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コラム

毎日のマネジメントで使える! コーチング&コミュニケーション

ストレングスコーチ・経営戦略コンサルタントの壁山恵美子氏は、大学院在学中から個人事業主となり、芸能界・出版業界など多くの業種を経験。30歳で転職した上場企業ではスピード出世を果たすなど、さまざまなビジネスノウハウを蓄積してきました。本連載はそんな壁山氏が「マネジメントのヒント」や「強みを生かすストレングス・マネージメント」についてお伝えします。第9回目のテーマは「自分の“強み”でコロナ禍を乗り切る〜適応性〜」になります。
 

「新しい生活様式」の変化から1年

早いもので、1年の半分まであと1ヶ月、5月の暦では子どもの日に「立夏」を迎えますが、皆様はいかがお過ごしでしょうか。体調に気をつけて、これから始まる夏の暑さを乗り切っていきましょう。

さて、新型コロナウイルスの感染拡大防止対策が始まり約1年。「新しい生活様式」という言葉にもすっかり慣れ、たった1年でもはや“死語”のように感じるのは私だけでしょうか。毎日どこにいても、マスクを着けることは当たり前になりました。

私は以前、仕事でベトナムの首都ハノイを訪れ、そこでも一度、毎日マスクを着ける体験をしたことがあります。と言うのも、ハノイでは主な交通手段が原付バイクで、市内の大通りは通勤者や通学者の原付バイクで朝早くから埋め尽くされてしまうのです。その排気ガスから身を守るために、マーケットではお洒落な柄のマスクが10枚・20枚セットで売られていて、私もそこで調達したことを覚えています。

コロナ禍当初は、「ベトナムの時みたいだ」と日本でのマスク生活に違和感があったものの、マスク在庫切れ騒動の際にはお土産で買っていたベトナムのマスクを家から探し出し、何度も助けられました。そんな現象も数ヶ月後には落ち着き、今では抗菌、不織布、ウレタンなどさまざまな工夫が施されたマスクが流通しています。柄やカラーのバリエーションも増えましたね。この1年で、居住環境や通勤形態、物事の価値観や心の持ちようなど、人生に大きな影響を与える部分が変化しましたが、人は生きていくためにさまざまな適応をしていくものなのだと、私は感心してます。

「順応性」と「適応性」の違い

今回のようなコロナ禍における生活様式の変化についていくこと(例えば、この1年で私たちが経験した「マスク生活に慣れる」ということ)は、私たちの持って生まれた能力の性質としては「順応性」が求められるのか、それとも「適応性」が求められるのか、どちらなのでしょうか。そもそも、「順応性」と「適応性」の違いは何なのでしょうか。まずは、その辺りから整理していこうと思います。

「順応性」とは、新しい仕事や環境に慣れようと自ら努力するのではなく、そこに身を置く中で自然と馴染んでいく資質のこと。つまり、無意識の行動の結果として慣れている状態を表しています。

一方「適応性」とは、視野を広く持ち、外部の環境に対して自分がどのようにあるべきかを考え、行動や意識を変えていく資質のこと。「柔軟性」とも類似した言葉です。こうして比較すると、「順応性」は受動的、「適応性」は能動的な資質であるということが見えてくると思います。

さて、「新しい生活様式」という言葉がたった1年で古く感じられるという話をしましたが、同じ感覚を抱いている方もいることでしょう。これは、「新しい生活様式」を「当たり前の習慣として良識ある生活様式」にするべく、自ら能動的に行動を変える努力をした結果であり、まさに「適応性」の現れではないかと考えられます。

クリフトンストレングスにおける適応性(Adaptability)とは

では、クリフトンストレングスにおいて「適応性」がどのような資質と言われているかについて、詳しく見ていきましょう。

「適応性」は英語で「Adaptability」と書き、「適応する能力がある」「適応することが可能」と言う意味を持ちます。この資質が高い人は、流れに沿って進むことを好み、今を大切にしつつ、それぞれの時点で進む方向をひとつずつ選択することにより、将来を見極めていくのです。そのため、物事が実際に起きたタイミングで対処することを得意とし、人生で何かが起こっても、すぐにギアチェンジをすることができるので、状況の変化にも対応していけます。

