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コラム

~障害者雇用コンサルカウンセラーが贈る~ 職場で使えるやさしい心理学 Part3
社会に出たものの周囲とのギャップから生きづらさを感じたり、仕事でトラブルに巻き込まれてしまったりする軽度知的障害者や発達障害者が年々増えている。その中で、「障害者雇用カウンセラー」として障害者の就労サポートや、家族や周囲の人を含めたメンタルヘルスケア・カウンセリングを手がけているのが、「minoritas Lucet」の代表、宮田満代氏だ。当コラムでは、軽度知的障害児の育児やそううつ病を経験した同氏が学んできたメンタルヘルスや心理学の知識、さらには障害者の特徴や思考パターンなどを紹介していく。

精神障害は誰にでも起こり得る

皆様、新春のお喜びを申し上げます。皆様にご多幸がありますことを、心よりお祈り申し上げます。

さて、厚生労働省により障害者雇用が強化されている昨今。その中でも、今回は「精神障害者」の雇用についてお話ししていこうと思います。

ご存知の方も多いかもしれませんが、2021年3月から障害者法定雇用率が引き上げられました。具体的には、一般企業で2.3%、国・地方公共団体で2.6%、都道府県内の教育委員会で2.5%です。また、対象となる事業主の範囲が、民間企業では従業員45.5人以上から43.5人以上へと変更されています。つまり、従業員が43.5人以上いる民間企業は、従業員数の2.3%の割合で障害者を雇用する義務があるということです。

法定雇用率を守らなかった場合のペナルティは、ハローワークからの是正が入ったり、企業名が公表されたり、さまざまですが、お金の話に限ると以下の表のようになります。

次に、どのような障害がある方がハローワークから紹介されているのかを見てみます。東京労働局のデータ「令和2年度 精神・発達障害者しごとサポーター養成講座資料」によると、障害種別ごとの職業紹介状況は、精神障害45.7%、身体障害22.3%、知的障害22%、その他10.5%となっています。

障害者雇用の件数も増えており、平成21年度には【45257件】でしたが、令和2年度には【89840件】と2倍近い数になっています。また、その内訳も平成21年度は身体障害者が49.9%と就職件数の約5割を占めていたものの、令和2年度には精神障害者の割合のほうが大きくなっています。ハローワークに募集をかけた場合、精神障害者の方を紹介されるケースも多くなっているようです。

「精神障害者」と聞いて、皆様はどんなイメージを抱くでしょう。特別な人?―いえ、実はそうではありません。原因はさまざまですが、精神障害は誰にでも起こり得るものです。例えば、生涯に約15人に1人、1年間に絞っても約50人に1人がうつ病を経験しています。また、うつ病になっている人の約25%は医療機関を利用していますが、残りの約75%の人は病気に無自覚だったり、心療内科へ行くことにためらいを感じたりして医師の診断を受けていないため、実際にうつ病の経験者はもっと多いでしょう。

では、そんな誰にでも起こり得る精神障害に、どのような病名と症状があり、雇用の際にどんな配慮が必要なのかについて、1つずつ解説していきます。

うつ病の主な症状としては、
① 強い落ち込みやゆううつな気分
② 睡眠障害(1日中眠い・眠れない)
③ 意欲低下・食欲低下
④ 「死にたい」という希死念慮
などが挙げられます。また、とにかく朝が苦手で、昼から少しづつ頭が動き始めて起きられるようになる人が多いです。

うつ病の人への配慮としては、まず簡単な仕事から始めて徐々にステップアップをしていくことや、本人を焦らせるような発言は控え、焦らずじっくり仕事に取り掛かれる環境を準備することが大切です。「がんばって」「大丈夫?」よりは、「わからないことはありますか?」「何か手伝えることはありますか?」など具体的に言葉にしていただいたほうが、伝わりやすくなります。

双極性障害は、「躁状態」と「うつ状態」を繰り返す障害です。症状としては、
【躁状態】 気分の高揚・意欲向上・浪費・おしゃべりになる
【うつ状態】 ゆううつ・意欲低下
とまさに両極端で、再発率も高いことから、そのタイミングを理解し予防に努める必要があります。また躁状態を通常とは思わず、ゆっくりとしたペースで仕事を進められるよう配慮しましょう。その時の状態に応じて、細かくペース配分をすれば、力を発揮しやすくなるはずです。

