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コラム

海外ビジネスの指南役! 小田切社長の連載コラム.16

「海外展開を進めていくうえで、特に現地の人の気質やものの考え方が知りたい」。そんな声にお応えして、海外ビジネスの経験を豊富に持つ(株)サザンクロスの小田切社長が、世界各国の国民性を解説!より良い人間関係を構築することは、ビジネスの大きな成果へとつながるはずです。第16回は、日本のビジネスパーソンが海外赴任する前に日本でしておくべき準備についてご紹介します。

皆様、こんにちは。(株)サザンクロスの小田切武弘です。本誌の2020年9月号から、海外でビジネスを進める際の現地ローカルスタッフへの接し方や、仕事の依頼の仕方、スムーズなコミュニケーションの取り方などにフォーカスしたコラムを連載しております。

このシリーズでは皆様から特にご要望が多かったタイ国関連のコラムから始まり、韓国、米国、中国、インド、ロシア、アラブ諸国と連載を続けてまいりました。

今号と次号については、現地に着任してからの留意点と、海外出張を含め、海外赴任する前に日本でどのような準備をしていくことが大切であるかを、総集編的に述べていこうと思います。

海外出張を含め、海外に赴任しそれぞれの国や地域でビジネスをうまく回し、成功させることは楽なことではありませんし、魔法や特効薬もありません。海外ビジネスを成功させるためには、実は海外に向かう前、日本にいる時がキーになります。

① 語学

海外でビジネスをするなら、日本にいるうちに英語や訪問国の母国語をある程度習得しておくのが理想です。そのレベルに達している人はわずかで、決して簡単なことではありませんが、もし、あなたが将来海外出張や海外駐在をしたいという目標を掲げているのなら、いつ辞令をもらっても大丈夫なように準備しておきましょう。語学の習得は短期間ではできません。また好き嫌いもあると思います。少しずつでも良いので継続して勉強をしていくことが最善・最速の方法であると筆者は理解しています。ひと昔前になりますが、「語学(言葉)なんて現地に行けばどうにかなるもの。場合によっては身ぶり手ぶりでも伝えられるし、外国人はわかってくれるから、それよりも自分の仕事関係の知識や経験を積むほうがもっと大切だ」と豪語する経営者や上司は少なからずいました。一理ある考えかもしれませんが、結局は言葉を話すことができなければ仕事でも日常生活でも、相手との円滑なコミュニケーションは取れません。ですから、そうした根性論は筆者には責任感や愛情のある言葉にはどうしても聞こえないのです。特に海外駐在の場合には、おおむね駐在予定時期の半年ほど前に会社から辞令や指示が出るものですが、短い場合には1ヶ月前に突然辞令が出ることもあります。そういうケースに備え、少なくとも英語だけは身に付けておくことをおすすめします。

② 業務と会社情報について

どのような業種・職種であれ自分の業務を理解し、きちんと遂行することは必須です。海外赴任地でも同じ仕事をする場合は、その業務について英語や現地語で説明したり、商談をしたりすることもあるでしょう。自分には通訳がいる、または日本語のできる現地人がいるから心配ない、という甘い考えは捨てましょう。海外赴任中にそれまでとは異なる業務に携わったり、職位が変わり業務範囲が広くなったりすることもあります。その時には新たな業務をこなせるように語学以外の準備・勉強も当然必要となってきます。

また、もう1つ忘れてはならないのは、自分が所属する会社の情報をしっかり頭に入れておくことです。現地ローカルスタッフや現地企業のお客様から質問された時に答えられないと、恥ずかしい思いをすることになりますから。

③ 性格・キャラクター

海外で仕事をする場合、まず明るく笑顔で振る舞うことが重要になります。表情が暗いと、人間関係を構築したり、スムーズなビジネス環境をつくったりする際に大きなマイナスになります。積極性や爽やかな態度も同様です。「自分には明るさや積極性はあまりないけれど、真面目に振る舞っていれば外国人は理解してくれるだろう」とは強く思わないほうが良いでしょう。ここに関しては自助努力で変えていく必要があります。

また日本にいる時にももちろん重要なことですが、「声をかけられやすい、話しやすい、他人に優しい、良く気が付く、親切、礼儀正しい、約束や時間、ルールを守る、相手を非難しない、言い訳をしない」等々・・・これらの常識は、海外で仕事をするうえで実は一番大切なことかもしれません。外国人は日本人のそのような部分を良く観察しています。明るく、かつ堂々と振る舞えば、相手の態度も大きく変わってくるものです。

④自国と駐在する国の知識

自分が生まれ育った国の歴史、文化、風習、宗教、経済、政治のことは、海外へ赴任する前に基礎知識として再度確認をしておきましょう。それらに加えて、これから駐在する国のことも十分に勉強をしておくことが重要です。例えばイスラム教徒が多いアラブ系の国に駐在し、現地の顧客と一緒にいるにもかかわらず、昼食に平然と豚肉を食べたり、夕食の際にビールをがぶがぶ飲んだりすることは、非常識極まる行為となってしまいます。ビジネスパーソンである前に、まず人間として相手の方や国をリスペクトするようにしましょう。

⑤趣味を持っておくこと

自分が長くやってきた趣味については、可能なら海外赴任先でもぜひ続けることをおすすめします。例えば、映画鑑賞、ピアノ、カメラ、絵画、カラオケ・・・。これらを通して現地でもすぐに友人ができ、それが輪として広まっていくことでしょう。また、ゴルフやテニス、サッカーなどのスポーツが好きであることも、現地の方から受け入れられやすくなる要因になります。観戦でも自分でプレーするのでも良いので、続けてみましょう。

いかがでしたでしょうか。海外に赴任する前には、自分の仕事以外にもいろいろな準備が必要となります。海外に限らず、国内転勤でも同様のことが言えるでしょう。

特に語学については、繰り返しになりますが日々の積み重ねで上達していくものなので、海外の仕事を希望される方は長い時間をかけて準備することが必要となります。そうして海外赴任初日から良いパフォーマンスを披露できれば、この上ない滑り出しになるはずです。

読者の皆様の中には、「これはあくまで理想論であって、現実的にこのようなことをすべてやっていくことは難しいだろう」と感じられる方もいらっしゃるかもしれません。筆者も若手社員時代から今回書き記したことができるように努力してきましたが、約40年が経過した今でも、1つとして完全にできているものはありません。しかし、大切なのは初めから「できない」と思うのではなく、現実を理想に近付けていく自分の気持ちと、そのための努力ではないかと思っています。

以上、今回は海外でビジネスをする前、日本にいる時にしておくべきことのポイントを申し上げました。次回は海外に赴任した後にどのようなアクションを取っていくか、何に留意していくかについてお話ししようと思います。お楽しみに。
(次号へ続く)

※海外赴任前のビジネス英語研修や国際教養研修等をご検討されていらっしゃる場合、あるいはご希望の企業・団体様がいらっしゃる場合には、ぜひ当社ホームページのお問い合わせ欄よりご希望をお聞かせください。

■プロフィール
株式会社 サザンクロス
代表取締役社長 小田切 武弘

海外志向が強く、学生時代に海外留学を経験。学業修了後は、大手電気機器メーカーや飲料・食品メーカー、総合商社など数社にわたって、米国、インド、韓国、東南アジアといった諸外国に駐在。その中で、海外でのビジネスに苦戦する日本企業の存在を知り、自らのノウハウを提供したいという思いが芽生える。2017年7月7日、企業の海外展開をサポートする(株)サザンクロスを設立した。
 
http://sc-southerncross.jp/

 
 

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