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海外ビジネスの指南役! 小田切社長の連載コラム

「海外展開を進めていくうえで、特に現地の人の気質やものの考え方が知りたい」。そんな声にお応えして、海外ビジネスの経験を豊富に持つ(株)サザンクロスの小田切社長が、世界各国の国民性を解説!より良い人間関係を構築することは、ビジネスの大きな成果へとつながるはずです。第2回は、前回に引き続きタイ人についてお話しします。

皆様、こんにちは。(株)サザンクロスの小田切武弘です。前号ではタイ人にフォーカスをあて、仕事の進め方や時間に対する考え方、叱り方、転職という4つのテーマで論じてきました。日本人とは、ずいぶん異なる気質があることをご理解いただけたかと思います。

今号では、こうしたタイ人気質を踏まえたうえで、日本人、あるいは日本本社としてどのように対応していけば、タイ人スタッフとの間で相互理解や信頼感が深まり、円滑な業務活動が促進できるかを考察していきます。

仕事の進め方について

前号で、タイ人スタッフの多くは日本人のように積極的にメモを取らず、細かな報連相や、作業スケジュールの逆算による立案作業などもあまり行わないと述べました。これらは宗教の影響からか、目上や年上、上司に対して自ら積極的に話しかけるという傾向が少ないことも関係していると思います。

タイ国内の日系企業や欧米企業では、社員教育の一環としてミーティングの際には必ずノートと筆記具を持参させ、重要事項のキーワードなどについてメモを取るように指導している会社が多いです。また、期日までにしっかりとした報告書を提出してもらうために、上司が報告書の骨子や5W1Hを列挙するほか、中間報告の日時をあらかじめ決めて報告してもらうよう指導しているケースも見受けます。要するに、タイ人スタッフに対して手取り足取りの指導を行い、ビジネス上の一つの習慣を理解して仕事を進めてもらうやり方です。きちんと指導すれば、彼らはすぐに実践してくれます。ただし、毎回同じように指導しないと、いつの間にか元どおり、もしくはそれに近い状態になってしまうので注意が必要です。大切なことは、上司がいつも温かい目で細かな部分までフォローしてあげることだと思います。

時間に対する捉え方

仕事の進め方同様、タイ人は時間についても“逆算の考え方”をあまりしないようです。ミーティングや商談が始まる時間は一応気にはしているものの、日本人やドイツ人のような神経質なほどの遵守意識は高くありません。こうした意識は、前号でのコラムでも記述したように、特にバンコク市内の渋滞というのが一つの原因になっているのかもしれません。多少遅れてしまっても、お互い様だと認識している部分もあると思います。

それでは、約束の時間に間に合うように行動してもらうためには、どうしたら良いでしょうか。これについては、先述した仕事の進め方同様に、上司とタイ人スタッフでコミュニケーションを取っていくしかありません。「商談10分前には客先の会社に到着したい。そのためには何時に自社を出発すれば間に合うのか、渋滞などのトラブルを見越した余裕を持った時間設定で動いてくれ」と、根気強く伝えることが良いと思います。

叱り方について

タイ人はプライドが高く、自分が常にどう見られているかを気にしている人が多いと思います。よって、他人の前で叱るような行為は、何か特別の強い理由がない限りはご法度です。適切な叱り方をしてあげてください。

一番無難なやり方をご紹介します。まずは上司がいつもの表情、いつもの声のトーンで相手に声をかけ、あるいはメールで伝達して別室などに呼びます。1対1になっても決して険しい顔にならず、粛々と話を進めてください。具体的には、最初にタイ人スタッフに仕事の近況や進め方など自由に話してもらう。ひととおり話を聞き終えたところで、良い部分はきちんと評価し褒めてあげましょう。その後、上司が本題を切り出していきます。タイ人スタッフからは反論などがある場合が多いので、都度確認をして聞いてあげることです。そうやってコミュニケーションを交わしていく中で、「確かに、この部分は見落としていた」「あのケースでは、先に報告や相談をしておけば良かった」ということを自ら気付かせることが重要になります。

さらに付け加えるとすれば、ミスの内容が会社に大損害を与えたり、相手に対して精神的、あるいは肉体的にダメージを負わせたりするようなことにならなければ、初回はほどほどで終わらせることです。あまりくどくど叱るのではなく、再びミスを起こさせないために、どのような具体的な改善策を出すか、またそれをしっかりとノートに取らせることが大切になります。そのような注意を受けるのは、会社がそれだけ本人に大きな期待と信頼を寄せていることを、上司から優しい口調で伝えてあげてください。

転職に関する考え方

タイ人スタッフは、給与を支払ってくれている会社や、面倒見の良い上司に対して感謝の念を抱いています。言葉には出さなくとも忠誠心があるわけです。ただ、転職になれば別問題になってきます。自分の考えや条件に合う場合には、スパッと転職をする傾向が強いです。プロ野球のFAでも、他球団で現状よりも良い年俸や複数年契約、ベターな条件の提示があれば、ほとんどの場合移籍していきますよね。タイ人にとっても同じことが言えます。

ですから、もし皆様の会社でタイ人スタッフから退職願いが出されたら、まずは理由を尋ねてみてください。そのうえで、残留してほしいスタッフであればその旨を伝え、必要に応じて引き留める方法や条件について、きたんのないコミュニケーションを交わします。それでも本人が退職を希望する場合には、笑顔で気持ちよく送り出してあげるべきです。結局のところ、自社ではそこまでの条件提示しかできなかったわけですから、素直にそれを受け止めましょう。いつか、辞めたスタッフに「退職して後悔した」と思わせるくらい、より良い会社にするべく、会社や上司が一生懸命に励む姿が美しいと思います。

まとめ

日本とタイ両国では、文化や宗教、生活環境などあらゆる点が異なります。したがって国民性が違うのも当たり前です。どちらが正しいか正しくないか、勝っているか、劣っているかということを問うものではありません。

しかしビジネスシーンにおいては、約束した書類を期日に提出したり、時間を守ったりするのは、どの国籍のスタッフであっても守るべきルールであり、言い訳は通用しません。お互いを尊敬し合い、気持ちよく良い仕事を行うためには、きちんとしたコミュニケーションが必要なのです。

いかがでしたか。お伝えしたいことは多々あるものの、誌面の関係で割愛した部分もございます。どうかご容赦ください。次回は韓国人気質と、韓国でビジネスを行うポイントについて筆を進めていきます。どうぞお楽しみに。

■プロフィール
株式会社 サザンクロス 代表取締役社長
小田切 武弘

海外志向が強く、学生時代に海外留学を経験。学業修了後は、大手電気機器メーカーや飲料・食品メーカー、総合商社など数社にわたって、米国、インド、韓国、東南アジアといった諸外国に駐在。その中で、海外でのビジネスに苦戦する日本企業の存在を知り、自らのノウハウを提供したいという思いが芽生える。2017年7月7日、企業の海外展開をサポートする(株)サザンクロスを設立した。
 
http://sc-southerncross.jp/

 
 

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