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コラム

海外ビジネスの指南役! 小田切社長の連載コラム.12

「海外展開を進めていくうえで、特に現地の人の気質やものの考え方が知りたい」。そんな声にお応えして、海外ビジネスの経験を豊富に持つ(株)サザンクロスの小田切社長が、世界各国の国民性を解説!より良い人間関係を構築することは、ビジネスの大きな成果へとつながるはずです。第12回は、ロシア人についてお話しします。

はじめに

皆様、こんにちは。(株)サザンクロスの小田切武弘です。本誌の2020年9月号から、海外でビジネスを進める際の現地ローカルスタッフへの接し方や、仕事の依頼の仕方、スムーズなコミュニケーションの取り方などにフォーカスしたコラムを連載しております。

さて今回からは、ロシア人気質とロシアでビジネスを行うポイントを2回にわたってお話させていただきたいと思います。ロシアには邦人が2021年10月現在2202名(外務省ホームページ国(地域)別在留邦人数推計上位50位推移データ)、日系企業数では外務省海外在留邦人数調査統計平成30年要約版統計表に基づくと、本邦企業163社、現地法人企業276社が進出しています。

なお、昨今のロシアはウクライナへの軍事的な進行を行っていますが、政治的・軍事的な面についてはそれぞれの専門家がいらっしゃいますので、本コラムではそれらについては触れず、あくまでロシア人の気質とビジネスを行う場合のポイントについて話を進めてまいります。

ロシアは日本国土の約45倍となる世界最大の国土を持ち、約1億4680万人が生活しています(外務省ホームページ国別データ)。主な信仰宗教はロシア正教、イスラム教、仏教、ユダヤ教など。民族的にはロシア人が80%を占めますが、その他少数民族が180以上あると言われている多民族国家です。主な都市としては首都モスクワ、諸外国との海の玄関口の1つであり芸術の都でもあるサンクトペテルブルグ、黒海、カスピ海周辺の西南部諸都市、極東のウラジオストクなどが挙げられます。日系企業のロシアとの主なビジネスは、極東エリアにおいて古くから続く日本からの中古車販売事業や漁業をはじめ、モスクワ・サンクトペテルブルグ周辺の自動車産業、自動車部品・機械部品販売業がよく知られています。

世界一大きな国であるにもかかわらず、人口は日本よりやや多い程度。企業の絶対数も少なく、そのため中国やインドのような多人口国家とは違い、ひとたび現地に溶け込めば激しい競争に巻き込まれることなく、比較的安定的なビジネス活動が行えるという利点があります。また、特に自動車産業ではサンクトペテルブルグにトヨタ、日産の工場があり、モスクワ近郊には三菱、ウラジオストクにはマツダの工場があり産業の土台もしっかりしています。

さらに、意外に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、ロシア人の多くは親日的であり、日本製品や日本食が高い人気を誇っているのもロシアの特徴です。ちなみに筆者はロシアでの駐在履歴はないものの、会社勤務時代よりモスクワ、サンクトペテルブルグ、ウラジオストクなど、出張で相当回数赴き、主に機械部品や自動車部品、魚加工品、コーヒーなどの輸出入業務に携わっておりました。それらを通じて筆者が感じたロシア人気質やロシアビジネスにおいて重要な点を以下にまとめてみました。

①陽気だがなかなか心を開かない

まず、ロシア人ビジネスマンはどの地域、業種においても陽気な方が多くいらっしゃいます。一緒に仕事をやり始めると徐々に日本人ビジネスマンに慣れてきて、明るく接することができるのですが、一方で本当に心を開くことはあまりなく、閉ざされた心の中で意見を持ち続けているような方を多く見てきました。観念が私たち日本人ビジネスマンとは大きく違うようです。

②上流階級か否かで所得・教育・語学に格差がある

日本や欧米の企業と取り引きを行っている上流階級の企業と他のローカル企業とでは、従業員の所得水準に歴然とした差があります。また、語学と専門分野における実力の格差も大きく、それぞれのビジネスシーンで臨機応変の対応を迫られるケースが多いです。

③企業の信用調査がしにくい

ロシアの企業は、日本企業のように会社の収益や経営状況を知るための情報が極めて少なく、どの企業も深いベールに包まれている印象を受けます。初めて取り引きする企業は当然のこと、ある程度の期間取り引きをしている企業であっても、ロシア人ビジネスマンはなかなか情報公開をするようなことがないため、企業の信用調査は難航することが多いです。

④超短視的に取り引きする

ロシア人ビジネスマンの多くは、長期的な視野や計画に基づいたビジネスを進めるのではなく、感覚にも近い「その場その場」での取り引きを依頼してくることが往々にしてあります。そのため、突然の方向性の転換や受発注のキャンセルも多く、ビジネスを進めるうえでは十分な注意が必要です。

⑤自己主張は強くないがプライドは極めて高い

こちらもロシア人ビジネスマンの典型的な特徴の1つで、それほどガツガツと自己主張をすることはないものの、プライドの高さゆえに自分を低く見られたり、相手から指図されたりすることに強いネガティブ反応を示す場合が多くあります。

まとめ

文化的にも民族的にも、宗教的にも異なる人とうまく付き合い、良好な関係を築くにはどのような対応が求められるのでしょうか。次号ではロシア人ビジネスマンと信頼関係を構築し、より良い環境で仕事を進めていくうえでの対応策、解決策を述べてまいりたいと思います。どうぞお楽しみに。

■プロフィール
株式会社 サザンクロス
代表取締役社長 小田切 武弘

海外志向が強く、学生時代に海外留学を経験。学業修了後は、大手電気機器メーカーや飲料・食品メーカー、総合商社など数社にわたって、米国、インド、韓国、東南アジアといった諸外国に駐在。その中で、海外でのビジネスに苦戦する日本企業の存在を知り、自らのノウハウを提供したいという思いが芽生える。2017年7月7日、企業の海外展開をサポートする(株)サザンクロスを設立した。
 
http://sc-southerncross.jp/

 
 

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