆な企業であっても、将来事業の業績を悪化させていく可能性のある要因は必ず存在するもの。それらは経済、マーケット、地政学的なことなど外部の事象に起因するものと、各企業の内部に原因があるものとに大別できる。この連載では、内部的な要因で企業業績を将来悪化させていく可能性のある事象を、「企業経営の黄色信号」と呼んでいく。それを踏まえて、「CONCERTO」の代表で経営アドバイザーの荻野好正氏が、定性的な面と財務的な面からのアプローチで、経営者として気を付けるべきことや、いかに企業の「黄色信号」を認識していくべきかについて解説する。第1回は、企業経営の黄色信号に気付くことの重要性に関して論を進めていく。

企業経営の鍵と問題点

私は工学系の大学院修了後に伊藤忠商事(株)に就職し、海外向けの発電プラントの輸出業務で営業やプロジェクトマネジメントを担当したのち、経営企画部署(業務部)とアメリカ法人で会社経営、事業会社の経営管理、新規投資、人事などの管理部署を担当しました。その後、曙ブレーキ工業(株)という自動車部品メーカーに転職し、役員としてCFO、企画管理、海外事業などの仕事をしてきた経歴を持ちます。

その間、成功・失敗の両方を数多く経験してまいりました。その中で、会社経営の肝になるのは、将来、問題化しそうなことをできるだけ早く見つけ出し(これを「企業経営の黄色信号」と呼びます)、できるだけ早くその芽を摘んでおくということだと確信するようになったのです。今回、いろいろな会社で培った私の経験をベースにしつつ、「企業経営の黄色信号」について6回にわたり、経営者の皆様にお話しする機会をいただきました。どうぞよろしくお願いいたします。

さて、企業経営者に課せられたミッションは、企業の成長と革新を実現することだとよく言われています。企業規模、業種、国内外を問わず、いずれの経営者の方もこれを目指して頑張っておられることでしょう。経営者にとって、毎日のように新たな課題が目の前に現れてきて、それらと格闘する。こういった問題・課題をいかにタイムリーに解決していくかが企業経営をうまく進める鍵となるわけです。

中には、とてもわかりやすい課題が出てきて、直ちにその解決を図っていくというケースがあります。一方で、誰も気付かないままにじわじわと時間をかけて会社に忍び込んでくるリスク・要因もある。これらは誰も気が付かないうちに顕在化していき、大きな課題(ここではあえて「問題」とは言いません)となっていくのです。

これらの事象を、会社の「黄色信号」として捉えてみようと思います。いかに早く手を打ってそれらが「赤信号」とならないように、そして、できるだけ早く「青信号」に戻していくのかが経営者の手腕であると言えるでしょう。

当連載では、まず、社内に原因のある定性的な事象で「黄色信号」であると考えられるケースには、どのようなものがあるのか、例を挙げて説明していきます。

そして連載の後半では、財務的に(定量的に)どのような状況になったら「黄色信号」だと考えるべきかをお話ししていく予定です。

会社の中では、放置しておくと、黄色信号になる事象はじわじわと大きくなっていき、最後には手が付けられなくなってしまいます。今回は、その中からいくつかの例を取り上げてみましょう。大きな項目として、戦略上の問題、財務上の問題、社内コミュニケーション・組織・人事関連という3つに分けて、これらの重要性についてお話しします。具体的な内容については、第2回以降とさせていただきますが、以下の例示をご覧になって、ご自分の会社の中でそのようなことは起こっていないか、次回までにそれぞれのお立場でお考えいただければと思います。

戦略上の問題

戦略面に関連する要確認事項:
(1)新製品、新規サービス、新規顧客、新規の地域(マーケット)など、新規の成長のドライバーになるものが近年出てきていますか?
(2)最近よく言われる「選択と集中」の中において、間違ったところでEXIT、集中をしていませんか?
(3)新規分野に参入するにあたり、きちんとした戦略が事前に検討されて、それらが実行段階で組み込まれていますか?やみくもに新規参入してはいませんか?
(4)会社の成長に合った社内体制(営業、生産、管理体制)ができていますか?
(5)急激な海外展開により、いろいろな部分で無理をしていませんか?
(6)会社を買収したのち、計画通りに統合が進んでいますか?
(7)事業計画がアグレッシブすぎる、あるいはあまりに保守的すぎるということはありませんか?
(8)業界の商習慣に振り回されて自社のイニシアチブが取れなくなってはいませんか?
などが挙げられます。

財務上の問題

財務面に関連する要確認事項:
当然のことながら、財務諸表上の数値の異常などは大きな「黄色信号」の要素になりますが、それら定量的なもの以外にも黄色信号となりうるものがあります。

例えば――
(1)資金を運用している事業部には、資金を使っているという意識がきちんとありますか?
(2)財務数値の報告が、正確にかつタイムリーに行われていますか?
(3)社内の報告数値にいろいろなフィルターがかかって真実が報告されないことなどはないでしょうか?
これらも重要なポイントです。

社内コミュニケーション・組織・人事に関連すること

社内のコミュニケーション、人事・組織に関連する要確認事項:
一番重要な点は、社内の意志による伝達でしょう。

(1)社長の話が正確に現場に伝わっていますか?現場の状況・問題点などが正確に経営陣にあげられる体制は確立されていますか?
(2)社員に対して会社の経営状況がきちんと開示・説明できていますか?
(3)人事異動があまりにも頻繁に行われていませんか?
(4)「ガバナンスをきちんとフォローしよう」「コンプライアンスはきちんと守ろう」という文化はありますか?

おおむね、以上のようなものになります。次回から、今回挙げた要点についてもう少し詳しく解説をさせていただき、連載の後半では、財務指標(定量)に関することで、経営者として意識すべきポイントをいくつか挙げて説明をする予定です。

■著者プロフィール
荻野 好正

おぎの よしまさ / 大阪府出身。伊藤忠商事(株)にて30年間勤務、曙ブレーキ工業(株)で15年間の役員勤務を経験。その後、海外を含む企業勤務・経営を通じて得られた企業経営のノウハウを中小企業、スタートアップの企業経営者に伝授することを目的に、企業経営者へのアドバイザリー業務を「CONCERTO」(個人事業)として立ち上げた。中小企業、ベンチャー企業の強化こそが日本経済を立て直す原動力になると信じる。静岡大学工学修士、米国シカゴ大学MBA。
 
CONCERTO
〒100-0005
東京都千代田区丸の内2-2-1岸本ビルヂング6F
https://c-concerto.com/

 
 

②黄色信号に気付くことの重要性>>


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