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コラム

有備無憂 経営者のための法人保険講座 vol.9

こんにちは。保険代理店FP事務所を営むEver Side代表の八木照浩と申します。保険でお困りの方のためになる情報を、連載を通じてご紹介するこのコラム。第8回では、相続で活用できる生命保険についてご紹介しました。

前回お話しさせて頂いた通り、相続に生命保険を活用するには、法定相続人×500万円の非課税枠を活用する方法と、さらに対策が必要な場合は、毎年少しずつ生前贈与を行い、相続する財産を減らす方法があります。このように、相続税率と贈与税率の関係から、生前贈与をするだけでも相続対策の効果はあると言えますが、実は生命保険でもう一工夫凝らすことができます。本日はその活用方法を一つご紹介させて頂きます。

契約者・被保険者・受取人の関係で保険金に掛かる税率が変わる

活用方法をご紹介するにあたり、保険の税金について整理が必要です。生命保険の死亡保険金は、契約者・被保険者・受取人の関係により受け取るときの税金も変わります。父、母、子の3人家族を例に説明しましょう。

※契約者:実質の保険料負担者、被保険者:保険の対象となる人、保険金受取人:被保険者死亡時に保険金を受け取る人
①契約者:父、被保険者:父、保険金受取人:母or子 ⇒相続税
②契約者:父、被保険者:母、保険金受取人:父⇒所得税(一時所得で総合課税)
③契約者:父、被保険者:母、保険金受取人:子 ⇒贈与税

このように保険料を払う人、対象となる人、保険金を受け取る人によって税金の種類が変わり、それぞれの税率での計算となるため注意が必要です。先に述べた法定相続人×500万円の非課税枠を活用する方法では相続税の非課税枠を指すため、①の場合にしか当てはまりません。

所得税(一時所得で総合課税)で受け取る場合

さて、話を本題に戻します。生前贈与をしながら生命保険を活用するには、②のパターンで考える場合があります。前回もお話ししたように、相続をする資産が多く、なおかつ少しずつ生前贈与をした場合、相続税率>贈与税率となります。そこで、まずは親から子に相続税率>贈与税率の範囲で生前贈与を行います。そして②のパターンを考えると、保険料を負担するのは生前贈与を受けた後なので、子になります。つまり、「契約者:子、被保険者:父、保険金受取人:子」というように、生前贈与を受けた金額で、親の保険を子が払うという図式が出来上がります。通常は「契約者:父、被保険者:父、保険金受取人:子」となるケースが多いですが、この場合は保険金を受け取る際の子に掛かる税金が相続税です。そこで、資産が多い人は相続税の税率が高いため、「契約者:子、被保険者:父、保険金受取人:子」としておけば、保険金を受け取る際に子に掛かる税金が所得税(一時所得で総合課税)となり、税率も大きく軽減することができるでしょう。

※一時所得の税率計算
総収入金額-収入を得るために支出した金額-特別控除額(50万円まで)=一時所得の金額
この金額の1/2を他の所得と合算して総所得を求めた後に税額を計算。

例)終身保険 / 保険料払込期間10年 / 保険金額2000万円 / 年払保険料190万円
「契約者:子、被保険者:父、保険金受取人:子」で、保険料払込満了後に保険金受取事由が発生した場合
⇒総収入金額(2000万円)-収入を得るために支出した金額(190万円×10年)-50万円=50万円
この1/2を他の所得と合算する。今回の場合は25万円を他の所得に合算し、所得税額を計算。

このように一時所得では掛かる税金が非常に少ないことが分かります(※保険金の法定相続人×500万円非課税枠を使いきった上で、さらに相続税がかかる場合)。余談ですが、相続のご相談を受ける際によく「子どもに贈与するほうが得でも、お金を渡すことで無駄遣いしてほしくない」という話を耳にします。共感できる方も多いのではないでしょうか。その場合も、生前贈与時に上記の生命保険の対策をしておけば、お金は保険料支払に充てられ、子は無駄遣いできませんから、理にかなっているかもしれませんね。他にも、生前贈与後に積立の保険で資産を増やす方法などもありますが、今回は割愛します。生命保険では活用の仕方によって大きなメリットを享受できる一方、考えなければならないリスクがあるのも事実です。実際に行うときは、専門家の説明を聞いた上で、ベストな決断ができるようにしてください。

計9回にわたり執筆してきました本連載は、今回で終了となります。経営者の皆様に法人保険に関する有益な情報をお届けできていたなら幸いです。最後までご覧頂き、誠にありがとうございました。

※ 記事は2019年1月現在時点の税法上に基づく見解です。

■プロフィール
八木 照浩 Yagi Akihiro
Ever Side 八木照浩保険代理店FP事務所 代表
 
慶應義塾大学経済学部で国際金融論を専攻。卒業後は国内の生命保険会社で企業保険や個人保険の営業、法人リスクコンサルティングを行う。総合保険代理店に転職し、複数の生命保険会社の商品を手掛け、ノウハウを蓄積する。その後、培った知識と経験を活かすため独立を決意。生命保険に特化した総合保険代理店FP事務所Ever Sideを開業した。日本FP協会東京支部会員。保有資格は1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®(日本FP協会)、トータル・ライフ・コンサルタント(生保協会認定FP)、相続アドバイザー、コンプライアンス・オフィサー。 
 
■会社情報
Ever Side 八木照浩保険代理店FP事務所
〒167-0051 東京都杉並区荻窪5-26-9 506
http://www.everside.life/

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