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海外ビジネスの指南役! 小田切社長の連載コラム

「海外展開を進めていくうえで、特に現地の人の気質やものの考え方が知りたい」。そんな声にお応えして、海外ビジネスの経験を豊富に持つ(株)サザンクロスの小田切社長が、世界各国の国民性を解説!より良い人間関係を構築することは、ビジネスの大きな成果へとつながるはずです。今回は特別編として、コロナ禍中のタイの現状について詳しくお伝えします。

皆様こんにちは。(株)サザンクロスの小田切武弘です。私は2021年2月1日~3月6日の期間、顧客対応でタイに滞在する機会がありました。そこで、前号の最後に「次回はアメリカ人気質とそのビジネスのポイントについてお話ししていく」とお伝えしておりましたが、予定を少し変更しまして、今号では特別寄稿編として「世界的なコロナ禍におけるタイの現状についての一考察」と題し、私が実際にいくつかの現場を見聞し、訪問・対応した関係者の方たちと接する中で見えてきたタイの現状について述べていこうと思います。

① “ASQ”によるタイ入国と2週間の隔離期間

コロナ禍においてタイへ入国するには、ASQ(ALTERNATIVE STATE QUARANTINE)というタイ政府が監修する、医療機関とホテルが提携したパッケージプランを利用する必要があります。まず、出国までの72時間以内にPCR検査を受け、羽田空港からタイのスワンナプーム空港へ。今回、私が搭乗したボーイング777機には、8人の乗客しかいませんでした。到着後、サテライトではさまざまな申請書や検査書類の提出を求められ、入国スタンプを受領してから空港を出るまでにかかった時間は2時間半。約1年ぶりに戻ってきたタイの玄関は、かつて月の半分を過ごすほど通い慣れていた頃とはまったく雰囲気が違いました。

空港からタイ政府認定のASQホテルまでは専用のハイヤーで移動しましたが、こちらも運転手は完全防護服、運転席と後部座席との間は厚い透明のビニールで完全に仕切られているという徹底ぶり。ホテル到着後は、やはり完全防護服を身にまとった従業員が予約してある自室まで距離を開けて先導、スーツケースや手荷物の一切は消毒スプレーを噴霧するために一度預かられ、後から部屋に運ばれてきました。

入室が完了したら、その翌日から2週間の隔離期間が始まります。私は首都・バンコク市内のアソークという地区から、北に10kmほど離れたホテルに宿泊していましたが、期間中はホテル内に設営された屋外のPCR検査エリアで2回、検査を受けるタイミング以外には、自室から1歩も外に出られませんでした。日に3度の食事は自室のドアのそばに設置された椅子にお弁当や飲料が置かれ、室内で出たゴミは配布されている特別な厚手の赤い袋に入れて厳重に縛り、部屋の外に出す。シーツやタオル類の交換もなし。さらに、毎日朝と夜にはPCR検査官からラインが入り、体温や体調、便の回数など、予め決められた質問事項に回答することが義務付けられていました。

② バンコク市内の現状

ホテルでの隔離期間がようやく終わり、バンコク市内にある自分のコンドミニアムに戻ってからは、約3週間にわたり市内での顧客との打合せや地方出張をこなしました。その間、アソークを中心とした「BTS」や「MRT」といった鉄道の駅周辺部では、現地在住の方を除き外国人はほとんど見かけず。訪タイ客数のデータをいくつか参照したところ、どれも例年比90%以上の減となっており、そのデータは実感としても頷けるものでした。かつて外国人ビジネスマンや旅行者でにぎわっていた、ホテルや通り沿いのレストラン、コーヒーショップ、マッサージ店、さらには大型ショッピングモールに至るまで、あらゆる店舗が閉店し、目立つのは「FOR RENT」の貼り紙ばかり。バンコク市内だけでなく、周辺の観光地も閑古鳥が鳴いており、情勢の厳しさを痛感させられました。ちなみに、タイを訪れる外国人は、例年で約4000万人。これは日本の3300万人を大きく上回っており、多くのビジネスが外国人の訪問を見込んだものであることは言うまでもありません。コロナ禍による訪問者数の減少は、観光業・運輸業をはじめあらゆるビジネスに打撃を与え、同様の状況があと1年も続けば、タイの産業構造は大きく変わってしまうでしょう。もちろん、これはタイに限らず、全世界で共通の問題だと思います。

