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コラム

移り行く世の中で生きるビジネスパーソンへ贈る 新しい時代に自分軸を持つ思考のヒント

株式会社 ブレインスイッチ
代表取締役 壁山 恵美子

 
さまざまな物事が目まぐるしく移り変わり、多くの情報が発信されて錯綜している昨今。その中で何を基準にし、何をすればよいのか、取捨選択に悩まされるビジネスパーソンも多い。本連載では、大学院在学中から個人事業主として芸能界・出版業界など多様なフィールドで活躍し、30歳で転職した上場企業ではスピード出世を果たすなど、確固たるビジネスノウハウを蓄積してきた、経営戦略コンサルタント・ストレングスコーチの壁山恵美子氏が、これからの新しい時代に向けて、仕事・ライフスタイル・コミュニケーションにおいて自分の軸を持って考えるための“思考のヒント”を、自身の業務や日常生活での実体験に基づき伝えていく。
 
あけましておめでとうございます。新しい年が始まりましたね。読者の皆様には旧年中の御厚情、誠に感謝申し上げます。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。 今回は、従兄と久しぶりに電話をした時に感じたことについてお話しします。

ふとしたことでつながりが復活

近年、インターネット環境やスマートフォンのアプリケーションなどがとても便利になり、昔のように電話回線だけの生活から一変、家族や友達、同級生、親戚であっても、無料通話アプリのチャットを使って気軽に近況確認をすることができるようになったと感じます。

数年前に母が他界した際、親戚とのつながりが久しぶりに復活し、その後は叔父や叔母と定期的に連絡を取ったり、祖母のお墓参りに同行したりする機会も増えました。叔父や叔母はもちろん母と同じ年代なので、折り畳み式の携帯電話、いわゆる“ガラケー”でしか連絡が取れず、叔父のメールアドレスに時々メールを送ることで、近況を話したり、いわゆる安否確認のようなコミュニケーションを取ったりということを定期的に行うようになったのです。

そのような関係性から始まり、都心部に住む従兄の連絡先も叔母から聞いていて、数年前からチャットで連絡が取れる状態ではありました。しかしながら、お互いに仕事も忙しく、そもそも15歳くらいの頃に会ったきり、それぞれの人生が経過して現在に至っているため、時々チャットで必要事項を話してはそれっきり、という感じで、「ご飯でも食べよう!」とか「飲みに行こう!」とメッセージでは書いていたものの、結局この3年ほどはコロナ禍もあって会う機会を得られませんでした。

最近になってようやく都心部でもマスクをしていれば外出可能になり、夜の会食も以前のようにとはいかなくても、問題ない状況になったことから「そろそろご飯でも行こうか!」と声をかけてみようと思い、久しぶりにチャットを入れてみたのですが・・・“虫の知らせ”とはよく言ったもので、何の気なしに連絡した時に限って、想定していない事象が起こるのです。今回はメッセージを送ったところ、「叔母が病院に入院した、検査入院だから大事に至ることはない」という返信がきました。叔母もそれなりに高齢で、2週間ほどの入院とはいえやはり心配になります。私の母は80歳目前で病気になり入院。退院してからはもちろん一人暮らしをさせるわけにもいかず、介護生活が始まりましたが、高齢で入院すると、どうしてもベッド生活で体を動かさない間に体力が落ちて、体だけでなく頭(脳)も活動が弱まってしまいます。結局、長期入院の後に、認知症と診断される結果になりました。そのような過去があったからこそ、叔母が入院したと聞いた私はいっそう心配になったのです。

電話をかけることの緊張感

仕事の忙しさを言い訳に、基本的なコミュニケーションはメールやチャットで済ませる毎日を送っていましたが、今回の叔母の入院をきっかけに、従兄に電話をしてみました。思い返せば、従兄と話すのは35年ぶりで、年齢は近かったのですが実家によく集まっていた中学生の頃はあまり話をしていなかったと記憶しています。祖母が他界する前は母方の実家に集まることが多かったのですが、高校生、大学生と成長していくにつれてそれぞれの時間を過ごすようになり、お正月やお盆など限られた機会にしか帰らなくなったのです。そもそも子どもは成長すると親と一緒に実家に帰省することもなくなっていくもの。そういうわけで、従兄とは大人になってから話をした記憶がまったくありませんでした。

前述したとおり、電話をかけるという行為は、私にとっては今や日常生活ではほとんどなくなり、ITが発達してさまざまな手段で通信が可能となったこの令和の時代だからこそ、ちょっとした緊張を感じます。固定電話しかなかった子ども時代に友達の家に電話をして、ご両親のどちらかが電話口に出るかもしれないという緊張感とはまた別の気まずさのような。ましてや、気が付くと35年ぶりになってしまっていたので、どんな声をしていたか、当時はどんな話をしていたのか、どんな性格だったのか、無沙汰となっていたこの35年間はどのように過ごしてきたのか、どんな仕事を経験してきたのか・・・などなど。何もかもが知らないことばかりで、職業柄、話をすることには慣れているはずの私でも「もしもし」の最初の一言から、思わず身構えてしまいました。

