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コラム

気鋭のトップが語る Vol.1 

 
(株)ミクシィのグループ企業である(株)ミクシィ・リクルートメントは、1997年にスタートしたWeb求人メディア『Find Job!』の運営を行う会社だ。同メディアは、2007年に過去最高売上を記録して以降、業績の下降トレンドが続いていた。その窮地を救うV字回復の任を果たしたのが、30歳という若さで同社社長に就任した鈴木貴史氏だ。氏のこれまでの経験に基づいた改革への取り組みに迫る。
 

■プロフィール
株式会社 ミクシィ・リクルートメント
代表取締役社長 鈴木 貴史
 
1986年生まれ。関西大学工学部卒業後、エン・ジャパン(株)に入社。人材紹介会社向けコンサルティング営業部隊に配属され、新規事業立ち上げの責任者などを長く務める。2015年8月に(株)ミクシィに転職し、経営企画部門に配属。翌年2月に子会社である(株)ミクシィ・リクルートメントに出向し、半年後には社長職に就任。『Find Job!』の業績をV字回復させることに成功した。 
 
■会社情報
株式会社 ミクシィ・リクルートメント
本社所在地 〒150-0002
東京都渋谷区渋谷3-3-5 NBF渋谷イースト 6F
設立 2011年4月11日
資本金 1,000万円
事業内容 Webな人の求人情報サイト『Find Job!』の企画・運営https://www.mixi-recruitment.co.jp/

 

前職の経験を生かして

もともとはエン・ジャパン(株)で人材紹介会社に特化したコンサル営業を務めており、2年目頃から新規事業の立ち上げにも多く携わるようになりました。そして28歳の頃、プロジェクトが一段落したタイミングで自身のキャリアを見直す機会があり、(株)ミクシィへ転職したのです。ミクシィでは経営企画本部のスタッフとして、子会社の事業を支援する部署に所属しました。最初は(株)ミクシィ・リクルートメントとは異なる子会社を担当していたのですが、その会社を売却することになり、入社から半年ほど経ったタイミングでミクシィ・リクルートメントの運営支援を担当することになりました。そしてその半年後、社長就任の話が持ち上がったのです。

当社に関わろうと決めた時から、責任を持つ立場で仕事をすることに対する覚悟は決めていました。そのため、社長職の話があった際も準備はできていましたし、当時は運営媒体の『Find Job!』の売上が落ち込む衰退期で、そのV字回復が私に与えられた役目だという自覚もありました。私自身、前職時代からさまざまな新規事業を任される中で、逆境であればあるほど自分のパフォーマンスが発揮しやすく、得意分野だと思っていましたから、そこに対する不安もなかったですね。業績回復の任務は、自分の介在価値を強く感じられますし、達成感があるので好きなんです。
 

数字を意識する組織へと変革

ミクシィグループ自体は元来、プロダクトアウト型の組織で、『Find Job!』をはじめ、SNSの『mixi』、スマホゲームの『モンスターストライク』など、世の中になかったものを生み出すことで成長してきた会社です。そうしたクリエイティビティは本当に素晴らしく、生み出す力があるがゆえに、これまで世の中に出してきたサービスは業績、社会に与えるインパクト共に、非常に大きな影響力を発揮してきました。そのため、一度下降トレンドに入ってしまったときに、それらのサービスを回復させるにはとても難度の高いものを求められると感じています。使う筋肉も違えば、物事の考え方や価値観も刷新する必要があったのです。そこで、私は業績回復を目指すにあたり、当社をデータドリブンの組織に変えることに注力しました。要はマーケティング調査を徹底し、数字を基に改善のロジックを組み立てて進めていく方法。全員で数字を上げるために努力し、それが達成できたかをきっちりチェックしながら改善を目指すのです。
 

とはいえ、この考え方を社内に浸透させるのは大変なことでした。プロダクトに誇りを持つ既存のメンバーからすれば、「自分たちがつくったサービスのことを理解していない」というような気持ちがあったわけです。そこで私は、組織内の「文化形成」をすることにしました。具体的には、売上にコミットして働いている人を賞賛・推奨し、提案に対する採用基準や、朝会での発言など細かな部分に至るまで、数字根拠のある意見だけを採用するよう徹底しました。そして、何をすることが正しいことなのかを明確に示すようにしたのです。でも、それだけでは人の気持ちを動かすのは難しいので、より本質的な部分にもアプローチしました。それは、データドリブンの考え方による成功体験を各自がつくっていくこと。最初は半信半疑でやったことでも、それで売上が伸び、さらにユーザーが増えれば、面白い、楽しいという感情に変わっていくわけです。本質的にはみんなプロダクトが好きな人たちの集まりなので、結果的にサービスが成長することは何よりやりがいに感じるんですよ。だから、最初こそトップダウンで進めていましたが、成果が出てからは各々が自ら数字を見て取り組むようになりました。

正直、改革をスタートしてから半年くらいは毎晩うなされていましたね(笑)。でもそれは、「不安」ではなく「苛立ち」で眠れなかったんです。前職の経験と比較しても、絶対にうまくいくはずなのに、自分の力不足も含めて成果が出ないときは、そのもどかしさに苛立っていたんですよね。でも、「V字回復できる」という圧倒的なぶれない自信が、自分を支えてくれていたように思います。
 

事業をつくり、雇用を生むという原点に

そもそも『Find Job!』は、Google Japanが設立されるよりも前の1997年につくられていた、人材採用Webメディアです。クックパッドなど、今の上場企業・メガベンチャーが当時『Find Job!』で人材を集めており、当社としては、人を集めることで事業が起こる、その下支えを築いてきたという自負があります。なので、人を紹介するだけでは終わらずに、事業をつくり、人を送り、マッチングしていくようなサービスを展開していきたいという思いが私たちの根底にあるのです。

そこで、当社としては今後、雇用創出だけでなく、事業創出支援にも取り組んでいきます。どれだけ雇用を支援しようとも、受け皿となる事業がなければ雇用そのものは生まれないわけですから。まずは事業創出──持続性や成長性があり、継続的な雇用を生み出していける事業を起こすところをサポートしていきます。それにより、雇用創出を引き続き支えていきたい。ただ、仕事に就いて終わりでは意味がありませんから、就業後の活躍支援にも着手していく予定です。

業績が回復し、軌道に乗った今、ミクシィ・リクルートメントの原点に立ち返り、事業創出に改めて舵を切っていきます。そして、新たな展開をさらに進めていきたいですね。
 
 

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