仕事では、予測不能な将来のことを心配して無駄なエネルギーを消費することなく、スキルの改善や目標達成に力を注ぐことができ、また「今この瞬間」を最も重要なものと考えることで、計画が予定通りに進まなかったとしても臨機応変に構えられる。さらに柔軟性があり、同時並行で物事をこなさねばならない局面においても高い生産性を保つことができる―それこそが、「適応性」の資質なのです。

ストレングス4つの領域では「適応性」は「人間関係構築力」の領域にある資質で、他の人が混乱するような場面でも、冷静に人を安心させるよう立ち回れるかが問われます。突然の事象や予期せぬ回り道にもイライラした感情を抱かず、むしろその状況を歓迎したり、楽しんだりできるかどうか。その意味で、社会的な状況の変化や、リモートワークなど勤務形態の変化があったこの1年は、「適応性」が上位資質の方にとってはまさに、自身の「強み」を生かせる絶好の機会になったのではないでしょうか。

「適応性」が上位資質に入っているマネジャーがこの状況下にできること

「適応性」が上位資質に入っているマネジャーやリーダー層の方は、今の時代の変化に対応していく状況下で、どのようにこの資質を生かしていけるでしょうか。

まず、気持ちの切り替えがなかなかできない部下に、「新しい生活様式」を受け入れるための自身の考えを共有し、過去を乗り越える手助けをするということが挙げられます。自分が適応してきた経験を話すことは、間違いなく役に立つでしょう。また、リモートワークで仲間が身近にいないために悩みを相談できず、不安を抱いているチームに希望を見せていくことも、「適応性」が上位資質のマネジャーにとっては難しくないことでしょう。その場の対応次第で結果を変えることが可能だという考えを共有し、「どんな対応をすればよりよい結果を生み出せるか」といった質問を投げかけるなどして、一緒に方策を考えていくこともできるかと思います。

まとめ

今は、大きく時代が変化していく過渡期です。受け入れ難い様式にも従い、自分の生活スタイルを変化させねばならないことも多々あります。「適応性」があまり使えていない、もしくは得意ではない人にとっては、一見、困難に感じるかもしれません。しかし、クリフトンストレングスの基本理念において「弱み・短所の克服」は「強み・長所の活用」に比べてさほど重要ではなく、自分の上位資質(強み)を使って、どう補うかが焦点になります。これから訪れる真の個性を生かす時代には、自らの強みを知り、活用する術を身に付けることこそが求められるのです。

次回も普段の業務で活用するために、ストレングスを使ってどういった資質の生かし方ができるかをお話ししていきたいと思います。

ご興味のある方は、書籍もお薦めではありますが、まずは、クリフトンストレングス・テストでご自身の資質を知り、「強み」を活用するための基礎づくりをされることをお薦めいたします。

【参考】
GALLUP クリフトンストレングス日本語サイト
URL https://www.gallup.com/cliftonstrengths/ja

ご興味のある方は、弊社お問合わせサイトからご連絡ください。

 
 
 

■プロフィール
壁山 恵美子(かべやま えみこ)
株式会社 ブレインスイッチ 代表取締役
YAMA HOTEL & ROOFTOP BAR(ミャンマー/ヤンゴン)
Chief Information Officer(CIO)
 
イベント・出版業界を経て、ソフトバンク(株)に入社。情報セキュリティおよびリスクマネジメントを専門分野とするグループマネジャーとして業務に従事。その後、J-SOX、IT統制、システム監査等の経験を経て独立。現在は、上場企業の経営企画部門およびPR・マーケティング戦略などのコンサルティングに携わる。また、中小企業の経営者向けコンサルティングや人材育成の研修カリキュラム開発なども展開。さらに、YAMA HOTEL & ROOFTOP BAR(ミャンマー / ヤンゴン)にてCIOとして人材育成をする傍ら、ミャンマー進出コンサルタントとしても活動。Gallup認定ストレングスコーチとして、組織のマネジャーなどにコーチングおよびコーチング型マネジメント手法を指導している。
 
※保有資格
・Gallup認定ストレングスコーチ
・Tony Buzan公認 マインドマップ・インストラクター
・Peter Walker氏 公認 ベビーマッサージ&ベビーヨガインストラクター
・高等学校教諭第Ⅱ種(公民)免許
 
URL https://brainswitch.jp/
個人Webサイト https://kabeyama.jp/
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Instagram @kabeyama
Twitter @Kabeyama_Emiko
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