③ タイ人のコロナ意識

タイでコロナウイルスに関するさまざまな規制や体制変更が本格的になり始めたのは、2020年の3月頃のこと。その後、ほとんどのタイ人はコロナウイルスに対してかなりの恐怖感や危機感を持って行動していると感じます。日本の都市部よりも早い段階から、どの事務所、店舗、マンションにも消毒用のアルコールが配備され、マスク着用は当たり前、さらに現在では瞬時にわかる体温測定機器も普及しています。

また2021年3月現在、非常事態宣言が発令中ということもありますが、今だに夜お酒を飲みに行ったり、大人数で騒いだりする人はほとんど見かけることはありません。タイではもともと仏教の信仰心が厚く、タイ人の多くは普段からあまり羽目を外さないという側面もあり、3月にバーでの飲酒が解禁になった日の夕方、利用客はタイ在住のヨーロッパ系の方たちだけでした。

④ タイの企業について

直接的にせよ間接的にせよ、タイではほぼすべての業種がコロナ禍の影響を受けており、企業の業績は悪化しています。とは言え、そんな中でも大幅に利益を伸ばしている企業も存在し、例えば医療現場や工場、レストラン、学校などで使用する使い捨て手袋の製造会社、高級日本食材の輸入会社、簡易型空気清浄機などの電化製品を取り扱う会社、デリバリーを手がける会社などが挙げられるでしょう。私が実際に視察した使い捨て手袋の製造工場では、「今から発注書を受領したら、納品は1年後になる」という話も聞きました。

好調企業の共通点は「コロナ禍だから~できない」「収束してから~する」と、今の情勢を言い訳にしていないところにあると感じます。また、それぞれの商品やサービスが、他の類似商品・サービスにはないセールスポイントや独自性を持っていることも秘訣と言えるでしょう。

さらに、もう1つ感心したことがあります。それは、現場作業が主体となる業種を除き、規模の大小を問わず多くの企業が在宅勤務や変則勤務に関する人事規程の改善に取り組んでいたということです。最近は日本の各企業でも在宅勤務化が進み、それに伴い人事評価システムや人事ローテーションの見直しがなされていますが、負けず劣らず素早い対応をしているタイの企業を見て、大きな成長を感じました。

⑤ さいごに

いかがでしたでしょうか。限られた誌面の中ではありますが、皆様に少しでもタイの現状がお伝えできたなら幸いです。ちなみに、2021年4月からはASQの規定が変更され、入国前のワクチン接種など条件を満たせば隔離期間無しで入国できる可能性があるので、渡航を検討中の方は詳細を確認することをおすすめします。ただ、コロナ禍以前のように、日本・タイ間を自由に行き来できるようになるには、あと数年かかると専門家は見ているそうです。

では、次回は海外ビジネスの一つの柱となるアメリカ人気質とアメリカでビジネスを行うポイントについてお話を進めて行きたいと思います。どうぞお楽しみに。

■プロフィール
株式会社 サザンクロス 代表取締役社長
小田切 武弘

海外志向が強く、学生時代に海外留学を経験。学業修了後は、大手電気機器メーカーや飲料・食品メーカー、総合商社など数社にわたって、米国、インド、韓国、東南アジアといった諸外国に駐在。その中で、海外でのビジネスに苦戦する日本企業の存在を知り、自らのノウハウを提供したいという思いが芽生える。2017年7月7日、企業の海外展開をサポートする(株)サザンクロスを設立した。
 
http://sc-southerncross.jp/

 
 

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