35年ぶりの会話

緊張しながら電話をかけたものの、いざ従兄が出ると、たった1秒で過去のすべてがつながるような感覚になりました。SF映画でよくある、光の束がものすごい速度でお互いをつなげる映像というか、走馬灯のように過去へのタイムスリップが起こるというか。声を聞いただけで、35年前の状態に戻されるような、何とも表現し難い瞬間的な緩和、緊張が解れていく不思議な感覚がやってきたのです。

この年齢になると、周囲の仕事仲間であっても普通は「◯◯さん」と“さん”付けで呼ぶのが当たり前です。しかし私自身は研修講師をしている時も「◯◯さん、◯◯先生」と堅苦しい感じで呼ばれることがあまり好きではないので、「“壁ちゃん”でいいですよ。私の受講生は老若男女を問わず皆さんそう呼んでいますから」と言うようにしています。とはいえ、実際に「壁(かべ)」とか「壁ちゃん」と呼ぶのは同級生や本当に親しい仕事仲間だけ。年齢を重ねて年配者になるにつれて、敬称を付けた呼び方をされることが多くなりました。

しかし、電話口の従兄は開口一番、苗字ではなく下の名前に「ちゃん」をつけて呼んで、私のことを確認したのです。この呼び方をするのは、幼稚園からの同級生か親戚しかいません。その一瞬で、幼少期に祖母の家や親戚の家で一緒に遊んだ時の関係に戻ったような状態になりました。電話の目的は、叔母の容態と入院期間、現在の状況について聞くことでしたが、久しぶりの会話を喜んでくれたのか、従兄のほうが、とにかく私にたくさんの質問を投げかけてきたのです。あまりの多さですべては覚えていませんが(笑)、最近の仕事はどんなことをしているのか、会社員時代はどうだったのか、学生時代はどんな活動をしていたのか・・・と時系列を追って聞かれ、電話をなるべくかけないようにしているという普段の生活スタイルを考えると、あきれるくらいの時間を費やして話し込んでいました。私も知りたいことがたくさんあったので、互いにいろいろな質問をしながら、会っていなかった期間のパズルを一つずつ埋めていくかのように話が続き、お互い、世間では「オジサン」「オバサン」と呼ばれる年齢になりましたが、電話中だけは幼少期にタイムスリップしたかのようでした。まるでそれは、中学生が放課後にワイワイ楽しく集まって延々と話をしているような状態。電話を切った後、「あれ、従兄ってこんなによく話をする男の子だったかしら」と思ったものの、現実に戻ってスマートフォンの画面を見ると、35年の時を超えての通話時間は4時間42分に及んでいました。

疎遠になっている人でも、声を聞いて話をすれば当時の絆が自然とよみがえるものです。皆さんも、コロナ禍などで交友が途絶えている親族や旧友の方がいれば、この機会に連絡をしてみてはいかがでしょうか。

※ご質問・ご意見・ご感想はメールでお受けしています。また、ご相談などもお気軽にご連絡ください。皆様のヒントになるコラムを目指していきますので、引き続きどうぞよろしくお願い申し上げます。
 

■プロフィール
壁山 恵美子(かべやま えみこ)
株式会社 ブレインスイッチ 代表取締役
YAMA HOTEL & ROOFTOP BAR(ミャンマー/ヤンゴン)
Chief Information Officer(CIO)
 
イベント・出版業界を経て、ソフトバンク(株)に入社。情報セキュリティおよびリスクマネジメントを専門分野とするグループマネジャーとして業務に従事。その後、J-SOX、IT統制、システム監査等の経験を経て独立。現在は、上場企業の経営企画部門およびPR・マーケティング戦略などのコンサルティングに携わる。また、中小企業の経営者向けコンサルティングや人材育成の研修カリキュラム開発なども展開。さらに、YAMA HOTEL & ROOFTOP BAR(ミャンマー / ヤンゴン)にてCIOとして人材育成をする傍ら、ミャンマー進出コンサルタントとしても活動。Gallup認定ストレングスコーチとして、組織のマネジャーなどにコーチングおよびコーチング型マネジメント手法を指導している。
 
※保有資格
・Gallup認定ストレングスコーチ
・Tony Buzan公認 マインドマップ・インストラクター
・Peter Walker氏 公認 ベビーマッサージ&ベビーヨガインストラクター
・高等学校教諭第Ⅱ種(公民)免許
 
URL https://brainswitch.jp/
個人Webサイト https://emikokabeyama.com/
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Instagram @kabeyama
Twitter @Kabeyama_Emiko
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