コラム

気鋭のトップが語る Vol.2

 
AOSテクノロジーズ(株)から、モバイル事業をメインに手掛ける企業として2015年に分社化したAOSモバイル(株)。現在は、双方向型SMSサービス「AOS SMS」、社内のビジネスチャット「InCircle」という2つのコミュニケーションツールを提供しており、原田典子社長は同社の設立前からその成長を支えてきた人物である。社長の海外経験を存分に取り入れた、独自の事業展開や経営方針に迫る。
 

■プロフィール
AOSモバイル 株式会社
代表取締役社長 原田 典子
 
1974年福岡県生まれ。小中高時代をドイツで過ごし、慶應義塾大学経済学部卒業後、1998年にドイツ系ソフトウェア企業のSAPジャパン(株)入社。2001年、AOSテクノロジーズ(株)に転職し、アメリカ支社設立のため渡米する。2010年の帰国後、モバイル事業部立ち上げに参画。2015年、同事業部がAOSモバイル(株)として分社化するのに伴い、代表取締役社長に就任する。
 
 
■会社情報
AOSモバイル 株式会社
本社所在地  〒105-0001 東京都港区虎ノ門3-2-2 虎ノ門30森ビル8F
設立  2015年3月10日
資本金  330百万円(資本準備金を含む)
事業内容  B2Bモバイルコミュニケーションアプリ開発&サービス
URL http://www.aosmobile.com/

 

海外経験を武器に、新事業へ

世界へ目を向ける視点というのは、小中高の幼少期をドイツで過ごす中で、自然と身に付いていたと思います。日本の大学を卒業してドイツ系企業に入社したのも、その経験があったからです。ただ、ドイツは日本と似ている面が多く、外国という印象ではなくて、私の中では「海外=アメリカ」というイメージでした。そのため、転職先であるAOSテクノロジーズ(株)でアメリカ法人設立の話が持ち上がった時は、率先して「私も行きたい!」と希望し、渡米することになりました。

当初携えていたのは、日本で個人向けに販売していたデータ復元・抹消用のPCソフトを英語化し、アメリカで販売するというビジネスモデルです。しかし、文化や商習慣も全く異なるため、日本と同じ方法ではうまくいかず・・・。結局その事業は断念し、海外製品の独占販売権を得て日本で販売する方針へ転換することに。日本にない製品や提携先を開拓することが主な仕事になりました。

アメリカには日本のようなキャリアメールが存在せず、当時はLINEやFacebookといったツールも生まれる前でした。そのためコミュニケーションの中心はSMSなのですが、それが日本で普及していないことに気付き、ビジネスとして持ち込むことにしたのです。帰国後にモバイル事業を立ち上げて代表に就き、2015年にAOSモバイル(株)として分社化すると、そのまま社長に就任しました。

当社が提供しているのは、法人・官公庁向けの2つのコミュニケーションツールです。そのうちの1つ、「AOS SMS」は、世界の携帯電話に実装されているSMSを使って、配信元と受信者の双方向でやり取りできるサービスです。今でこそ自動応答が返ってくる“bot”は一般的ですが、2011年にリリースした時は、企業の方もユーザーの方もピンときていなくて。ただ、実際にそのサービスが機能している様子をアメリカで目にしていたので、絶対に日本でも需要があると考え、事業を確立させました。大手3キャリアと直接契約をしており、確実にユーザーに届けられる信頼感がこのサービスの強みです。

もう一方の社内ビジネスチャット「InCircle」は、2014年にスタートした当初からクラウド型・オンプレミス型の両方を用意し、大手企業様にご利用頂いています。データ復元・抹消ソフトを手掛けてきた経験を生かし、大手企業様のセキュリティー基準を満たす情報漏洩対策に強いサービスです。チャットに特化したシンプルなツールだからこそ、企業ごとの設定のカスタマイズ性など、使いやすさを重視しています。

 

“自分は自分でしかない”経営意識

親会社がカンパニー制を取っていたため、モバイル事業の代表に選ばれた時から、社長就任の心構えはしていました。IPOで上場する夢に、子会社の代表として挑戦したいという気持ちもあったんです。就任後、多くの経営者の方にお会いする機会があり、さまざまなお話を聞きました。その中で気付いたのは、結局自分は自分でしかないということ。ソフトバンクの孫正義さんや、京セラの稲盛和夫さんのような名経営者の考え方は学ぶところが多いと思いますし、傍で見てきた親会社の社長からの影響も大きいです。しかし、それを真似しても私が孫さんになれるわけではありませんし、逆に孫さんも私になることはできません。同じ経営者という立場でも、これまで見聞きしてきたこと、キャラクター、会社のステージはそれぞれ異なります。他の方の考えも良いエッセンスとして取り入れながら、自分で経験していくしかないのです。

私は会社づくりにおいて、海外で過ごした時間が長い影響で「結果を重視して、自由に効率良く」という方針を取っています。だからこそ、社員とは良い意味でフラットな関係を築き、私がいないと何も決まらないなんてことはなく、役員ではないメンバーも含めて各事業部長に権限を譲渡しているんです。その根底にあるのは、会社の看板を背負って働くという考え方ではなく、ダブルワークも当たり前で、自分の名前で仕事をするという考え方。ですから当社に在籍する間のパフォーマンスや結果を重視し、評価する制度を整えています。会社と社員の互いにとって良好な働き方ができるよう、心掛けているんです。
 

日本発ならではの柔軟性で顧客満足を

当社が提供するツールは、どちらも毎月の更新でお金を頂くストックビジネスです。他社の新しい製品が生まれる中で、私たちの商品を選んで頂いたからには、精一杯のサービス向上に努めなければなりません。そのため、設立後の1年ほどは新規獲得に注力していましたが、現在は既存のお客様のご要望を伺うことも大切にしています。それらをまとめて、アップグレードにすぐに取り入れられるのは、日本企業が自社でつくっている製品ならでは。海外企業が開発している場合は、例えば日本独自のモバイル端末「ガラホ」に対応させるのは難しいでしょう。そうした日本企業特有のお悩みに対しても、細やかに・迅速にお応えして解決できるという点は大きな強みです。

また、これらは「データ」に基づいた事業です。今後はデータ解析とAIを活用し、仕事の効率化を支えるプラットフォームとして、さらに発展させたいと考えています。まずはそれを持ってアジアに進出することを視野に入れ、今は提携先を増やしているところです。そうして、当社が持つSMS配信のインフラを、未開拓の分野へとつなげていこうと思います。
 
 

<<前回の記事  株式会社 ミクシィ・リクルートメント  |

 
 


amazonからのご注文
2018年9月号
COMPANYTANK 2017年11月号

1999年、25歳で世界7大陸最高峰登頂を達成し、当時の最年少記録を打ち立てたアルピニスト・野口健氏。15歳で初めて山に登って以来、登山はもちろん、清掃登山をはじめとした環境問題や社会貢献に関するさまざまな活動に勤しんできた。枠にとらわれない挑戦を続ける同氏を突き動かすものとは何なのだろうか。その唯一無二の哲学を伺った。

定期購読のご案内
 
LINE@無料会員登録はこちらから

LINE@無料会員登録はこちらから

interviewer's eye

カンパニータンクのインタビュアとして活躍されている各界の著名人たちに本誌編集局が逆インタビュー。

矢部 みほ 水野 裕子 川﨑麻世 鶴久 政治 杉田 かおる 名高達男 時東ぁみ 畑山隆則 宮地 真緒