てんかんは、意識喪失・けいれんなどの発作が反復する脳の障害です。ほとんどの場合、定期的な通院と服薬で発作を抑制できると言われています。通院時間や服薬管理の便宜を図ることが必要です。

また、ストレスがかかりすぎないよう、簡単な仕事を少ない分量から始めさせてあげると良いでしょう。発作時には、周囲の物をどかすなど安全対策も忘れずに。発作時の対応を、日頃から本人とよく話しておくことも大切です。

高次脳機能障害とは、交通事故や脳卒中で脳が部分的なダメージを受け、言語や記憶に障害が起きた状態です。

症状として作業スピードの低下や記憶力の低下、感情のコントロールが下手になることなどが挙げられますが、個人差が非常に大きく、一見すると障害がわからない場合もあります。

一人ひとりに合わせつつ、わかりやすい業務内容を割り振り、こまめに指示を出すことが求められるでしょう。

発達障害・自閉症スペクトラムには、さまざまな症状があります。
① 自閉性障害(Autism disorder、自閉症)
② アスペルガー症候群(AS, AD)
③ レット症候群
④ 小児期崩壊性障害 (CDD)
⑤ 特定不能の広汎性発達障害(PDD-NOS)
非定型自閉症を含む以上を合わせて、広汎性発達障害と呼んでいます。現在は一般に自閉症スペクトラムと呼ぶことが多くなっているようです。主な特徴として、社会性の障害、他者とのコミュニケーション能力の障害・困難、こだわりが強いなどが挙げられます。また、アスペルガー症候群は発達遅滞(知的障害)を伴わないことも特徴です。ただし、「知的障害を伴わないから軽度」 とは言い切れず、やはり個性・症状に応じた仕事の割り振りをしていくことが求められます。

① 体調管理には通院と服薬が必要
通院日を確認しておき、休暇の必要を打ち合わせしておきましょう。
② 疲れやすいのでこまめな休憩を
短時間の単純な仕事から慣らすことで適応しやすくなります。こまめな休憩の許可や休憩の取り方の工夫が必要です。
③ ストレスになるものを共有しておく
怒鳴り声や大きな音、環境の変化など、 本人のストレスになるものを事前に共有し、どのような環境、接し方、業務内容が望ましいかを話し合いましょう。

ご拝読ありがとうございました。また次号でお会いしましょう。

■プロフィール
宮田 満代(みやた かずよ)
minoritas Lucet 代表
 
発達障害児・軽度知的障害児の育児の中で、心理学に興味を持ち心理学について学びを深くする。2019年都立特別支援学校でPTA会長を経験し、障害児教育と保護者の関わり、社会との関わりを経験する。2020年日野市planTビジネスプランコンテスト ファイナリストとして、障害者雇用について発表。軽度知的障害者と発達障害者の可能性の開花には、保護者の健やかなメンタルヘルスと障害者雇用現場のメンタルヘルスマネジメントが必要だと実感し現在活動をしている。
 
※保有資格
【アイディア・ヒューマンサポート】
カウンセラー基礎 / メールカウンセラー / 心理テスト制作
JADP認定 メンタル心理カウンセラー / 上級カウンセラー
・日本メディカルセラピー協会
心理カウンセラー / カウンセリングアドバイザー /
アロマセラピーカウンセラー
・大阪府吹田市内精神科主催 広汎性発達障害児ペアレンツ講座
・東京都日野市 第11期創業スクール受講
(≪特定創業支援等事業≫認定)
・メンタルヘルス・マネジメントIII種
 
URL https://minoritas-lucet.tokyo/
保護者向けカウンセリングWebサイト https://lucet.link/
Facebook https://www.facebook.com/minoritas.lucet
Instagram @minoritslucet
Twitter @MinoritasL個人事業主様のためのビジネスオンラインサロン
「ビジネス相談室」を開催中。
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