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コラム

After Five デキる大人のアソビ場 サイエンスバー インキュベータ

実験室のような異空間で アカデミックを身近に楽しむ
 

 こじんまりとした飲食店が軒を連ねる新宿区荒木町。その路地裏に足を踏み入れると、シルバーの外壁に知的でシンプルなデザインの看板を掲げる店が目に入る。サイエンスバー インキュベータだ。

同店は、大学院で発生生物学を専門に学び、研究者としてのキャリアを持つマスターが、異分野の研究者同士のトークに面白みを感じ、一般層にも一緒に楽しんでほしいと開いたコンセプトバーである。

店内には、普段目にすることのない研究者用の実験器具や科学関係の専門誌が並んでおり、科学者の実験室に入り込んだかのような雰囲気だ。開店当初は機器の数も少なかったが、メニューの改訂などに伴い、必要に応じて増やしてきたところ、現在はバーカウンターを埋め尽くすほどに。店内にはワインをはじめ、多種のボトルが並んでおり、ソムリエ資格を持つマスターの注いだ本格的なワインが嗜める。さらに、グラスにはマスターこだわりの実験用容器を使用。ビーカーに注がれた上物のワインを味わうという普段できない体験も同店ならではだ。サイエンスバーというコンセプトを楽しみたい人には実験用容器で、純粋にワインの味や香りをより堪能したい人にはグラスで提供することで、多くの人のニーズに応えられるようにバランスを取っている。そして、実験用容器を洗う際は、本来の実験と同じように純水を使用。さらに、不純物が付くのを防ぐために、グラスは拭き上げずに自然乾燥させるなど、細部にまでマスターの研究者魂が光る。

そんなマスターの一押しメニューは、イチゴのデオキシリボ核酸の塊を浮かべたカクテル「DNΑ」。料理は全てマスターが手作りしていて、新メニューも意欲的に開発している。現在は、来店客が実験を楽しみつつ食事ができるメニューを試作中なのだそう。

また、長年にわたってアカデミック業界に携わる中で築いてきたマスターの人脈を生かし、ゲストを招いて開かれるトークショーも同店の特長の1つ。最先端の研究に携わる科学者のトークが聞けたり、医師にプライベートな場だからこそできる質問をしたりと、あらゆる専門家と身近に接することができるのだ。トークは、“誰でも気軽に参加しやすいように、あえて形式ばったものにはせず、飲み会でマニアックな人が語り出したような雰囲気”をコンセプトとしているのだとか。

メインの客層は、2軒目や3軒目で訪れる30代くらいのグループ客や、男女問わず理系の大学生が訪れることも多いそう。中には、学生時代に実験や科学が好きだった人が当時を懐かみに来たり、海外から観光客や研究者が訪れたりすることもあるそうだ。

マスターの尽きることのない研究心で、今後もさらに面白く魅力的なサイエンスバーがつくられていくことだろう。

1 赤ワインと白ワイン、それぞれ4種類の飲み比べができる「Tasting Set in Test Tubes(TTST)」。試験管に注がれたワインは見た目のインパクトも強い

2 スルメイカのアルコールランプ炙りは、器やはさみにもこだわった一品で、理科の実験のような懐かしさを感じることができる

3 店内には科学者が実際に使う本格的な実験機器が並んでおり、高額なものも多く、訪れた研究者が驚くことも

4 メディカルユニホームブランド「BEAMS MEDICAL」から発売されたプロユース向けの高級白衣も用意しており、科学者の気分を味わうことができる

 
【Focus!】
より多くの人にとって、研究者を身近な存在にしたいという思いを持つマスターは、同店でそれを実現できるように、さまざまな工夫を凝らしている。日々、訪れた人々は、ダイエットの悩みなど日常的なものから、専門的な科学に関する質問まで、どんなことでも気軽に研究者に投げかけることができ、そういった疑問を、研究者が科学的根拠に基づいて分析してくれるのだ。
もし質問に答えられる研究者がいなかったときに役に立つのが、マスター考案の「研究者に何でも聞いてみるノート」。意見や答えが気になる疑問を何でもこのノートに書き込めば、同店を訪れた研究者が答えを書いておいてくれるのだ。その中には、真面目な解答だけでなく、冗談の利いたやりとりもあり、ここにしかない1冊が出来上がっていた。

 
 
 

サイエンスバー インキュベータ
【所在地】
〒160-0007 東京都新宿区荒木町7 新駒ビル 1F
【TEL】
03-5925-8832
【営業時間】
火~土曜 18:00〜2:00
【定休日】
日曜・月曜・祝日
【Facebook】
https://www.facebook.com/incubator.sc/

 

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